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溢れる想い

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 頬を撫でていた秀一の手の甲の動きが止まり、美姫の顎の輪郭をするりと撫でてから長い人差し指と親指が顎を捉えた。重なっていた手が握られる。

 ぁ……

 秀一の瞳の奥に灯された欲情の炎に魅入られ、美姫の下腹部が熱くなった。

 「ンッ……」

 唇が隙間なく合わせられた。

 あぁ……秀一さんの唇だ……

 額にしか最近は感じることの出来なかったそれを唇に感じ、懐かしく愛しい感触に美姫はうっとりと酔いしれる。夜風に晒されて冷え切ったお互いの熱を高めるように、角度を変えて秀一の唇が何度も重ねられ、熱の高まりと共に次第に小鳥が啄むような口づけへと変化していく。

 「……ッハァッ…」

 気持ち、いい……

 濡れた唇とチュッ、チュッと漏れるリップ音の水音が美姫を甘美な世界へと導いていく。縋るように秀一のジャケットを両手で掴み、濡れた瞳で下から覗き込むように見つめると、秀一の目が魅惑的に細められた。美姫の欲情を見透かしたその瞳に蜘蛛の糸で絡み取られたように捕らえられる。濃厚になった甘く淫靡な香りが美姫の理性を覆い尽くし、消散させてしまう。

 秀一の唇が離れ、舌先が伸ばされて美姫の唇を羽で撫でるように薄く輪郭をなぞった。ピクピクッと震える唇は、擽ったさよりも躰の奥の火種に勢いを与えられ、燃えてくる。

 秀一さんを……もっと、感じたい……

 美姫は少し唇を開いて自らの舌を差し出すと、秀一の舌の動きを追う。連弾のように唇を二つの舌が追いかけるように滑っていく。暫くすると秀一の舌が美姫の唇を離れ、彼女の顔の正面に真っ直ぐに突き出された。

「ンッ……」

 チョコレートの甘さを含んだ吐息を洩らしながら躊躇いなく美姫はその舌先を舐めると、秀一の舌も美姫の動きに反応する。口内とは違う、舌先だけの感触に美姫の興奮が高まり、知らず知らずのうちに呼吸が速くなり、乱れてくる。

 淫猥な行為なのに……どうして秀一さんの舌の動きは艶やかで色香があって、それでいて上品なのだろう……

 少し上を見上げると、秀一のライトグレーの瞳が欲情を灯して濃く揺らめきながら美姫を映し出しているのが見え、甘い疼きが中心を打ち付ける。

「…ッハァッ……」

 惹かれ合うようにお互いの舌を絡ませると唇同士が再び引き寄せられた。口づけだけで、もう美姫の秘部は下着の意味を成さない程に蜜が溢れていた。受け止め切れなくなったその端からツツーッと内腿を伝って蜜が滴っていく感覚に、美姫はゾクリと身を捩らせた。

「…ッハァッ、美姫……」

 秀一の舌が美姫の舌を口内へと引き込む。絡め取られた舌が秀一の口内の蜜と混ざり合い、まだ美姫の舌に僅かに残っていたチョコレートの甘みが引き摺り出され、舌の上で広がった……

「ンンンッ!!!」

 引きちぎられそうな勢いで吸い付かれ、ジュルジュル…と蜜を啜る音が美姫の耳の奥で響く。

 あ…ま、た……

 泉のように絶えず湧き出てくる温かい蜜は、躰全体を火照らせ、狂おしい程の欲情を産み出す。

「ッハァッ…」

 ジンジン、する……

 秀一の舌が縦横無尽に美姫の口内を貪り、また舌を絡めとったかと思うと、歯で甘噛みした状態で吸い付かれた。

「ンフッ!!…ンンンッ!!」

 ビリビリしたした衝撃が美姫の躰を縦に走り抜け、膝がガクガクして力が抜ける。 

 ハアッ……だ、め……こん、な……

 躰の中心から雌の匂いを充満させながら、濃厚な蜜がコプ…と溢れてきて、美姫の秘部が雄を求めるようにドクドクと蠢く。

 ……か、らだが…熱い……

 秀一の両手が美姫の腰を支え、床にへなり込む事態は避ける事が出来た。

「ハアッハアッ…ハアッ…」

 息を荒く吐く美姫の頬に秀一は軽く口づけを落とすと、にっこりと微笑んだ。

「長旅で疲れたでしょう?お風呂でも入りますか?」
「え…?あ、はい……」

 秀一は美姫をベッドへと腰掛けさせると、お湯を溜める為にバスルームへと向かった。

 キス、だけじゃ…物足りない……

 昂ぶらされた美姫の躰の熱は引くどころか、時間を置けば置くほどどんどん上がっている。火照った躰を持て余すように美姫は両腕で自らの躰を抱き締めた。
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