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49. 言い分
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フロリジア城のスローンルームでは、玉座にジュエリアが座っており、部屋の隅にシベリウスも立ってジュエリアを見守っていた。
リーリエンの罪人四名が集められ、ジュエリアの高座の前で腕を縛られ跪いている。
彼らは公開処刑が一時中断され、この日まで牢で再審の日を待っていた。
「彼らに椅子を」
ジュエリアの一言に部屋が騒めく。死刑囚達も戸惑いながら、用意された椅子に座った。
「一人ずつ、罪状を述べ、なぜそのような事をしたのか、嘘偽りなく私に話しなさい」
一番右端にいた若い女の子が、最初に声を上げた。
「ルネ・モンタナ。罪状は……パンを盗んだこと。あそこは、父が奥さんと営む店。私は父の私生児で、孤児です。母は亡くなりました。悔しくて、報復のつもりでやってしまいました。罪を認めます……」
「では、あなたは、バスタード?」
「え? いえ、バスタードと呼ばれるのは高貴な身分の落とし子なので、私はそんな立派な身分ではないです」
「バスタードは、高貴な身分限定なの?」
「ええ、そうです。私のようなただの私生児からしたら、同じ私生児だと一緒にするのは憚られる存在です」
「そうなのね……」
次に、ルネの隣の、見た目はとても誠実そうな大柄な男性が名乗り出た。
「ダグラス・ドーン、元軍人。罪状は暴行。上官が浮浪児に手を挙げようとしたんだ。それで、止めに入ってもみくちゃになった。上官は貴族のお坊ちゃんで、俺の言い分など聞いてくれる奴もいなくて、そのまま死刑判決です」
「それを証言してくれる同僚とかは?」
「証言なんてしたら、道連れになる。そんな迷惑は掛けれない」
そして、小さなルカの番が来た。
「ルカ……それ以外のなまえはわかりません。ざいじょうは、貴族さまのものをぬすんだって。でも、ぼくがぬすんでない事は、あなたが知っているでしょ?」
ルカはジュエリアをまっすぐに見つめ、ジュエリアもルカと視線を合わせてしっかり頷いた。
そして最後に、聡明そうな男性が立ちあがり、名前を名乗る。
「カルネル・グラハム。ローゼン在住の教師です。罪状は危険的思想の流布となっていますが、私はこの目で見たことと、その危険性を伝えただけです。セルマ寡妃が危ない事をしていると」
ジュエリアは予想外の名前に目を見開き、シベリウスと目を合わせた。
ジュエリアはカルネルに向き直し、質問をする。
「それは、何?」
「クジラです。深夜、街が寝静まった時間に、運河を通ってローゼンにクジラの死体が運び込まれています。あれはとても危険です」
ジュエリアはもう一度シベリウスを見ると、彼は何かに気づいた様子で思案しており、深刻そうな顔をしていた。
カルネルは、必死の形相でジュエリアに訴える。
「私の話は危険思想の流布ではなく、本当に危険だと知らせているのです。セルマ寡妃がこの国に嫁いでから、薔薇の日は薔薇が撒かれるようになりました。とても華やかですが、私はあの日に何かをされているんだと思います」
ジュエリアは、まさか罪人たちの中から、セルマ寡妃に繋がる発言をするものが現れるとは思っておらず、困惑し、シベリウスを手招きして助言を求めた。
「シベリウスはどう思う?」
「トマスの探し物の可能性が高いと思う。とりあえず、彼らは街の牢ではなく、フロリジア城の牢に入ってもらい、ジュエルが決める最終審判を待ってもらいましょう。その方が、ジュエルの目の届くところで、彼らが不遇な目に遭う確率が下がります」
リーリエンの罪人四名が集められ、ジュエリアの高座の前で腕を縛られ跪いている。
彼らは公開処刑が一時中断され、この日まで牢で再審の日を待っていた。
「彼らに椅子を」
ジュエリアの一言に部屋が騒めく。死刑囚達も戸惑いながら、用意された椅子に座った。
「一人ずつ、罪状を述べ、なぜそのような事をしたのか、嘘偽りなく私に話しなさい」
一番右端にいた若い女の子が、最初に声を上げた。
「ルネ・モンタナ。罪状は……パンを盗んだこと。あそこは、父が奥さんと営む店。私は父の私生児で、孤児です。母は亡くなりました。悔しくて、報復のつもりでやってしまいました。罪を認めます……」
「では、あなたは、バスタード?」
「え? いえ、バスタードと呼ばれるのは高貴な身分の落とし子なので、私はそんな立派な身分ではないです」
「バスタードは、高貴な身分限定なの?」
「ええ、そうです。私のようなただの私生児からしたら、同じ私生児だと一緒にするのは憚られる存在です」
「そうなのね……」
次に、ルネの隣の、見た目はとても誠実そうな大柄な男性が名乗り出た。
「ダグラス・ドーン、元軍人。罪状は暴行。上官が浮浪児に手を挙げようとしたんだ。それで、止めに入ってもみくちゃになった。上官は貴族のお坊ちゃんで、俺の言い分など聞いてくれる奴もいなくて、そのまま死刑判決です」
「それを証言してくれる同僚とかは?」
「証言なんてしたら、道連れになる。そんな迷惑は掛けれない」
そして、小さなルカの番が来た。
「ルカ……それ以外のなまえはわかりません。ざいじょうは、貴族さまのものをぬすんだって。でも、ぼくがぬすんでない事は、あなたが知っているでしょ?」
ルカはジュエリアをまっすぐに見つめ、ジュエリアもルカと視線を合わせてしっかり頷いた。
そして最後に、聡明そうな男性が立ちあがり、名前を名乗る。
「カルネル・グラハム。ローゼン在住の教師です。罪状は危険的思想の流布となっていますが、私はこの目で見たことと、その危険性を伝えただけです。セルマ寡妃が危ない事をしていると」
ジュエリアは予想外の名前に目を見開き、シベリウスと目を合わせた。
ジュエリアはカルネルに向き直し、質問をする。
「それは、何?」
「クジラです。深夜、街が寝静まった時間に、運河を通ってローゼンにクジラの死体が運び込まれています。あれはとても危険です」
ジュエリアはもう一度シベリウスを見ると、彼は何かに気づいた様子で思案しており、深刻そうな顔をしていた。
カルネルは、必死の形相でジュエリアに訴える。
「私の話は危険思想の流布ではなく、本当に危険だと知らせているのです。セルマ寡妃がこの国に嫁いでから、薔薇の日は薔薇が撒かれるようになりました。とても華やかですが、私はあの日に何かをされているんだと思います」
ジュエリアは、まさか罪人たちの中から、セルマ寡妃に繋がる発言をするものが現れるとは思っておらず、困惑し、シベリウスを手招きして助言を求めた。
「シベリウスはどう思う?」
「トマスの探し物の可能性が高いと思う。とりあえず、彼らは街の牢ではなく、フロリジア城の牢に入ってもらい、ジュエルが決める最終審判を待ってもらいましょう。その方が、ジュエルの目の届くところで、彼らが不遇な目に遭う確率が下がります」
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