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★お兄さん達の本音(*BL要素アリマス。注意要*)
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しおりを挟むそれは、普通に呼び止めても走り去ってしまうと思ったから、咄嗟に出た嘘。
『君、今日だけじゃないでしょ? 』
近付きながらそう言うと、言い当てられたらしい市之宮は焦った素振りを見せる。
『はっ? 何の話だよ。俺はここを、今、偶然、通りかかっただけだ 』
『歩いてって? 言い訳はいいよ 』
美花からは何も聞いてはいない。 市之宮がこっそりと美花を見る為だけにここにいることは確実だ。
『そんなに好きならどうして暴力を振るったの? 』
あんなになってしまう位、気持ちの持って行き場を無くしてしまう位、何故追い詰めた?
『好きぃ? 馬鹿言うな、あんな女誰が好きになるかよ。 何の得にもなりゃしない。今だって急いでるとこ、アンタに話しかけられて迷惑なのはこっちの方だ 』
『そんなこと聞いてる訳じゃ無いんだけどなぁ…… 』
『は? 何言ってんだ? 良い話聞かせてくれるんじゃないのか? 分かってるよ、アンタもあんなこと言ってたくせに、アイツのこともて余してんだろ? 引き取って欲しいなら、今からでも引き取ってやるよ? 』
どれだけ自分の好きな子を貶めれば気が済むのか。
しかも、その発した言葉の中に僅かな望みが滲んでいることにも、呆れるばかりだ。
ここまできても認めない男に何かが切れた。
『君さぁ、北風と太陽の話って知ってる? 』
『北風と……太陽? 』
『そう、イソップ童話の 』
『それが何の…… 』
『黙って聞いとけよ?、良いこと教えてやるって言ってんだから 』
決して善だけではない、自分の中の負の部分。
浩峨は悪意など感じさせずに、たっぷりと魅惑的に微笑んでやる。
『俺だけにしてやるの。 思い切り甘やかして、溺れさせて、依存させて……、心も身体も。 好きなコには、暴力なんかよりもそっちの方がよっぽど効果的だよ? 』
『……っ?!』
同じ独占欲でも手に入れるやり方が違うのだと教えてやれば、市之宮は見る見るうちに顔の色を無くしていった。
見開いた瞳に、同時に絶望の影が差していくのが分かる。
ーーーどうやったって、君は俺には敵わないよ?
これでもう、市之宮は二度と自分達の前に姿を現さなくなるだろうと浩峨は確信した。
幾ら脅しても諦めきれなかった、最後の希望の欠片まで打ち砕いてやったのだから。
浩峨は、わざとらしく腕の時計を覗く。
『じゃあね、市之宮くん。 美花ちゃんが待ってるから、俺もう行くわ 』
『……。』
冷たい夜風の中、何も言わずに茫然と立ち竦む市之宮の横を悠々と通り過ぎる。
『あー、腹減ったな。早く晩飯喰いてぇ、……今夜はデザート付きで 』
独り言が聞こえたのか、背後で走り去っていく気配を感じながら浩峨はまた微笑った。
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