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シャルルと愉快な仲間達(番外編/小咄)

パン屋になるとか言ってみる

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「……ごめん、もう一回言ってもらってもいい?!」

アンガスのとあるギルドの最上階の部屋で、シャルルの幼馴染みかつ治癒師、そして聖女との二つ名を持つ、リーナ・グランは眉間にシワを寄せつつ、うめいた。

テーブルを挟んだ真向かいにはいつのまにかこの部屋に毎晩来るのが(もちろん、アンリも一緒だ)習慣になっている、シャルルである。

金色の髪に、左右色違いの瞳。
ついでに言うなら、元は王太子直属の部下。
勇者なんていう立派な称号をもっていたシャルル青年は今のところ、ギルドの臨時職員として勤めている。

ちょっとばかり変わった容姿になったシャルルは、彼を下僕と呼ぶ黒猫、ミルドレッド3世を肩に乗せて、あはは、と笑った。


王都で動乱があって。
早半年。

「よく元勇者に似てるって言われるんですよー」

という、適当な言い訳でギルドで偽名を使いつつ短時間勤務していたシャルルは、そろそろまじめに働こうかな、と言っていた。
リーナもそれはいいね、と言っていたのだが……。

「僕、パン屋を目指そうかと思ってるんだよね」

ニコニコと笑っていうと、リーナは渋面になり。
リーナの隣で、これまた当然のごとく「ここはおれの居場所」ばかりに腰掛けていた、アンガスの領主であるアンリ・ド・ベルダンはカップの中の茶をすすった。

「なんでまた、パン屋なんだ?」
「え?美味しいから?」

リーナとアンリはダメだこれは、とばかりに顔を見合わせた。
さすがお似合いの夫婦(じゃないけど、まだ)。息ぴったりだなと思っていると、リーナは首を振った。


「なんでよりにもよってパン屋?アンガスは小麦の産地だから激戦区だよ!今から参入するのにはすごい苦労が……」

仕入れ値や利益や店の立地について考え出したリーナにシャルルは感心しつつ、呆れた。

「なんか具体的だよね、さすがリーナ」
「茶化さないでよ」

シャルルは笑ってちょっと肩を竦めた。

「たしかに、アンガスはパン屋の激戦区だ。だから、ちょっと変わったパン屋をやるために、アイデアを仕入れてこようかな、と思ってる」

再び二人は顔を見合わせた。
シャルルの肩の上で、にゃーーーと黒猫だけが嬉しそうに鳴く。


「そうである!我とシモベは、斬新なパンを作るべく!流行のはっせいを見学に行くのである!!!!」


猫の言葉がわかるシャルルはうんうん、とうなずき。
リーナがどこに行くの?と聞いた。

シャルルはあっけらかん、と答えた。


「うん、王都に行こっかなーと思ってるんだ!」
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