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4.さてどうするか
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翌日、フォンテーヌ寄宿学校は大騒ぎとなっていた。秋学期も始まる直前に生徒の一人が意識不明になったのだ。しかもそれはこの国の第二王子。生徒のみならず、職員一同が大慌てで建物の中を右往左往していた。
そして、学校へと続くアプローチに王家の馬車が次々と入って来る。
校長を始め、寮長や教師たちが一同に玄関先で直立不動で待機する。
王家の馬車が停まり、中からバルトラ大将が険しい顔をしながら降りて来た。そして、その後にフランソワ国王とグレース王妃が降りて来る。
国王夫妻の前に校長が出て深々と頭を下げた。
「この度は私共の落ち度により、大切な王子殿下を——」
普段は穏やかに笑っているフランソワ国王だが、今は珍しく険しい表情をしている。
「詫びの言葉は全ての状況を判断してからだ。まずはヴィルヘルムのもとへ案内を」
国王が歩き出せば、国王の隣にはグレース王妃が、近くにはバルトラ大将がおり、彼らの後ろにはゾロゾロと医師や近衛兵や侍従達が続き、大行列となって男子寮へと向かっていく。
その物々しい雰囲気に興味津々の生徒達が、学校や寮の窓に張り付いていた。
いつもは噂や騒ぎに興味のないスカーレットも、今日は他の生徒達と一緒になって窓に張り付いている。
フランソワ国王とグレース王妃がヴィルヘルム王子の部屋に入ると、王子はベッドの上で静かに眠っていた。ベンジーは昨晩ヴィルヘルムをベッドに寝かせる際に、ちゃんとイヤーカフを外して髪を元に戻してくれていた。
「ヴィル!」
グレース王妃が駆け寄り、涙を流してヴィルヘルム王子の頬へと自身の頬を寄せる。
「お願い、目を覚まして……可愛い私の赤ちゃん」
その様子を誰にも気づかれずに見つめる二人が居た。ヴィルヘルム王子の魂とサラだ。
母親が憔悴した様子は、さすがに見ているのが辛い。ヴィルヘルム王子が目を逸らして隣のサラを見れば、彼女の目には涙が溢れていた。
「え?」
戸惑うヴィルヘルム王子に気づいたサラは、必死に涙を拭う。
「あらやだ、私こういうのに弱いのよぉ。映画とかもヒューマンドラマとかはもう涙が止まらなくて」
「映画? ヒューマンドラマ??」
「も~、忘れて~」
サラはどこからともなくハンカチを取り出し、ブーッと鼻をかんだ。
「え? 鼻かむの? 浮遊霊が?」
「浮遊霊じゃないってばぁ」
ヴィルヘルム王子とサラには笑顔が少しだけ戻った。
「なあ、ちょっとだけ、父と母の顔が良く見えるとこにいってもいいか?」
「ええ、行ってらっしゃい」
ヴィルヘルム王子はスーッと滑らかにベッドのそばまで進んで行った。
サラは少し離れた所からヴィルヘルム王子と、フランソワ国王、グレース王妃の様子を見て、ぽつりと呟く。
「可愛い私の赤ちゃん……か」
また目頭が熱くなりかけた時、ヴィルヘルム王子が戻ってくるのがわかり、なんとか冷静さを保った。
「もういいの?」
「ああ、別に死んだわけじゃない。すぐに元気な姿を二人に見せる」
「そうね」
ヴィルヘルム王子とサラが部屋の中を見守る中、王子の肉体は王室主席医師のアゲハによって診察された。
「心臓はしっかりと動いております。目が覚めるのを待つしかないかと」
「そうか。では、王宮に運び、アゲハに任せよう」
ヴィルヘルム王子は、遠い異国出身のアゲハ医師の容姿を見て、どことなくサラに似ている気がした。
「そういえばアゲハのあの姿、どことなくサラに似てないか?」
「似てるのは黒くて長い髪だけでしょ? 私はあんな美人じゃないわよ」
「いや、あれおっさんだから」
「え? おっさんだったの?」
ヴィルヘルム王子はアゲハ医師を再度見るが、確かにサラはあそこまで東方の容姿はしていない。むしろ、がっつりとこの国の人間の容姿だ。やはり、気のせいなのかもしれない。
「確かに、あんな美人ではないな」
「おーい、聞こえてるよー」
二人が話している間に、ヴィルヘルム王子の肉体は担架に乗せられ、近衛兵達によって馬車へと運ばれ始める。
「しばらく寝とけよ、俺の身体」
ヴィルヘルム王子は自分の身体に向かって手を振った。
部屋がガランと静まり返って暫くすると、再び部屋の扉がゆっくりと開いた。部屋の中を覗き込むようにベンジーの顔が現れる。
「えーっと……おーいヴィリー、聞こえてるかー? 今からスカーレットの部屋に行くからなー」
ベンジーはスカーレットと手を繋いでいないとこちらの姿が視えない。ヴィルヘルム王子はとりあえず返事がしたくてサラに目を向けると、サラは手を振りあげる。すると棚の上の物がゴトンッと落ちた。
「うわぁっ」
ベンジーは両腕で構えて怯えた。
「マジでやめて、ポルターガイスト」
♢
スカーレットの部屋にはテーブルの上に地図が広げられており、イスには手を繋いだスカーレットとベンジー、そしてヴィルヘルム王子とサラがいた。
ヴィルヘルム王子は対面で手を繋ぐ二人にもやもやしたが、なんとか平静を保って口を開いた。
「肉体はひとまず安全なところに行ったから、あとは魂が戻る方法だ」
「ええ、私ある事を思い出したんです」
スカーレットは広げていた地図に描かれた一つの魔鉱山を指差す。
「ここはアエスタース領にある魔鉱山の一つで、ウィッシングストーンと呼ばれる巨大な魔石がございます。一生に一度だけ願い事をすることが出来、魔石が光れば願いを叶えてくれるそうです」
「ウィッシングストーン? でも光らないと叶わないの?」
サラの問いにスカーレットはきっぱりと答えた。
「ええ、何でもは叶えてくれません」
ヴィルヘルム王子とベンジーは顔を見合わせて苦笑いしたが、頷くしかなかった。
「一か八かの賭けみたいだけど、何も方法がないからやるしかないな……」
「俺さぁ、山登り嫌いなんだけどね~。親友のピンチなら頑張るしかないよねぇ……」
「別にいいよ」
「いや、行くよ。だって王室の人間に恩は売っておくべきだろ」
「おい、てめえ」
「どーせスカーレット一人じゃ行かせられないだろ、ヴィリーは。頼れって、俺に」
「場所だけ聞けば、俺が飛んでいけばいいだけだろ」
ヴィルヘルム王子の発言に、スカーレットは片手を振った。
「いえ、願いを掛ける時はウィッシングストーンに触れなくてはならないので、殿下では無理です」
「じゃ、じゃあ、他の誰かに頼もう。父や母にお願いしてもいい。スカーレットは行かなくていい」
「いえ……でもそれだと……」
ベンジーはスカーレットを眺めながら、何となく彼女が嫌がる理由がわかってきた。彼女は決して人気者ではない。むしろ影の薄い、学校内ヒエラルキーの最下層だ。そんな彼女がヴィルヘルム王子の婚約者なのだから、気に食わないと思っている女子は沢山いるはず。
「そうか、だから外でヴィリーといちゃつけないのか」
「え?」
ベンジーの急な発言に、スカーレットもヴィルヘルム王子も目を点にして彼を見た。
「ベンジー、何だ急に?」
「いや、だから、まあその、コホンッ」
さすがにヴィルヘルム王子とスカーレットの前で彼女は最下層組で、なのにヴィリーの婚約者で女子から敵視されてますとは言えない。
でもだからこそ、彼女は周りに霊が視えるんですっ! なんて言って協力は求められないと、果たしてどう上手くヴィリーに伝えるか。彼女が霊が視えるなんて皆に言えば、最下層から一気にヒエラルキー圏外のヤバい奴まで転げ落ちる。
「霊が視えるとか言われたら、普通、ほら、どんな人気者が言っても一回引くよな。元々スカーレットは友達も多い方じゃないだろ? だから、皆に引かれたら、なんていうか、うーん、学校生活が苦しくなるんじゃないか?」
ベンジーは上手く代弁できたか少し不安になって、ちらっとスカーレットを見た。彼女は俯きながら、こくんと頷いていた。なんだか少し胸が痛んだ。
「はい。きっと私が霊が視えて、手を繋げばあなたも視えますなんて言えば、学校どころか社交界でも生きていけないと思いますし、何より殿下の評判を下げます。国王陛下に知られるのも、出来れば避けたいです。だって、陛下がこんな私を知ってもしも……もしも……」
「もしも?」
ヴィルヘルム王子は向かい合う席にいる、俯いたスカーレットの顔を覗き込む。
「もしも国王陛下に知られて気味悪がられ、殿下と婚約破棄になんてなってしまったらと思うと……」
顔を上げて真っ直ぐにヴィルヘルム王子を見つめるスカーレットの瞳には、大粒の涙がポロポロと零れ落ちていた。
(きゃ……きゃわっ……)
ヴィルヘルム王子の頭の中はお花畑であった。
涙を流して自分との婚約破棄を嫌がるスカーレットの姿が見られるなんて、天にも昇る気持ちである。いや、キスもしてないのに昇りたくはない。
「ごっ、ごほんっ……そ、それなら仕方ないな……じゃあ、ベンジー、悪いが頼む」
「お、おう。それで、ここからだと、ウィッシングストーンの場所まではどれ位で着けるんだ?」
スカーレットは眼鏡をずらして涙を拭い、地図と睨めっこした。
「うーん……そうですねぇ……ここから魔鉱山まで馬で約一週間、登山と下山は一日で出来るとして、戻りに一週間ですかね」
「おいおい、秋学期はもう始まるぞ。いつそんなに大型連休取れるんだ?」
ベンジーの発言はもっともで、これには全員がまた頭を悩ませた。
そして、学校へと続くアプローチに王家の馬車が次々と入って来る。
校長を始め、寮長や教師たちが一同に玄関先で直立不動で待機する。
王家の馬車が停まり、中からバルトラ大将が険しい顔をしながら降りて来た。そして、その後にフランソワ国王とグレース王妃が降りて来る。
国王夫妻の前に校長が出て深々と頭を下げた。
「この度は私共の落ち度により、大切な王子殿下を——」
普段は穏やかに笑っているフランソワ国王だが、今は珍しく険しい表情をしている。
「詫びの言葉は全ての状況を判断してからだ。まずはヴィルヘルムのもとへ案内を」
国王が歩き出せば、国王の隣にはグレース王妃が、近くにはバルトラ大将がおり、彼らの後ろにはゾロゾロと医師や近衛兵や侍従達が続き、大行列となって男子寮へと向かっていく。
その物々しい雰囲気に興味津々の生徒達が、学校や寮の窓に張り付いていた。
いつもは噂や騒ぎに興味のないスカーレットも、今日は他の生徒達と一緒になって窓に張り付いている。
フランソワ国王とグレース王妃がヴィルヘルム王子の部屋に入ると、王子はベッドの上で静かに眠っていた。ベンジーは昨晩ヴィルヘルムをベッドに寝かせる際に、ちゃんとイヤーカフを外して髪を元に戻してくれていた。
「ヴィル!」
グレース王妃が駆け寄り、涙を流してヴィルヘルム王子の頬へと自身の頬を寄せる。
「お願い、目を覚まして……可愛い私の赤ちゃん」
その様子を誰にも気づかれずに見つめる二人が居た。ヴィルヘルム王子の魂とサラだ。
母親が憔悴した様子は、さすがに見ているのが辛い。ヴィルヘルム王子が目を逸らして隣のサラを見れば、彼女の目には涙が溢れていた。
「え?」
戸惑うヴィルヘルム王子に気づいたサラは、必死に涙を拭う。
「あらやだ、私こういうのに弱いのよぉ。映画とかもヒューマンドラマとかはもう涙が止まらなくて」
「映画? ヒューマンドラマ??」
「も~、忘れて~」
サラはどこからともなくハンカチを取り出し、ブーッと鼻をかんだ。
「え? 鼻かむの? 浮遊霊が?」
「浮遊霊じゃないってばぁ」
ヴィルヘルム王子とサラには笑顔が少しだけ戻った。
「なあ、ちょっとだけ、父と母の顔が良く見えるとこにいってもいいか?」
「ええ、行ってらっしゃい」
ヴィルヘルム王子はスーッと滑らかにベッドのそばまで進んで行った。
サラは少し離れた所からヴィルヘルム王子と、フランソワ国王、グレース王妃の様子を見て、ぽつりと呟く。
「可愛い私の赤ちゃん……か」
また目頭が熱くなりかけた時、ヴィルヘルム王子が戻ってくるのがわかり、なんとか冷静さを保った。
「もういいの?」
「ああ、別に死んだわけじゃない。すぐに元気な姿を二人に見せる」
「そうね」
ヴィルヘルム王子とサラが部屋の中を見守る中、王子の肉体は王室主席医師のアゲハによって診察された。
「心臓はしっかりと動いております。目が覚めるのを待つしかないかと」
「そうか。では、王宮に運び、アゲハに任せよう」
ヴィルヘルム王子は、遠い異国出身のアゲハ医師の容姿を見て、どことなくサラに似ている気がした。
「そういえばアゲハのあの姿、どことなくサラに似てないか?」
「似てるのは黒くて長い髪だけでしょ? 私はあんな美人じゃないわよ」
「いや、あれおっさんだから」
「え? おっさんだったの?」
ヴィルヘルム王子はアゲハ医師を再度見るが、確かにサラはあそこまで東方の容姿はしていない。むしろ、がっつりとこの国の人間の容姿だ。やはり、気のせいなのかもしれない。
「確かに、あんな美人ではないな」
「おーい、聞こえてるよー」
二人が話している間に、ヴィルヘルム王子の肉体は担架に乗せられ、近衛兵達によって馬車へと運ばれ始める。
「しばらく寝とけよ、俺の身体」
ヴィルヘルム王子は自分の身体に向かって手を振った。
部屋がガランと静まり返って暫くすると、再び部屋の扉がゆっくりと開いた。部屋の中を覗き込むようにベンジーの顔が現れる。
「えーっと……おーいヴィリー、聞こえてるかー? 今からスカーレットの部屋に行くからなー」
ベンジーはスカーレットと手を繋いでいないとこちらの姿が視えない。ヴィルヘルム王子はとりあえず返事がしたくてサラに目を向けると、サラは手を振りあげる。すると棚の上の物がゴトンッと落ちた。
「うわぁっ」
ベンジーは両腕で構えて怯えた。
「マジでやめて、ポルターガイスト」
♢
スカーレットの部屋にはテーブルの上に地図が広げられており、イスには手を繋いだスカーレットとベンジー、そしてヴィルヘルム王子とサラがいた。
ヴィルヘルム王子は対面で手を繋ぐ二人にもやもやしたが、なんとか平静を保って口を開いた。
「肉体はひとまず安全なところに行ったから、あとは魂が戻る方法だ」
「ええ、私ある事を思い出したんです」
スカーレットは広げていた地図に描かれた一つの魔鉱山を指差す。
「ここはアエスタース領にある魔鉱山の一つで、ウィッシングストーンと呼ばれる巨大な魔石がございます。一生に一度だけ願い事をすることが出来、魔石が光れば願いを叶えてくれるそうです」
「ウィッシングストーン? でも光らないと叶わないの?」
サラの問いにスカーレットはきっぱりと答えた。
「ええ、何でもは叶えてくれません」
ヴィルヘルム王子とベンジーは顔を見合わせて苦笑いしたが、頷くしかなかった。
「一か八かの賭けみたいだけど、何も方法がないからやるしかないな……」
「俺さぁ、山登り嫌いなんだけどね~。親友のピンチなら頑張るしかないよねぇ……」
「別にいいよ」
「いや、行くよ。だって王室の人間に恩は売っておくべきだろ」
「おい、てめえ」
「どーせスカーレット一人じゃ行かせられないだろ、ヴィリーは。頼れって、俺に」
「場所だけ聞けば、俺が飛んでいけばいいだけだろ」
ヴィルヘルム王子の発言に、スカーレットは片手を振った。
「いえ、願いを掛ける時はウィッシングストーンに触れなくてはならないので、殿下では無理です」
「じゃ、じゃあ、他の誰かに頼もう。父や母にお願いしてもいい。スカーレットは行かなくていい」
「いえ……でもそれだと……」
ベンジーはスカーレットを眺めながら、何となく彼女が嫌がる理由がわかってきた。彼女は決して人気者ではない。むしろ影の薄い、学校内ヒエラルキーの最下層だ。そんな彼女がヴィルヘルム王子の婚約者なのだから、気に食わないと思っている女子は沢山いるはず。
「そうか、だから外でヴィリーといちゃつけないのか」
「え?」
ベンジーの急な発言に、スカーレットもヴィルヘルム王子も目を点にして彼を見た。
「ベンジー、何だ急に?」
「いや、だから、まあその、コホンッ」
さすがにヴィルヘルム王子とスカーレットの前で彼女は最下層組で、なのにヴィリーの婚約者で女子から敵視されてますとは言えない。
でもだからこそ、彼女は周りに霊が視えるんですっ! なんて言って協力は求められないと、果たしてどう上手くヴィリーに伝えるか。彼女が霊が視えるなんて皆に言えば、最下層から一気にヒエラルキー圏外のヤバい奴まで転げ落ちる。
「霊が視えるとか言われたら、普通、ほら、どんな人気者が言っても一回引くよな。元々スカーレットは友達も多い方じゃないだろ? だから、皆に引かれたら、なんていうか、うーん、学校生活が苦しくなるんじゃないか?」
ベンジーは上手く代弁できたか少し不安になって、ちらっとスカーレットを見た。彼女は俯きながら、こくんと頷いていた。なんだか少し胸が痛んだ。
「はい。きっと私が霊が視えて、手を繋げばあなたも視えますなんて言えば、学校どころか社交界でも生きていけないと思いますし、何より殿下の評判を下げます。国王陛下に知られるのも、出来れば避けたいです。だって、陛下がこんな私を知ってもしも……もしも……」
「もしも?」
ヴィルヘルム王子は向かい合う席にいる、俯いたスカーレットの顔を覗き込む。
「もしも国王陛下に知られて気味悪がられ、殿下と婚約破棄になんてなってしまったらと思うと……」
顔を上げて真っ直ぐにヴィルヘルム王子を見つめるスカーレットの瞳には、大粒の涙がポロポロと零れ落ちていた。
(きゃ……きゃわっ……)
ヴィルヘルム王子の頭の中はお花畑であった。
涙を流して自分との婚約破棄を嫌がるスカーレットの姿が見られるなんて、天にも昇る気持ちである。いや、キスもしてないのに昇りたくはない。
「ごっ、ごほんっ……そ、それなら仕方ないな……じゃあ、ベンジー、悪いが頼む」
「お、おう。それで、ここからだと、ウィッシングストーンの場所まではどれ位で着けるんだ?」
スカーレットは眼鏡をずらして涙を拭い、地図と睨めっこした。
「うーん……そうですねぇ……ここから魔鉱山まで馬で約一週間、登山と下山は一日で出来るとして、戻りに一週間ですかね」
「おいおい、秋学期はもう始まるぞ。いつそんなに大型連休取れるんだ?」
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