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清楚で慎ましい令嬢は浮気現場を目撃して悪役令嬢となりました
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私、オルテラーノ子爵の息女であるソフィアーノは、自分で言うのもなんですれけど、清楚で慎ましいと評判の令嬢でしたの。
私の元には多くの婚約の申し込みをいただいたのですけれど、魅力的な殿方であればあるほどに不安が募るものです。その不安とは、浮気です。
夫婦となるからには互いに信頼関係を結び、ただひとりの人を生涯にわたって愛し尽くすこと。これこそが、理想の形ですわ。
私、夫なる殿方には私ひとりだけを愛して欲しいのです。そのためには、多少見目が悪くとも、性格に多少難があろうとも、耐えられますわ……
そう考えて選んだのが、バラランド男爵であるマリオット様でした。見た目はまぁ、中の……中といったところでしょうか。可もなく、不可もなく、これといった特出した魅力はありません。
けれど、とてもお優しくて、いつも笑顔でニコニコとされていて、誰かと言い争うことなどありません。剣術が苦手で、それをからかわれても、黙って聞いているような方です。気弱で、優柔不断で、自分のしっかりした意見がなくて……頼りない面はありますけれど、それよりも私にとって重要なのは、浮気をしないこと、ですわ。
マリオット様でしたら、私を生涯にわたって大切にしてくださるはず。
そんな確信を持って、私はマリオット様と婚約いたしました。
ある日、私は思いついてマリオット様に手作りのケーキを焼いてお持ちすることにしました。
いつもでしたらマリオット様にお会いする時には事前にご確認していたのですけれど、婚約者ですもの、突然訪問しても大丈夫ですわよね。
扉をノックしますと、メイドが出迎えました。
「ご機嫌よう。マリオット様に会いに来ましたが、いらっしゃるかしら?」
「ソ、ソフィアーノ、様っっ!!
ぁ、えと……マリオット様でしたら、ただいま留守、でして……」
驚愕し、狼狽するメイドを前に、女の勘が働きました。
なにか、私に言えないことがあるのだと。
「失礼しますわね」
私はメイドの横を通ると、まっすぐマリオット様の寝室へと向かいました。
「お、お待ちくださいませ!!」
メイドが慌てて止めようとしますが、くるりと振り返り、にっこりと微笑みました。
「マリオット様の寝室にケーキを置いてくるだけですわ。マリオット様の婚約者であり、オルテラーノ子爵の令嬢である私に対して、何かご反論がおありかしら?」
「い、いえ……その……」
「大丈夫ですわ。私が来た時には、あなたはいらっしゃらなかったということにしておけばよいのですから」
そう告げると、再び歩き出しました。メイドは諦めたように、私を見送ります。
バターン!
と扉を開けると、そこには恐れていた現場を目撃することになりました。
マリオット様と、あろうことか悪名高い私の妹、ヴィアンカがベッドで卑猥なアクロバットを繰り広げていたのです。
「ソ、ソフィアーノ!!」
私を見たマリオット様の顔が一気に青褪めます。
「マリオット様、ごきげんよう」
にっこりと微笑むと、つかつかとマリオット様へと歩み寄り、手にしていたケーキを思いっきり彼の顔面に叩きつけると、それを捻じ込むようにグリグリと塗り付けました。
「グガッ! ググッ、ガッ……」
「貴方を妹に紹介したのは、ヴィアンカなら間違いなく誘惑するだろうと知っていたからですわ。その罠にまんまと嵌るなんて……愚かな男ですわね」
窓を開けると、馬車で待機していた私の両親、そしてマリオット様のご両親に黒である印である黒いハンカチを振りました。マリオット様の母君はそれを見て卒倒されたようです。
「今から私たちの両親がまいり、貴方方はここから追放されることになりますわ。
せいぜい、おふたりの新たな暮らしをお楽しみくださいませ」
さて、また新たな婚約者選びを始めないといけませんわね。
私には悪名高い妹があと13人おります。
足りますでしょうか。
私の元には多くの婚約の申し込みをいただいたのですけれど、魅力的な殿方であればあるほどに不安が募るものです。その不安とは、浮気です。
夫婦となるからには互いに信頼関係を結び、ただひとりの人を生涯にわたって愛し尽くすこと。これこそが、理想の形ですわ。
私、夫なる殿方には私ひとりだけを愛して欲しいのです。そのためには、多少見目が悪くとも、性格に多少難があろうとも、耐えられますわ……
そう考えて選んだのが、バラランド男爵であるマリオット様でした。見た目はまぁ、中の……中といったところでしょうか。可もなく、不可もなく、これといった特出した魅力はありません。
けれど、とてもお優しくて、いつも笑顔でニコニコとされていて、誰かと言い争うことなどありません。剣術が苦手で、それをからかわれても、黙って聞いているような方です。気弱で、優柔不断で、自分のしっかりした意見がなくて……頼りない面はありますけれど、それよりも私にとって重要なのは、浮気をしないこと、ですわ。
マリオット様でしたら、私を生涯にわたって大切にしてくださるはず。
そんな確信を持って、私はマリオット様と婚約いたしました。
ある日、私は思いついてマリオット様に手作りのケーキを焼いてお持ちすることにしました。
いつもでしたらマリオット様にお会いする時には事前にご確認していたのですけれど、婚約者ですもの、突然訪問しても大丈夫ですわよね。
扉をノックしますと、メイドが出迎えました。
「ご機嫌よう。マリオット様に会いに来ましたが、いらっしゃるかしら?」
「ソ、ソフィアーノ、様っっ!!
ぁ、えと……マリオット様でしたら、ただいま留守、でして……」
驚愕し、狼狽するメイドを前に、女の勘が働きました。
なにか、私に言えないことがあるのだと。
「失礼しますわね」
私はメイドの横を通ると、まっすぐマリオット様の寝室へと向かいました。
「お、お待ちくださいませ!!」
メイドが慌てて止めようとしますが、くるりと振り返り、にっこりと微笑みました。
「マリオット様の寝室にケーキを置いてくるだけですわ。マリオット様の婚約者であり、オルテラーノ子爵の令嬢である私に対して、何かご反論がおありかしら?」
「い、いえ……その……」
「大丈夫ですわ。私が来た時には、あなたはいらっしゃらなかったということにしておけばよいのですから」
そう告げると、再び歩き出しました。メイドは諦めたように、私を見送ります。
バターン!
と扉を開けると、そこには恐れていた現場を目撃することになりました。
マリオット様と、あろうことか悪名高い私の妹、ヴィアンカがベッドで卑猥なアクロバットを繰り広げていたのです。
「ソ、ソフィアーノ!!」
私を見たマリオット様の顔が一気に青褪めます。
「マリオット様、ごきげんよう」
にっこりと微笑むと、つかつかとマリオット様へと歩み寄り、手にしていたケーキを思いっきり彼の顔面に叩きつけると、それを捻じ込むようにグリグリと塗り付けました。
「グガッ! ググッ、ガッ……」
「貴方を妹に紹介したのは、ヴィアンカなら間違いなく誘惑するだろうと知っていたからですわ。その罠にまんまと嵌るなんて……愚かな男ですわね」
窓を開けると、馬車で待機していた私の両親、そしてマリオット様のご両親に黒である印である黒いハンカチを振りました。マリオット様の母君はそれを見て卒倒されたようです。
「今から私たちの両親がまいり、貴方方はここから追放されることになりますわ。
せいぜい、おふたりの新たな暮らしをお楽しみくださいませ」
さて、また新たな婚約者選びを始めないといけませんわね。
私には悪名高い妹があと13人おります。
足りますでしょうか。
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