裏切りの魔男

takupon

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異世界漂流編

異世界状況

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「だからもっかい言うぞ!ちゃんと聞いとけよな!まず俺らの敵は魔王の元配下にあたる魔人軍と邪教徒、それに魔王が使役していた、魔獣と魔物だ!ここまではいいな?そんで俺らは無駄な各国との戦争なんか辞めて大きな王国を作りそこから魔王を撃ち倒し今にあたるわけだ!国の戦力は騎士団になって数ヶ月に一回状況整理の為に王国に集まんだ!そこに、魔女が確認されたって報告が上がって、一番近い騎士団である神憑りの切札トランスジョーカーが全戦力で攻撃を仕掛けに行けっていう指令が来たわけだ!俺ら今めっちゃ忙しい時期!そんでお前みたいな魔女の屋敷から現れた危険因子!俺らがお前に何言いたいか分かったか?!」

「無事で良かった?」

彼方が首を傾げなら答える。

「めいわくっっっ!!!なにが「無事で良かった?」だ!お前の所為(せい)でこっちは大変忙しくなるんだよ!分かったら口を閉じて感謝を噛み締めとけ!」

ハリスが彼方のモノマネをしながら説教もするという器用なことをしだす。


「そんなこと言いながらも、さっき「あのガキ助けれて良かったな」とか団長に呟いてたじゃん!」

後ろからセリアが裏切り行為を咬ます。

「お、お前!そういうのは内緒なのが約束だろっ!!」

「あっ、あれウチに言っとったのか?伝言を頼まれたのかと思て彼方に言っちまったわ!」

彼方の後ろにいるカレナが間違いに気がつく。

「このクソ女郎がっ!!俺の話がただの照れ屋みたいな感じで終わっちまったじゃないか!おい、彼方つったか?!そのニヤニヤ顔今すぐやめろや!!」

彼方たちは今、馬に乗って神憑りの切札トランスジョーカーのホームがある、アステリア国に向かっている。
馬に乗っている間にこの世界の事情を聞こうとした彼方にハリスのツンデレお説教が始まってしまったという訳である。
余談だが、彼方は一人で馬に乗れないのでカレナの前に乗せてもらっている。胸が当たって居心地が悪かったのはまた別の話だ。

「よし、ハリスは使いもんにならないからセリアが続きをよろしく頼む」

「使いもんにならないとは何だ!!」と大声でハリスが抗議しているが無視である。

「頼まれました!えっとねー、最初は騎士団の人たちは敵のことなんか気にせず好き放題やってたんだよね!特に私たちだね!でも魔女と魔男、それから大型魔獣を多く倒した団に目一杯の金貨と、団長には王の名を授けるって王様が宣言したんだよ」

ここで彼方がふと疑問を浮かべる。

「王の名を授けるってことはどこかの騎士団の団長が王女あるいは王子と結婚するのか?」

「そうなんだよ、おもいきったよね!」

「そんじゃ、後ろで構ってくれなくていじけているカレナも王族になったりできんだな?」

カレナは難しいことは微塵を分からないので彼方の頭に顎を乗せ拗ねてしまっているのである。
よく団長になったな、と彼方は心底思う。

「そゆこと。団長もそれが狙いで団員を統率しだしたんだよ。それで貴族の人たちも挙って騎士団に入ったらしいよ」

気になることを言ったがそれは後に回す。
セリアは後ろにいる白馬に乗った青年に眼を向けた。
青年はニコリと笑いながらも訂正する。

「僕は家のしがらみが嫌でこの最低の騎士団に逃げて来たんだよ。あの輩とは一緒にしないでくれよ」

「笑顔がまぶくてイケメンで、貴族で皮肉が直ぐに出るのは分かったよ。名前なんていうの?」

白馬に乗った元貴族と自己紹介をする。異世界人の彼方にとっては貴族の話など無頓着なのでズカズカと話に入ってくる。
青年は一瞬だけ彼方の顔をまじまじと見てまた優しい笑顔になる。

「君も凄い皮肉ばっかりだね!えっと、名前だったね?僕の名前はラミルメーンだ。ラミルと呼んでくれ。やっぱり君は遠い田舎から来たのかい?元貴族と聞いて嫌な顔をされなかったのは久し振りで嬉しかったよ!」

異世界人であるということを言うチャンスが回ってきた。言わずにいるのは悪い気がしていたので良い機会だと彼方は思う。





「あ、俺異世界人なんだ」





さりげなく言ったつもりだった。しかし瞬時に一帯が空白に包まれる。無口そうな武士でさえも唖然としている。
聞こえてくる馬の足の蹄音だけが耳に吸い込まれていく。
一番最初に我に返ったのは意外にも前を行く猫男であった。

「嘘は言ってないニャ。鼓動の早さが変わってニャいしな」

猫はやはり耳が良いのだろう。しかし人の鼓動の音まで聞き取れるのは物凄まじきことだ。

「ほ、本物の勇者様で、ですか?!」

空を舞う箒に乗ったおっちょこちょい少女がこちらに期待の眼差しを向ける。
次に口を開いたのは団員の長であるカレナであった。

「な、るほど。ロットが言うなら本当なのやろう。ほなら丁重に扱わんならんね!」

驚きが隠しきれていないカレナは何かおかしなことを口走る。やはり脳筋なのであろう、と彼方が解釈する。冗談だと受け取とり、

「やめろよ。今更丁重に扱われると調子乗るぜ俺は!」

「そうだぜ、こんなガキに敬語とか嫌だぜ」

またもやおかしなことを言う。言い出したのはハリスだ。まるで異世界人は敬うのが当たり前、という考えの元から言い出したみたいであった。
しかし、そんなことより彼方は、

「まて、お前は敬語で良い。なんかムカつく。あ、分かった。親友に似ているんだ、喋り方が」

「それなら、その親友に敬語使わせろや!俺は無害じゃねぇかっ!」

「五月蝿い、親友は今頃王国とやらに居るから会ったら言っといてやるよ!お前の口調を真似するムキムキ巨人が居るってな!!」

「内容が変わってるじゃねぇか!!」

なんやかんやと争っていると道の先にボロボロでヒビが入りかけの包囲壁が見える。アステリア国だ。

「よし、異世界人が見つかってしもた以上、匿っとくことはできひん。ほんまに残念やけどうちらは予定を変えてすぐに王国に向かう。戻ったら即座に出発するで!」

それぞれから掛け声が挙がる。
彼方はそんなことよりも異世界で初めての町に喜び馳せていた。何日目かも分からない異世界だが、やっと安堵して休めるのだ。嬉しいわけがない。
彼方は翹望ぎょうぼうの思いを馳せ町に向かう。





――先のことなんか気にせずに。
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