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27. 僕の宝石
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シベリウスは夢を見ていた——。
真っ暗な夢の中で横たわる自分。お腹が空いて、喉が渇いて、力が入らない。身体は骨と皮ばかりで、所々赤く腫れて痛む、膿んだ傷がある。
シベリウスは子供の時の姿になっていた。
その身体に黒い影がいくつも纏わりつき始め、不気味で恐ろしい声が暗闇に響き出す。
「キエロ……」
「サワルナ……」
「ケガラワシイ……」
もう自分は死ぬのだろう。そう思った時、目の前が輝き出し、一人の幼い少女が現れる。輝くゴールドブロンドの髪はまるで宝石のような煌めきで、少し気の強そうな面持ちは美しい真っ赤な薔薇のようだった。
少女がシベリウスの傷に触れると、跡形もなく肌が綺麗になっていき、痛みが消える。
少女は微笑み、聖ロマニスの加護を祈りながら、シベリウスの額に優しくキスをしてくれた——
殺してやるっ! 槍を持て、バスタードッ!!
シベリウスは飛び起きた。目は大きく開き、呼吸は荒く、心臓が大きく鳴り響く。
時計を見ればまだ深夜。窓の外は月の輝く夜空が見え、街はまだ静かに眠っている。
意識が現実を認識し始めると、急にベッドの上に置いていた手に温もりを感じた。視線を手元に向ければ、白い華奢な手がシベリウスの手の上に乗せられている。
「大丈夫?」
隣で眠っていたジュエリアが、心配そうな表情でシベリウスを見ていた。
「ああ、僕の宝石……」
シベリウスは崩れるようにジュエリアに抱き着き、彼女の胸に顔をうずめる。
ジュエリアは戸惑いながらも、両手でシベリウスを抱きしめ、背中をさすったり、軽くぽんぽんと叩いてあげた。シベリウスは黙ってジュエリアに抱き着いたまま動かない。ジュエリアは彼の身体が僅かに震えているのがわかった。
「シベリウス、顔を上げて」
ジュエリアの声で、シベリウスはやっと顔を上げて彼女を見た。彼の表情はまだ少し青ざめていて、唇の血色も悪い。
ジュエリアはシベリウスの頬を両手で包む。
「聖ロマニスのご加護がありますように……」
ジュエリアはそう祈り、シベリウスの額にキスをする。
シベリウスはジュエリアを見つめ、動かなくなった。
「シベリウス?」
「僕の宝石——」
シベリウスは吸い寄せられるようにジュエリアの唇にキスをする。
ジュエリアは、そのキスの温かさに、眠る前の寂しさが全て吹き飛んだ。
彼が私を求めているのがわかる。
シベリウスという存在が、身と心に沁みていく。
私は誰かに必要とされたかったのかもしれない。
どんな夢を見て、何に震えているのかはわからないけど、彼に安らぎを与える役目は、他の女性ではなく、自分でありたい。
トマスは正しくて、自分は誰かに強く必要とされたくて、愛を囁くシベリウスに、もっともっとと子供のようにねだっていたのだろう。
ずっと寂しかった気持ちを、彼が満たしてくれていたのだ。
愛を与えられなかった時や、それが偽りだった時が怖くて、意識せず隠していた気持ちに気づいた。
私はシベリウスをずっと前から好きなのだ。
そう思いながらキスを受け入れ始めると、ジュエリアの心臓は早鐘を打ちだし、息は上がり、身体はうずき、腹の底から欲が溢れ出てくる。
もっと深く繋がりたい……シベリウスがもう私から離れられないくらい……。
ジュエリアの手が自然と降りていき、シベリウスの腰を自分の身体に引き寄せる様に掴む。
手のひらが彼の古傷に触れ、ジュエリアは優しく傷に沿ってなぞっていく。
だが、シベリウスはキスを止めて起き上がり、ベッドから降りてしまう。
「シベリウス?」
「すいません、ジュエル。ちゃんと今日から違う部屋で寝ます」
「え? シベリウス??」
シベリウスはジュエリアの額にキスをして、力なく微笑むと、落ちていたナイトローブを拾ってそのまま部屋を出て行ってしまった。
真っ暗な夢の中で横たわる自分。お腹が空いて、喉が渇いて、力が入らない。身体は骨と皮ばかりで、所々赤く腫れて痛む、膿んだ傷がある。
シベリウスは子供の時の姿になっていた。
その身体に黒い影がいくつも纏わりつき始め、不気味で恐ろしい声が暗闇に響き出す。
「キエロ……」
「サワルナ……」
「ケガラワシイ……」
もう自分は死ぬのだろう。そう思った時、目の前が輝き出し、一人の幼い少女が現れる。輝くゴールドブロンドの髪はまるで宝石のような煌めきで、少し気の強そうな面持ちは美しい真っ赤な薔薇のようだった。
少女がシベリウスの傷に触れると、跡形もなく肌が綺麗になっていき、痛みが消える。
少女は微笑み、聖ロマニスの加護を祈りながら、シベリウスの額に優しくキスをしてくれた——
殺してやるっ! 槍を持て、バスタードッ!!
シベリウスは飛び起きた。目は大きく開き、呼吸は荒く、心臓が大きく鳴り響く。
時計を見ればまだ深夜。窓の外は月の輝く夜空が見え、街はまだ静かに眠っている。
意識が現実を認識し始めると、急にベッドの上に置いていた手に温もりを感じた。視線を手元に向ければ、白い華奢な手がシベリウスの手の上に乗せられている。
「大丈夫?」
隣で眠っていたジュエリアが、心配そうな表情でシベリウスを見ていた。
「ああ、僕の宝石……」
シベリウスは崩れるようにジュエリアに抱き着き、彼女の胸に顔をうずめる。
ジュエリアは戸惑いながらも、両手でシベリウスを抱きしめ、背中をさすったり、軽くぽんぽんと叩いてあげた。シベリウスは黙ってジュエリアに抱き着いたまま動かない。ジュエリアは彼の身体が僅かに震えているのがわかった。
「シベリウス、顔を上げて」
ジュエリアの声で、シベリウスはやっと顔を上げて彼女を見た。彼の表情はまだ少し青ざめていて、唇の血色も悪い。
ジュエリアはシベリウスの頬を両手で包む。
「聖ロマニスのご加護がありますように……」
ジュエリアはそう祈り、シベリウスの額にキスをする。
シベリウスはジュエリアを見つめ、動かなくなった。
「シベリウス?」
「僕の宝石——」
シベリウスは吸い寄せられるようにジュエリアの唇にキスをする。
ジュエリアは、そのキスの温かさに、眠る前の寂しさが全て吹き飛んだ。
彼が私を求めているのがわかる。
シベリウスという存在が、身と心に沁みていく。
私は誰かに必要とされたかったのかもしれない。
どんな夢を見て、何に震えているのかはわからないけど、彼に安らぎを与える役目は、他の女性ではなく、自分でありたい。
トマスは正しくて、自分は誰かに強く必要とされたくて、愛を囁くシベリウスに、もっともっとと子供のようにねだっていたのだろう。
ずっと寂しかった気持ちを、彼が満たしてくれていたのだ。
愛を与えられなかった時や、それが偽りだった時が怖くて、意識せず隠していた気持ちに気づいた。
私はシベリウスをずっと前から好きなのだ。
そう思いながらキスを受け入れ始めると、ジュエリアの心臓は早鐘を打ちだし、息は上がり、身体はうずき、腹の底から欲が溢れ出てくる。
もっと深く繋がりたい……シベリウスがもう私から離れられないくらい……。
ジュエリアの手が自然と降りていき、シベリウスの腰を自分の身体に引き寄せる様に掴む。
手のひらが彼の古傷に触れ、ジュエリアは優しく傷に沿ってなぞっていく。
だが、シベリウスはキスを止めて起き上がり、ベッドから降りてしまう。
「シベリウス?」
「すいません、ジュエル。ちゃんと今日から違う部屋で寝ます」
「え? シベリウス??」
シベリウスはジュエリアの額にキスをして、力なく微笑むと、落ちていたナイトローブを拾ってそのまま部屋を出て行ってしまった。
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