22 / 74
2.
3-7
しおりを挟む「どうして謝るの? 」
ふるふるとかぶりを振りながら、美花は顔を隠す。
お願い、見ないで。 今の自分は凄く浅ましい顔をしてる。
「ごめんなさい、ごめ、なさ…… 」
居たたまれなさと恥ずかしさに、口からは謝罪の言葉しか出てこない。
キスが足りないなんて思ったのも、初めてだった。
そんなことを思うなんて、今まで隠れていた自分の中の汚ない本来の欲望が、どろどろと顔を出してくるみたいで怖い。
きっと、それを見て呆れたから、あんなふうに言ったんだ。
「美花ちゃん…… 」
頭上から聞こえるため息に、ぎくりと身が竦む。
「そんなに好きなんだね。 分かった、もうしないか……」
「お願い、嫌いにならないで……っ 」
「ら……って、え? 」
同時に放った言葉が重なって、お互いに目を瞠った。
美花がおそるおそる顔をあげると、驚いた顔の浩峨と目が合う。
まさか、こんなことを言われるとは考えてもいなかったというみたいに。
「僕が、美花ちゃんを嫌うって……、どういう意味? 」
違うの……?
聞かれた質問に軽蔑された訳ではないと知って、目の奥がキン……と痛くなる。
みるみるうちに曇る視界。
限界まで溜まった涙が溢れて頬を伝い、それを見た浩峨がギョッ……として、瞳を見開くのが見えた。
「ちょっと、待って。今度は、どうして泣くの? 」
「分かんな……、嫌われたんじゃないって、分かったら……っ 」
泣き顔を見られたくなくて咄嗟に顔を両腕で隠すと、交差した両手の手首がそれぞれしっかりと捕らえられた。
「だから何で、僕が美花ちゃんのことを嫌いになるんだよ? 」
それだけではなく、暴くように開こうとしてくるから美花は必死で抗う。
だって、同じことだ。 知られてしまったら、きっと嫌われてしまう。
「離して……よ……っ! 」
「嫌だ 」
きっぱりとした拒否に、逃げられないことを知る。
「……っ。離して……って、言ってるでしょ、もう 」
逃げたい、逃げたいのに、逃しては貰えない。
強い力に泣き顔をあらわにされて、自分の陰った部分まで光のもとにさらされてしまう気持ちになる。
「美花ちゃん、僕は美花ちゃんのことを絶対に嫌ったりしないよ? 君は何を知られたくないの? 」
甘やかすような言葉に、心が揺れる。
「何がそんなに怖いの? ねぇ、美花ちゃん 」
それでも頑なに首を振り続けると、コツンとおでこにおでこをぶつけられた。
「痛……っ! 」
「痛いね 」
言いながら浩峨はクスッ……と笑い、もう一度額を合わせてきた。今度は、ゆっくりと優しく。
「……ホント、こうしたらこの中のことが全部分かるといいのに 」
『ねっ? 』と同意を求められた途端、わぁっと胸いっぱいにあふれてくるもの。
美花は、もう駄目だと思った。
12
お気に入りに追加
78
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。


甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる