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僕の優しい貴公子

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 ショートパンツを履き終えると、ロイヤルが靴下の履き口に親指を入れて開き、爪先を向けて僕が足を入れるのを待っている。

『まるで執事のようだね。それとも、しもべ?』

 片側の口角を上げて揶揄した僕に、ロイヤルは極上の笑みで返した。

『ユーキの傍にずっとついていられるなら、僕は執事どころかしもべだって、喜んで受け入れるよ』

 彼らにはルールがある。

 僕とふたりきりの時は、誰も邪魔をしないこと。
 5人が平等に、僕との時間を持てるようにすること。

 ルールは創一様が作り、厳しく管理されている。誰も僕を、完全に独占することは出来ない。

 ロイヤルに全ての衣装を着せてもらうと、ベッドから下りた。

 黄花梨に中国の国花である牡丹が彫られた姿見に、自分を映してみる。

 白い肌に、深みのある紺と黒のレースのジャケットが映える。ショートパンツからはおよそ体毛の感じられない細く不健康な足が伸びている。ヒールの高いショートブーツを履いた為だけでなく、僕から発せられる雰囲気は可愛いというよりは妖艶といった感じで、ロイヤルの望んでいた『英国貴族の子女』からは離れてしまう。少年、というよりは女性の男性麗人といった方が相応しいかもしれない。

 それでも僕には、ロイヤルに喜んでもらえる自信はあった。

『どう? ご満足いただけましたか?』

 ロイヤルに向けて両手を広げ、よく見えるように披露する。

 僕はフフッと密やかな笑いを溢し、バレエダンサーのように片足をしなやかに上げ、軽やかにクルクルッと回った。それから仰々しく右手を胸に当てて左手を後ろに回したまま軽くお辞儀をし、ロイヤルに向けて優美に笑みを浮かべる。

『あぁ、美しいよユーキ。まるで銀幕の世界から現れたようだ……』

 ひざまずいたままのロイヤルが、恍惚した表情で僕を見上げる。彼を纏うオーラが、情欲の色へと濃く染められていく。

 もっと見て。もっと、熱い視線で……焦がすように、僕を芯奥から火照らせて。

 僕の誘惑の視線の糸に絡み取られるように、ロイヤルの視線が熱を帯びていく。

 そう、その視線だよ。
 もっと……頂戴?

 ロイヤルの熱い視線から逸らすことなく、大理石にショートブーツをわざとぶつけるようにして足音を響かせ、ゆっくりと焦らすようにして彼に近付いていく。

 跪いているロイヤルの太腿に片足を乗せ、その上に自分の肘をついて指で顎を支えた。
 
 とっておきの艶かしい表情で目線を落とし、首を傾げる。

「Are you horny?(欲情しちゃった?)」
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