謎と恋のクロスロード

File04. 容疑者・廉

06. 罠

俺たちが店長のいる場所に戻ると、彼は腕を組み、焦った様子で苛立ちを隠そうとしているように見えた。

「店長さん、少し確認させていただきたいことがあります。」
「まだ俺を疑うのか？ さっきも言ったが、俺はやっていない！ 犯人は三浦君に決まっているだろ！」

「落ち着いてください。ただ、気になる点があるのでお伺いするだけです。」
俺は冷静に言いながら、事件のタイムラインを整理するように話を続けた。

「店長さん、犯行時刻に別の店で仕入れをしていた、と証言されていますよね？」
「ああ、その通りだ。」
「ですが、そのお店のスタッフに確認したところ、あなたが店を出たのは犯行時刻の約10分前だったと証言しています。」

店長の顔色が一気に変わった。

「そ、それは……移動中だっただけだ！」
「では、移動中だったあなたが、悲鳴を聞いて数分で駆けつけられたのはなぜですか？普通なら、もっと時間がかかるはずです。」

俺の指摘に、店長の視線が揺れた。松本刑事も腕を組み、鋭い目つきで店長を見つめた。

「店長さん、あなたは本当に仕入れをしていたのか？それとも、最初から店の近くにいたのか。」
「そ、それは……」

店長はしどろもどろになり、言葉に詰まった。俺はさらに問い詰める。

「店長さん、包丁の握り手に開いていた小さな穴についてはどう思いますか？あれは誰かが細工した跡ではないかと考えています。」
「そ、そんなこと知らん！」

「本当に知らないんですか？ それとも、あなた自身が細工をしたからですか？」

その瞬間、店長の顔が険しく歪み、低い声で言い返してきた。
「ふざけるな！俺がそんなことをするわけがないだろう！」

松本刑事が冷静に口を挟んだ。
「店長さん、もし潔白なら、協力してもらえるはずだ。私たちはただ真実を知りたいだけだ。」

俺は視線を逸らす店長の動きを見逃さず、さらに追及した。
「店長さん、あなたが真実を隠している理由があるとすれば、それは一体何ですか？」

店長はついに観念したように大きくため息をついた。
「……わかったよ。俺が正直に話す。ただし、俺がやったわけじゃないってことだけは信じてほしい。」

「話を聞いてから判断します。」

店長は苦しそうに語り始めた。
「実は……妻が最近、誰かと親密にしている気配を感じていた。浮気を疑っていたんだ。それで、今日は仕入れを早めに切り上げて様子を見に来たんだ。」
「それで？」
「店に戻ると、妻がバックヤードで誰かと争っている声が聞こえた。慌てて入ったら……妻が倒れていて、そばに三浦が立っていたんだ！」

俺は眉をひそめた。
「その場面を見てすぐに三浦くんを犯人だと決めつけたんですね？」
「そうだ！ほかに誰がやるんだ！」

「ですが、それは少しおかしいです。もし奥さんと誰かが争っていたなら、その相手が三浦くんだと確信できる理由は何ですか？」

店長の表情が曇る。言葉に詰まりながらも、彼の様子から焦りが見え隠れしていた。

俺は直感的に思った。 この人は何かを隠しているそして、それが事件の鍵だ。

（犯人は店長さんで間違いない。あとはトリックだけだ。……でもどうやって遠隔で人を刺す?）