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愛の為に

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 相変わらず、直貴の鬱状態は続いた。

 幼い頃から受け続けた虐待の傷が、そんな簡単に癒されるはずない。深く刻まれた痛みだからこそ、素直という別の人格が現れたのだから。

 そう、自分を納得させようとしても、僕は会う度に直貴の状況が好転しないことに焦りを覚え、不安になり、どうしてあんなことを話してしまったんだろうと後悔に陥った。

 一方、創一様の誘導により、僕は直と創一様以外とも、ようやく話をすることが出来た。皆それぞれ、言い方や表情は異なるけど、僕と離れたくない、また元の生活に戻りたいって意思は同じだった。

 瞳を開けると、僕を愛おしそうに見つめるロイヤルが、そこにいた。

『ユーキ、君と離れて過ごす日々が僕にとってどんなに辛く苦しいものか、分かるかい?
 本当に、君が恋しいよ……こうして君を目の前にして嬉しいのに、この場で君を抱けないんだって思うと余計に切なくなる』

 ダリアは、健気に笑顔を見せてくれた。

「夕ちゃん、心配しないで。あたしは大丈夫だから。ほら、みんなと違ってあたしって頑丈に出来てるからぁ。それより夕ちゃん、ちゃんとご飯食べてるの?あたしがいなくて寂しい思いしてない?」 

 勝太の時は酷かったなぁ。

「俺はぜってぇー、アイツやお前の思い通りにはなんねぇかんな!」
「勝太……僕は、勝太がいなくなってくれればいいだなんて、思ってないよ」

 それを聞き、カウンセラーの血相が変わる。

 だって、本当のことだもん。

「だったら、俺たちを元の生活に戻せよ! 俺はこんな生活、耐えらんねー!」
「あのさぁ、苦労してるのは勝太だけじゃないんだよ? 僕だってさ、毎週大変な思いして来てるんだから」
「っるせー、知るか!」

 エビリファイ飲んでるはずなのに、勝太には効いてないみたいだ。でも、いつも通りの勝太にホッとしたし、救われた気がした。
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