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異変

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「なんかお前、話しかけやすくなったよな」
「今度バスケ部で試合あるんだ。助っ人として出てくれないか?」
「松ノ内くん、君の成績のことで話があるんだ。授業後、生徒相談室に来なさい」

 身に覚えのないことを次々に言われ、直貴はパニックを起こしていた。

「いったい、どういうこと……僕の知らない間に、何が起こってるんだ……」

 不安と恐れを見せる直貴に、僕は安心させるように肩に手を置いた。

「直貴は心配しないで。直貴のことは、僕が守ってあげるから」

 僕の言葉に、直貴はますます不安の色を濃く滲ませた。

 僕は、完全に直貴を自分の監視下に置くことにした。高等部には地方出身の学生の為の寮があるので、そこに直貴と共に入ることにしたんだ。

『大人として自立する為の一歩として、学生寮に入りたい』と言った僕に対して、お祖父様は良い心掛けだと褒めてくれた。両親は寂しいと口にしながらも、これで僕の顔をみなくて済むとホッとしているのがミエミエだった。

 両親は僕のことよりも自分たちの生活の方が大事なんだ、それぞれにね。
 父親は偉大な祖父に追い付くために、仕事一筋の人間だった。母親は夫にかまってもらえない寂しさを外に求め、出歩いていた。

 僕には小さい頃から直貴がいたから、寂しいなんて思ったことないけどね。無関心でいてくれて、ありがたいぐらいだ。

 学生寮では、当然僕と直貴は同じ部屋だった。お金って、こういうところに使わないとね。

 狭い6畳の部屋の一方の壁につけられた簡素なシングルベッドの上に座った直貴が、心細そうに呟いた。

「母さん、大丈夫かな……」
「大丈夫に決まってるじゃん!きっと今頃はさ、のーんびりしてんじゃない?」
「そう、だよな……」

 直貴は力ない笑みを見せた。

 僕は、これからずっと直貴と一緒にいられる喜びを噛み締めていた。

 最初は不安がってた直貴だったけど、少しずつ高等部や学生寮での生活に慣れ、1年経った頃には笑顔が増えてくるようになってきた。

 勝太は僕との時間が増えたことと、僕が直貴の学生生活を邪魔しないで欲しいと説得したことにより、学生寮でふたりでいる時にのみ現れるようになった。まぁそれでも、お昼ご飯食べてる時とか、ふと二人きりになったりすると、すぐ現れるんだけどね。

「あのさぁ、勝太が現れてる間、直貴が記憶ないの知ってるでしょ? 直貴が戸惑うから、学校にいる間出てくるのやめて欲しいんだけど」
「っるせー。前みたいに学生生活の邪魔はしてねーだろ。これでも気ぃ遣ってやってんだ、感謝しろ」
「フフッ……そんなに僕のことが恋しいんだ?」

 勝太の顔が、途端に真っ赤になった。

「んなわけねーだろ、バーカ!」

 学校では直貴との時間、学生寮では直と勝太との時間を楽しんだ。

 どれも、僕にとって大切な時間だった。
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