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嫉妬と独占欲 ー秀一視点ー
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「さぁ、序幕は終わりですよ……」
ベンチシートごと華奢な躰を跨ぎ、秀一は美姫を上から見下ろした。快楽にうっとりと微睡んでいた美姫の瞳が、秀一の呼び掛けによって瞳孔が次第に大きく開かれ、不安と怖れと期待の色を揺らめかす。
秀一の背筋がゾクゾクと粟立った。
貴女が誰のものなのか、はっきりと思い知らせてあげますよ……
「愛の夢」はいつの間にか終わり、曲はヨハン・パッヘルベルの「カノン」に切り替わっていた。耳に快く、誰をも惹きつけ、飽きることのない普遍性をもった旋律。
愛には普遍性など、あり得るのだろうか。飽きることのない、普遍、永遠の愛……
私は、それを与えてやれるだろうか。美姫は、それを与えてくれるだろうか。
「美姫……」
陶器のように白く滑らかな美姫の頬の輪郭を指でなぞる。その感触にピクリと震え、美姫はゴクリと喉を鳴らした。
「貴女は、羽鳥大和に想いがあるのですか?」
「ぇ……」
美姫は、その質問を意外そうに受け止めた。
「なぜ、羽鳥大和に私達の関係を暴かれ、非難された後に私の所へと来たのですか」
「それは、秀一さんに逢いたかったから…」
少し俯き加減に答える美姫に心の隅で苛立ちを感じつつ、秀一はそれを抑えて淡々と美姫を追い詰める。
「貴女は…確かめたくなったんじゃないですか?本当に羽鳥大和よりも私の方が好きなのだ、と」
「そ、んな……」
秀一の言葉に美姫の瞳は深い悲しみを映し、わなわなと震える唇を噛み締め、言葉を繋げず沈黙する。
やはり……
秀一は自分で言ったにも関わらず、その言葉に少なからず打撃を受けていた。
「貴女にとって羽鳥大和は、大きい存在なのですね…」
小さく肩を落とし、溜息をつく。その仕草に美姫が「ぁ…」と口を抑えた後、みるみるうちに瞳全体が潤み出す。美姫の手が縋るように秀一の腕を掴んだ。
「ま、待って下さい!確かに大和とは友達だし、一時期は付き合ったこともありましたが……私は、幼い頃からずっと秀一さんのことだけを想っていました。
私には、秀一さんだけです。秀一さんしか、いないんです……」
そう、その言葉を言わせたくて…私はわざと自虐的な言葉を投げかけたのですよ。
「貴女は……誰のものですか?」
美姫の心に深く浸透していくように、秀一はゆっくりと低い声で美姫の耳元へ問う。熱い吐息がかかってフルリと身を震わせてから、美姫は秀一に熱の籠もった視線で応える。
「秀一さんの、ものです……」
「そう、貴女は私の……私だけの、ものです……」
ベンチシートごと華奢な躰を跨ぎ、秀一は美姫を上から見下ろした。快楽にうっとりと微睡んでいた美姫の瞳が、秀一の呼び掛けによって瞳孔が次第に大きく開かれ、不安と怖れと期待の色を揺らめかす。
秀一の背筋がゾクゾクと粟立った。
貴女が誰のものなのか、はっきりと思い知らせてあげますよ……
「愛の夢」はいつの間にか終わり、曲はヨハン・パッヘルベルの「カノン」に切り替わっていた。耳に快く、誰をも惹きつけ、飽きることのない普遍性をもった旋律。
愛には普遍性など、あり得るのだろうか。飽きることのない、普遍、永遠の愛……
私は、それを与えてやれるだろうか。美姫は、それを与えてくれるだろうか。
「美姫……」
陶器のように白く滑らかな美姫の頬の輪郭を指でなぞる。その感触にピクリと震え、美姫はゴクリと喉を鳴らした。
「貴女は、羽鳥大和に想いがあるのですか?」
「ぇ……」
美姫は、その質問を意外そうに受け止めた。
「なぜ、羽鳥大和に私達の関係を暴かれ、非難された後に私の所へと来たのですか」
「それは、秀一さんに逢いたかったから…」
少し俯き加減に答える美姫に心の隅で苛立ちを感じつつ、秀一はそれを抑えて淡々と美姫を追い詰める。
「貴女は…確かめたくなったんじゃないですか?本当に羽鳥大和よりも私の方が好きなのだ、と」
「そ、んな……」
秀一の言葉に美姫の瞳は深い悲しみを映し、わなわなと震える唇を噛み締め、言葉を繋げず沈黙する。
やはり……
秀一は自分で言ったにも関わらず、その言葉に少なからず打撃を受けていた。
「貴女にとって羽鳥大和は、大きい存在なのですね…」
小さく肩を落とし、溜息をつく。その仕草に美姫が「ぁ…」と口を抑えた後、みるみるうちに瞳全体が潤み出す。美姫の手が縋るように秀一の腕を掴んだ。
「ま、待って下さい!確かに大和とは友達だし、一時期は付き合ったこともありましたが……私は、幼い頃からずっと秀一さんのことだけを想っていました。
私には、秀一さんだけです。秀一さんしか、いないんです……」
そう、その言葉を言わせたくて…私はわざと自虐的な言葉を投げかけたのですよ。
「貴女は……誰のものですか?」
美姫の心に深く浸透していくように、秀一はゆっくりと低い声で美姫の耳元へ問う。熱い吐息がかかってフルリと身を震わせてから、美姫は秀一に熱の籠もった視線で応える。
「秀一さんの、ものです……」
「そう、貴女は私の……私だけの、ものです……」
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