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不慮の事故

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 その日、僕の部屋には創一様が訪れていた。

 僕の手は拘束され、フックが掛けられ、滑車に括りつけられている。淫らに突き出したなだらかな双丘を、創一様が背後から激しく腰を打ち付けていた。

「あぁ!!ハァッ、ハァッ……も、だめぇ……創一、さ……まハァッ……イカせて……ハァッ、ハァッ」

 けれど、僕の膨張した猛りはコックリングによって吐精を阻まれ、荒々しく脈を打っていた。

「ハァッ、ハァッ……夕貴……まだ、ですよ……」

 僕は創一様の声を聞き、手を力強く振って悶え苦しんだ。

「ハァッ!ハァッ!やぁぁぁ!!も、無理ぃぃ!!我慢出来ないっっ!!」

 思いっきり手を引っ張った時ーー

 それは、起こった。

 手の拘束が急に緩まったかと思うと、スルスルーッと縄の衣擦れの音が響き、見上げると外れた滑車と釣り金具が間近まで迫っていた。

 逃げなきゃって頭では思うのに、躰が固まって反応してくれない。

「夕貴、危ないっっ!!」

 創一様の声が響くと同時に、ガラガラッカーン、カーン……と甲高い金属音が響いた。
 
 気がつくと、僕は創一様の躰の下に包まれていた。

「そ……いち、さま……?」

 創一様は、微動だにしない。

 嘘……でしょ?

 僕は創一様の躰から抜けると、彼をそっと抱きかかえた。後頭部を支えた途端にぬるっとした感触にビクッとして、手を見ると真っ赤になっている。

 おそるおそる頭を横にすると、後頭部がパックリ割れて血が出ていた。

 こんなことになるなんて……どう、しよう。どうしたら……

 パニックになりそうな頭をなんとか落ち着かせようとするけど、働かない。
 
 こんな時、創一様ならどうするだろう……

「そう、だ……救急、車。救急車、呼ばないと……」

 意識を失っている創一様の呼吸を確かめ、そっとベッドに横たえる。

 急いで扉を開け、廊下に飛び出すと叫びながら走った。

「お願い!!誰か救急車、救急車を呼んで!!創一様が!!そ、いち……ック……」

 走っても、走っても誰も見えない。大きな屋敷はまるでもぬけの殻の如く、シンとしている。

 なんで誰も応えてくれないの!!
 どこに……行っちゃったんだよ……

「早く誰か助けてよ!!」

 僕は監視カメラに向かって、苛立ちをぶつけた。

 創一様の容態が心配なので、とにかく部屋に一旦戻ることにした。途中、勝太やロイヤル、ダリア、直の部屋も覗いたけど、誰もいない。

 開けっ放しにしてある扉から入ると、躰を起こした後ろ姿が見えた。

「創一様……」
 
 良かった……意識が、戻ったんだ……


「夕貴、お兄ちゃま?」


「えっ。な、お……?」

 そこにいたのは、創一様ではなく、直だった。
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