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僕の崇拝する帝王

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「夕貴、いい子で待っていましたか」

 涼しげな声と視線で問われると、僕の熱はそれに反比例して上昇する。

「はい、創一様」

 妖艶な笑みを向けられ、心臓を鷲掴みされたように胸が苦しくなる。

 カツ、カツ、カツ……と革靴を響かせながら近づく度に、鼓動が壊れたように速くなる。

「会いたかったですよ、夕貴……」

 ベッドの縁に座っている僕の頬がサラッと撫でられ、小さく震える。

「僕も、会いたかった……」

 創一様が前傾姿勢になり、ゆっくりと端正な顔が寄せられる。僕は潤んだ瞳で見つめながら、唇が重なる瞬間を待ち侘びる。

「口づけが、欲しいのですか」

 あと僅かで重なるという刹那、創一様が静かに尋ねる。

「創一様、欲しい。キスして……」

 創一様の口角が上がり、ゆっくりと唇が重なった。

 かと思ったら、すぐに離された。

「ぁ、やだ……もっと、欲しい」

 思わず声を上げた僕の頬が包まれる。

「どんな風に、口づけされたいのですか」
「全身が痺れて、蕩けるぐらいの……刺激的な口づけを……」
「口づけを……?」
「ハァッ……くだ、さい」

 それなのに創一様の顔が離れていく。

 すっと姿勢を正し、僕を見下ろした。

「では、服を脱いで頂けますか」
「はい」

 僕はシャツのボタンに手を掛け、ひとつずつ外していく。これから起こることを想像すると、期待に手が震えた。

「ハァッ、脱ぎ終わりました」

 一糸纏わぬ姿になると立ち上がり、創一様に見てもらう。

 創一様の視線がだんだんと下に下がっていき、硬さを増してきた男塊を認め、クスッと笑みを溢す。

「まだ触れていないというのに、もう興奮しているのですか?
 夕貴は淫乱ですね」
「だって……」

『淫乱』という言葉に反応し、僕のそこはますます硬くなり質量を増していく。

 創一様の手が伸び、僕の肌に触れる。

「私に全て、委ねて下さい」
「ッッ……はい」

 創一様は、奉仕するサディスト。我儘な僕の欲望を満たす為、快楽を引き出し、愛を与えてくれる。

 だからこそ、僕は彼の前で躰も心も、その奥底にある肉欲も曝け出し、委ねることが出来る。

 創一様の唇が重なり、清潔な中に男性のセクシーさを感じさせる香水が鼻腔を刺激する。

「ハァ……ン……」

 僕の目尻から涙が溢れ、頬を伝う。

 唇の輪郭を舐められて吐息を吐くと、舌が隙間から差し込まれる。創一様の舌が僕の舌を絡みとり、強く吸われると、下半身がジンジンと疼く。

「ンンッッ」

 舌に歯を穿たれ、痛みと快感で脳髄が痺れる。

 唇が離れると、創一様が赤い縄を取り出した。

「ベッドの真ん中で、鏡に向かって膝立ちになりなさい」

 僕は素直にベッドへ移動して壁一面が鏡になっている前に膝立ちになり、両手を揃えて差し出した。

「夕貴の白い肌には、真紅がよく似合いますね」

 創一様は縄を二重にして鼻の近くに寄せると、そこから香る蜜蝋の匂いを嗅いだ。それから僕の手首に巻きつけ、2周させて手の間から手前に出す。長い縄と合わせて結び目を作った。

 あぁ、創一様の手で束縛されていく……

 僕は彼の鮮やかな手捌きに見惚れながら、鏡に映る自分の姿に陶酔し、これから躰を緊縛される快感に打ち震えた。

 創一様が僕の背後に移動し、縛った縄を引っ張り上げると蜜蝋の匂いが一段と濃くなり、恍惚とした。

 僕の両腕が頭を通って後ろに回る。手の自由を奪われて緊縛されている姿を目の前にし、背後に創一様の気配を感じ、体内の血液がドクドクと激しく脈打つ。

 背中の中心に縄が下ろされ、胸の下をぐるっと一周し、後ろで結ばれる。すると今度は胸の上を縄が一周し、再び背中で結ばれている気配を感じた。

「滑らかで陶器のような肌ですね」
「ッハァ……ぁ……」

 創一様の色香を纏った声と縄がギュッと縛られる感覚が絶頂を呼び起こし、僕の男塊がピクン、ピクンと震え、先端から厭らしい蜜が溢れ出す。

 胸の上と下を周っていた縄は背中で交差するように結び付けられ、それを引っ張り上げるとそれぞれの腕に巻きつけられる。

 ガラガラ……と音がする。

 創一様が、天井に取り付けられた滑車のフックを下ろした。

 手首の間に通された縄に赤いゴム縄の先にあるフックをしっかりと引っ掛けて引き上げ、膝立ち出来る高さに調節した。

 完全に上半身の動きが封じられた僕は、絶対的な支配者を乞うように見上げた。
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