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★お兄さん達の本音(*BL要素アリマス。注意要*)
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しおりを挟む「お前なぁ…… 」
けれど、目に飛び込んできたのは美花ではなく、もっと向こうにいる浩輔の姿。
まともに視線がかち合ってしまい、どぎまぎとして身体が固まる。
あっちも初めは驚いていたのか目を円くしていたけれど、直ぐに優しく瞳を細めるとヒラヒラと手のひらを振ってきた。
「……っ! 」
ずぎゅんと心臓が射貫かれる感覚に見舞われて、壱葉は慌ててキッチンに逃げ込む。
ドンと台の上に置いたプリンの紙袋が、大きな音を立てたけれどそんなことはどうでもいい。
壱葉はシンクに手を付いたまましゃがむと、暴れる心臓を抑える為に呼吸を整えた。
どうして、俺これだけでこんなんなってんの?
好きなのはあっちのハズ。俺はほだされただけなのに。
こんなにときめくのは、窓からの柔らかい日差しにきらきらとして、ただでさえ男前なのが、三割増し、いや五割増しに見えただけだ。
でも……。
「……もぉ、油断したー」
あんなにカッコ良く微笑わなくてもいいのに。
ちゃんと準備してたら、こんなにダメージ受けなかったのに。
くそぉ……と毒突いた瞬間、がっくりと力を抜いた弾みでゴンッ! とシンクの端に頭をぶつける。
「いぃ……ってェーー!! 」
飛び散る火花にあげた大声。 すると、背後から美花の呆れた声が聞こえた。
「ばか壱葉、さっきから一体何やってんのよ 」
尻餅ちを付いて見上げれば、そこには腕組みをして見下ろす妹の冷たい視線。
キリッと切れ上がった、形の良い大きなアーモンド型の瞳は気の強さも相俟って、余計に呆れ返りこちらを見下しているように感じる。
「おま……っ、俺は兄貴だぞ! 呼び捨てにするのも、馬鹿にするのもいい加減にしろっ! 」
「それが嫌だったら、兄らしくしゃんとしなさいよ。あれ位で動揺しちゃってみっともないったら 」
え……?
全くもう……と肩を竦めた妹に、壱葉はまさかと青くなる。
「美花、何言って…… 」
「仕方ないから、暫くは頼りなくても兄さんって呼んであげるわ。でも、いずれは私があなた達の《お姉さん》になること、忘れないでよ? 」
それは、浩輔との関係を知っているということで、口をパクパクさせる壱葉に美花はクスッと笑った。
「い、いつから…… 」
「それから、もう一人の未来の弟にも言っておいて。 いつも私の為に緑茶の葉を用意してくれてるけど、実はあんまり好きじゃないのよね 」
本当は紅茶の方が好きなの……と、人差し指を下唇に当てる仕種は悪びれなさを装っている。
分かっていてやっているのが、また小憎らしい。
「こ、こ、こんの…… 」
最近、しおらしくなっていたと思っていたが、やっぱり美花は美花だ。
「性悪……!!」
それを聞いた美花が堪え切れずに笑いだす。
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