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15. 宿題
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結局ビリーは現れないまま冬学期は終了し、グレースは春学期開始までの僅かな休暇を、王都から目と鼻の先にある別荘で過ごす。短い休暇の為、寮に残る者が大半だが、寄宿学校の近くに家や別荘がある者はそちらで過ごす事も珍しくない。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
別荘の玄関ではディアナがグレースを出迎えてくれた。下男が馬車から荷物を降ろしている間に、ディアナはグレースに報告をする。
「バルトラ様からお嬢様に面会の希望が届いておりますが、どのようにお返事致しましょうか?」
「バルトラ様が私に?」
グレースはビリーではなくバルトラ中将の方から面会の希望とは珍しく感じた。だが、彼が来るならビリーも来るだろうと期待が湧き、胸を弾ませて返事をする。
「ええ、もちろんお受けして。日程もバルトラ様のご都合に合わせると」
「承知いたしました」
バルトラ中将の来訪日の朝、グレースは早くから起きて念入りに身だしなみを整え、まだ約束の時間ではないのはわかっていながらも玄関のそばを行ったり来たりしていた。
「少しは落ち着いたらどうなんだ、グレース」
ジブリールは呆れながらグレースを見る。すると外から馬の足音が聞こえてくる。その音から馬の数はおそらく二頭だろう。グレースの顔が輝き出し、急いで玄関の扉を開けて飛び出すと、バルトラ中将と、もう一人客人がいた。だがそれはグレースが期待していた人物ではなかった。
「……グレース……どなただ? あの美しい女性は」
ジブリールはその客人を見て息を呑み、自分の身だしなみを整え出した。
「少しは落ち着いて、ジブリール」
グレースは言い返してやった。
「お久しぶりです。ジブリール様、グレース様」
バルトラ中将がロザリオ兄妹に挨拶をすると、グレースは客人二人に挨拶を返すが、ジブリールはバルトラ中将の横に立つ客人に見惚れて微動だにしない。
そのジブリールの視線が何を意味しているのかに気がついた客人は、ニコリと微笑み挨拶をした。
「初めてお目にかかります。バルトラの妻でございます」
ジブリールは衝撃を受けた。だがなんとバルトラも衝撃を受けた顔をして言葉を失っていた。
二人の様子を見て、その客人はふふふっと品良く笑う。
「冗談ですよ。私は男ですから、妻にはなれません」
ジブリールは二度の衝撃に完全に動かなくなった。
「私は医師をしております、アゲハと申します。バルトラとは友人です。この度グレース様にお会いしたいとバルトラに頼みましたのは、この私でございます」
アゲハの容姿と名前から、遠い異国から来た人間なのだと容易に想像がついた。グレースにとっては前世を思い出す懐かしい馴染みのある顔立ちである。
二人を応接間に案内すると、すぐに本題の話が始まる。相変わらず何故かジブリールも同席していた。
「私はビリー様の主治医をしております。実はビリー様は以前より酷い不眠症に悩まされており、一時期治ったかの様に見えていましたが、ここ最近再発しまして……今までで一番酷い状態です。学校で何か変わった様子はありませんでしたでしょうか?」
「変わった様子といえば、ビリーが家に帰る日の明け方、酷い悪夢を見た様でうなされていました。私には初めて見る姿だったので……私が知っているのはそれだけです」
それを聞いていた男性三人の紅茶を飲む手がピタリと止まる。アゲハが恐縮そうにグレースに話しかけてくる。
「あの……グレース様はそれを知っていると言うことは、その……ビリー様とよく夜を共にされていたという事でしょうか……?」
グレースは自分の言ったセリフが誤解を与える発言だと気がつき、顔を赤くして両手を振る。
「いえいえいえ、私達の間には何もないです! ビリーが勝手に私の部屋に来て眠れないというので、眠くなるまで一緒にお茶を飲むとか、ただ一緒にいるだけとか、それくらいです」
グレースがバルトラ中将をちらりと見ると、何故かバルトラ中将は嬉しそうにしていた。アゲハも微笑んでグレースに話を続ける。
「ビリー様と仲がよろしくて嬉しい限りです。ビリー様は思春期に入った頃に不眠症を発症しまして、その影響なのか急に目つきや性格があのようになってしまい、中々同じ年頃の友達が出来なかったんです。まあ、本人も必要としてはいなかったのですが……」
ジブリールが急に何かを思い出して、ぽんっと手を叩き話に入って来た。
「あ、グレースも思春期入ったくらいに急に性格が荒れ始めたんですよ。私は留学中だったのですが、帰国の度にグレースが別人みたいになっていってましたよ。お母様は思春期だからだと笑ってました」
ジブリールは懐かしそうに笑いながら紅茶を口にする。だがアゲハは興味深そうに真面目に話を聞いていた。
「なるほど……」
アゲハはグレースを熟視した。何かを見透かしていそうな目にグレースがたじたじになっていると、バルトラ中将がグレースを気遣うように話題を変えてくれた。
「ところで、グレース様はその後学校生活はお変わりないですか?」
「ええ、だいぶ慣れました。ただ……」
「ただ?」
「率直に申しますと、あの薬物売買問題が思わぬ形で学校生活に影響が出始めています。セニから薬を買えなくなった子息に、私がセニを捕まえた事が何故か知られていて、休暇に入るまでずっとつけ狙われていました」
バルトラ中将の表情は険しくなり、グレースに頭を下げた。
「……それは、グレース様を巻き込んだ私共に責任があります。早々に対応を決めてまいります」
バルトラ中将は居ても立ってもいられず、アゲハに切り上げるよう目線を送る。理解したアゲハは立ち上がる。
「貴重なお時間をありがとうございました。これにて失礼致します」
そう言い、アゲハが拱手礼をすると、その作法を見たグレースはどうしても聞いてみたくなった。
「アゲハ様は東方からいらしたのですか?」
「はい、東方から参りました。私の施す治療はあちらの方法を取ることもあります。医学だけでなく、物事を考える時は東方の知識も活かして多角的に検討しています。なのでお二人のお話はとても参考になりました」
グレースはアゲハにどうしてもビリーへの伝言を頼みたかった。だが、兄の前で発言するのは恥ずかしかったので、こっそりと伝えたかった。
「アゲハ様、お耳をお借りしてもよろしいでしょうか……」
「え?」
グレースはアゲハにそっと耳打ちすると、アゲハの顔が徐々に綻び始めた。
「ええ、必ず」
アゲハはグレースに微笑んで頷き、伝言を預かった。
グレースとジブリールは客人方の見送りに玄関まで行くと、去って行く二人の馬は、心なしか急足に感じた。二人には急ぐ理由がある。フランソワの現在の容態の確認と、ロザリオ家で聞いた話を少しでも早くフランソワの耳に入れたかったのだ。
そして、夕方、フランソワの部屋にはアゲハとバルトラ中将がいる。フランソワの顔色は以前よりだいぶ良くなっていた。アゲハは治療として睡眠薬の使用はもちろんの事、気を整える薬膳料理を準備したり、安眠できるように香を焚いたりと様々な事を毎日行なっている。
アゲハとバルトラはフランソワから今朝の夢の話を聞く。夢は日常の記憶の整理と言われているが、フランソワの夢の話はこの世界の話ではなく、でもその話は具体的で、しっかりとしたあらすじがあった。東方で育ったアゲハには、そういった神秘的な話には思い当たる節がある。
「フランソワ様、私が生まれた東方では、前世からの宿題が誰しもあると言われています。もしかしたら、フランソワ様の夢は宿題を示しているのかもしれませんよ」
フランソワはベッドの上で起き上がっており、二人はその傍で立っている。
「宿題……?」
アゲハは笑う。笑う事で自分の発言を軽くした。
「あまり鵜呑みにはしないでください。東方の伝承の一つですので」
バルトラ中将が真剣な表情でフランソワに報告する。
「フランソワ様、宿題といえば、こちらは本格的な宿題、ではなく問題です」
「どうした?」
「グレース様が、セニ嬢から薬を買えなくなった者につけ狙われているようです」
「何だって」
「すぐに春学期が始まります。近衛の仕事を手伝わせた我々の責任ですので、若い近衛兵に生徒のフリをさせてグレース嬢の護衛としてつけさせて頂きます」
「……いや、俺が戻る」
フランソワの発言に、バルトラ中将は体調を考慮して強く反対したが、アゲハは真逆の意見だった。
「ぜひ、フランソワ様がグレース様の元に行かれるべきかと」
バルトラ中将は医師であるアゲハの判断に困惑している。
「何を言ってるんだお前は」
「もしかしたら、その方がフランソワ様の不眠が治るかもしれません」
アゲハはフランソワに微笑んだ。
「グレース様よりご伝言をお預かりしております」
「何だ?」
アゲハはフランソワの耳元まで顔を近づけて囁く。
「いつまで隠れてんだ、このヘタレ」
フランソワの目が点になり、微笑むアゲハをしばらく見つめてから我にかえった。
「あ゛? なんだと?」
「私ではありませんよ。グレース様からです」
フランソワの目がいつもの鋭い目つきに変わり、額の血管を浮き上がらせている。
「フランソワ様、グレース様は、もう一つおっしゃっておりました」
「もういい」
「いえ、ちゃんと聞いてください」
アゲハはもう一度フランソワに耳打ちする。
「ビリーに会いたい」
フランソワの顔がみるみる赤く染まり出す。アゲハはその様子を見て嬉しそうだった。
「貴方の愛する方は夢の中ではなくて、現実にいらっしゃいますよ。その方のために夢を克服しようと思えば、もしかしたら眠れるかもしれません」
その晩、フランソワは睡眠薬は使わずに、悪夢を覚悟して自ら眠りについた。
夜中にうなされて目が覚める。だが夢の内容が今までと少し違った。
「前世からの宿題……」
フランソワは静かに考え込んだ。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
別荘の玄関ではディアナがグレースを出迎えてくれた。下男が馬車から荷物を降ろしている間に、ディアナはグレースに報告をする。
「バルトラ様からお嬢様に面会の希望が届いておりますが、どのようにお返事致しましょうか?」
「バルトラ様が私に?」
グレースはビリーではなくバルトラ中将の方から面会の希望とは珍しく感じた。だが、彼が来るならビリーも来るだろうと期待が湧き、胸を弾ませて返事をする。
「ええ、もちろんお受けして。日程もバルトラ様のご都合に合わせると」
「承知いたしました」
バルトラ中将の来訪日の朝、グレースは早くから起きて念入りに身だしなみを整え、まだ約束の時間ではないのはわかっていながらも玄関のそばを行ったり来たりしていた。
「少しは落ち着いたらどうなんだ、グレース」
ジブリールは呆れながらグレースを見る。すると外から馬の足音が聞こえてくる。その音から馬の数はおそらく二頭だろう。グレースの顔が輝き出し、急いで玄関の扉を開けて飛び出すと、バルトラ中将と、もう一人客人がいた。だがそれはグレースが期待していた人物ではなかった。
「……グレース……どなただ? あの美しい女性は」
ジブリールはその客人を見て息を呑み、自分の身だしなみを整え出した。
「少しは落ち着いて、ジブリール」
グレースは言い返してやった。
「お久しぶりです。ジブリール様、グレース様」
バルトラ中将がロザリオ兄妹に挨拶をすると、グレースは客人二人に挨拶を返すが、ジブリールはバルトラ中将の横に立つ客人に見惚れて微動だにしない。
そのジブリールの視線が何を意味しているのかに気がついた客人は、ニコリと微笑み挨拶をした。
「初めてお目にかかります。バルトラの妻でございます」
ジブリールは衝撃を受けた。だがなんとバルトラも衝撃を受けた顔をして言葉を失っていた。
二人の様子を見て、その客人はふふふっと品良く笑う。
「冗談ですよ。私は男ですから、妻にはなれません」
ジブリールは二度の衝撃に完全に動かなくなった。
「私は医師をしております、アゲハと申します。バルトラとは友人です。この度グレース様にお会いしたいとバルトラに頼みましたのは、この私でございます」
アゲハの容姿と名前から、遠い異国から来た人間なのだと容易に想像がついた。グレースにとっては前世を思い出す懐かしい馴染みのある顔立ちである。
二人を応接間に案内すると、すぐに本題の話が始まる。相変わらず何故かジブリールも同席していた。
「私はビリー様の主治医をしております。実はビリー様は以前より酷い不眠症に悩まされており、一時期治ったかの様に見えていましたが、ここ最近再発しまして……今までで一番酷い状態です。学校で何か変わった様子はありませんでしたでしょうか?」
「変わった様子といえば、ビリーが家に帰る日の明け方、酷い悪夢を見た様でうなされていました。私には初めて見る姿だったので……私が知っているのはそれだけです」
それを聞いていた男性三人の紅茶を飲む手がピタリと止まる。アゲハが恐縮そうにグレースに話しかけてくる。
「あの……グレース様はそれを知っていると言うことは、その……ビリー様とよく夜を共にされていたという事でしょうか……?」
グレースは自分の言ったセリフが誤解を与える発言だと気がつき、顔を赤くして両手を振る。
「いえいえいえ、私達の間には何もないです! ビリーが勝手に私の部屋に来て眠れないというので、眠くなるまで一緒にお茶を飲むとか、ただ一緒にいるだけとか、それくらいです」
グレースがバルトラ中将をちらりと見ると、何故かバルトラ中将は嬉しそうにしていた。アゲハも微笑んでグレースに話を続ける。
「ビリー様と仲がよろしくて嬉しい限りです。ビリー様は思春期に入った頃に不眠症を発症しまして、その影響なのか急に目つきや性格があのようになってしまい、中々同じ年頃の友達が出来なかったんです。まあ、本人も必要としてはいなかったのですが……」
ジブリールが急に何かを思い出して、ぽんっと手を叩き話に入って来た。
「あ、グレースも思春期入ったくらいに急に性格が荒れ始めたんですよ。私は留学中だったのですが、帰国の度にグレースが別人みたいになっていってましたよ。お母様は思春期だからだと笑ってました」
ジブリールは懐かしそうに笑いながら紅茶を口にする。だがアゲハは興味深そうに真面目に話を聞いていた。
「なるほど……」
アゲハはグレースを熟視した。何かを見透かしていそうな目にグレースがたじたじになっていると、バルトラ中将がグレースを気遣うように話題を変えてくれた。
「ところで、グレース様はその後学校生活はお変わりないですか?」
「ええ、だいぶ慣れました。ただ……」
「ただ?」
「率直に申しますと、あの薬物売買問題が思わぬ形で学校生活に影響が出始めています。セニから薬を買えなくなった子息に、私がセニを捕まえた事が何故か知られていて、休暇に入るまでずっとつけ狙われていました」
バルトラ中将の表情は険しくなり、グレースに頭を下げた。
「……それは、グレース様を巻き込んだ私共に責任があります。早々に対応を決めてまいります」
バルトラ中将は居ても立ってもいられず、アゲハに切り上げるよう目線を送る。理解したアゲハは立ち上がる。
「貴重なお時間をありがとうございました。これにて失礼致します」
そう言い、アゲハが拱手礼をすると、その作法を見たグレースはどうしても聞いてみたくなった。
「アゲハ様は東方からいらしたのですか?」
「はい、東方から参りました。私の施す治療はあちらの方法を取ることもあります。医学だけでなく、物事を考える時は東方の知識も活かして多角的に検討しています。なのでお二人のお話はとても参考になりました」
グレースはアゲハにどうしてもビリーへの伝言を頼みたかった。だが、兄の前で発言するのは恥ずかしかったので、こっそりと伝えたかった。
「アゲハ様、お耳をお借りしてもよろしいでしょうか……」
「え?」
グレースはアゲハにそっと耳打ちすると、アゲハの顔が徐々に綻び始めた。
「ええ、必ず」
アゲハはグレースに微笑んで頷き、伝言を預かった。
グレースとジブリールは客人方の見送りに玄関まで行くと、去って行く二人の馬は、心なしか急足に感じた。二人には急ぐ理由がある。フランソワの現在の容態の確認と、ロザリオ家で聞いた話を少しでも早くフランソワの耳に入れたかったのだ。
そして、夕方、フランソワの部屋にはアゲハとバルトラ中将がいる。フランソワの顔色は以前よりだいぶ良くなっていた。アゲハは治療として睡眠薬の使用はもちろんの事、気を整える薬膳料理を準備したり、安眠できるように香を焚いたりと様々な事を毎日行なっている。
アゲハとバルトラはフランソワから今朝の夢の話を聞く。夢は日常の記憶の整理と言われているが、フランソワの夢の話はこの世界の話ではなく、でもその話は具体的で、しっかりとしたあらすじがあった。東方で育ったアゲハには、そういった神秘的な話には思い当たる節がある。
「フランソワ様、私が生まれた東方では、前世からの宿題が誰しもあると言われています。もしかしたら、フランソワ様の夢は宿題を示しているのかもしれませんよ」
フランソワはベッドの上で起き上がっており、二人はその傍で立っている。
「宿題……?」
アゲハは笑う。笑う事で自分の発言を軽くした。
「あまり鵜呑みにはしないでください。東方の伝承の一つですので」
バルトラ中将が真剣な表情でフランソワに報告する。
「フランソワ様、宿題といえば、こちらは本格的な宿題、ではなく問題です」
「どうした?」
「グレース様が、セニ嬢から薬を買えなくなった者につけ狙われているようです」
「何だって」
「すぐに春学期が始まります。近衛の仕事を手伝わせた我々の責任ですので、若い近衛兵に生徒のフリをさせてグレース嬢の護衛としてつけさせて頂きます」
「……いや、俺が戻る」
フランソワの発言に、バルトラ中将は体調を考慮して強く反対したが、アゲハは真逆の意見だった。
「ぜひ、フランソワ様がグレース様の元に行かれるべきかと」
バルトラ中将は医師であるアゲハの判断に困惑している。
「何を言ってるんだお前は」
「もしかしたら、その方がフランソワ様の不眠が治るかもしれません」
アゲハはフランソワに微笑んだ。
「グレース様よりご伝言をお預かりしております」
「何だ?」
アゲハはフランソワの耳元まで顔を近づけて囁く。
「いつまで隠れてんだ、このヘタレ」
フランソワの目が点になり、微笑むアゲハをしばらく見つめてから我にかえった。
「あ゛? なんだと?」
「私ではありませんよ。グレース様からです」
フランソワの目がいつもの鋭い目つきに変わり、額の血管を浮き上がらせている。
「フランソワ様、グレース様は、もう一つおっしゃっておりました」
「もういい」
「いえ、ちゃんと聞いてください」
アゲハはもう一度フランソワに耳打ちする。
「ビリーに会いたい」
フランソワの顔がみるみる赤く染まり出す。アゲハはその様子を見て嬉しそうだった。
「貴方の愛する方は夢の中ではなくて、現実にいらっしゃいますよ。その方のために夢を克服しようと思えば、もしかしたら眠れるかもしれません」
その晩、フランソワは睡眠薬は使わずに、悪夢を覚悟して自ら眠りについた。
夜中にうなされて目が覚める。だが夢の内容が今までと少し違った。
「前世からの宿題……」
フランソワは静かに考え込んだ。
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