【BLーR１８】５人との、甘美で危険な戯れ

敗北

１

　完璧だった。はず、だったんだ……

　頭にネットを巻かれ、口に人工呼吸器をつけ、ベッドに横たわる彼を……彼らを、僕は見つめた。

「ｯｸ……直……勝太……ロイヤル……ダリア……創一、様……出て来てよ」

　僕を、独りにしないでよ……

　ガチャッ。

　無遠慮に開かれる病室の扉。誰なのかはもう、後ろを振り向かなくても分かる。

「夕貴、お前の負けだ」

　お祖父様が、厳格な声でゲーム終了を告げる。

　でも、諦めの悪い僕は、負けを認めることなんて出来なかった。

「誰も逃げ出してない！　直貴はただパニックに陥っただけなんだ！　まだ……まだ、僕たちの世界は終わってない！！」
「夕貴！」

　張り上がった声に、躰がビクンと震える。

「往生際が悪いぞ。負けたお前は大学に戻り、勉強に励むのだ。そして二度と、直貴に近づくな！」
「そ、んな……」

　最後通牒を受け、僕は膝から崩れ落ちた。お祖父様の膝に縋りつき、恥じらいもなく大声を上げる。

「嫌だ！　直貴と、みんなと離れるなんて、僕には耐えられない！！　僕には彼らが必要なんだ！　お願い、お願いお祖父様……会うななんて、言わないで。みんなに会わせてくれるなら、大学にだって戻るし、勉強だってするし、松ノ内コンツェルンだって継いでみせる。みんながいなきゃ、ダメなんだ……ｳｯ、ｳｯ……」

　激しく感情を吐露した僕に、同情の欠片すら感じられない言葉が落とされる。

「バカな恋愛ごっこに振り回されおって。これからは、松ノ内の人間として正しい道を進め。それが、お前がすべきことだ」

　力の抜けた僕の腕からお祖父様は脚を引き抜き、去っていった。

　崩れ落ちる僕に幸田が歩み寄り、引き上げようとする。

「さぁ、夕貴坊っちゃま。本家に帰りましょう……」
「嫌だ！　僕はここにいる！！　ずっと、傍にいるって誓ったんだ！！」
　
　幸田は深く息を吐くと、いったん去り、扉を開けた。

　すると、幸田と共に、別の足音も近づいてきた。

「ご自分の意思で帰らないということになれば、不本意ではありますが力づくでも連れ戻せとの、会長のご命令です」

　幸田の声に顔を上げると、警護の男がいた。ここで暴れても、結局は本家に無理やり連れて行かれるのは目に見えている。

　僕は馬鹿じゃないから、無駄なことはしない。

「分かったよ」
　
　まだ、彼らを取り戻す手立てはあるのだろうか……

　僕は、眠り続ける彼らを背に、病室を後にした。