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罪悪感
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1限目の講義が終わる頃には大学の雰囲気のお陰で美姫は気持ちをなんとか切り替えることができ、気分も少し楽になった。
今日、朝から講義が入っててよかった……
次の講義の3限目までには時間があるので、レポートの資料探しのために図書室へ行くことにした。
友人の中には全てネットで検索して、コピーペーストしてレポートを作成する子もいるが、美姫は図書室で資料を選んでその中から興味のあるものを見つけ出して自分なりの意見を纏める作業が好きだった。それに今は...何か集中してやっていないと、重く暗い考えに押し潰され、不安に呑み込まれそうで怖かったのだ。
「美姫ちゃんっ!」
後ろから聞き覚えのある声がすると同時に手をギュッと掴まれた。
えっ……
「礼音。どうしたの?」
振り向くと、そこには礼音が爽やかな笑顔を見せて立っていた。日本人には明る過ぎる色素の薄いプラチナアッシュのヘアカラーも、少し強めにかけられたニュアンスパーマも彼の華やかな顔立ちと雰囲気に合っていた。レザーのトートバッグを肩に掛け、ターコイズのステンカラーコートを羽織り、薄いグレーのパーカーに白い無地のカットソーを重ね着して、黒のスキニーパンツにローテクスニーカー。
礼音はその顔立ちとファッションセンス、そして明るく誰とでも気軽に友達になれる性格から、学部を問わず多くの女性にモテていた。目が合うと、どうしても彼の髪色に合わせたヘーゼルグリーンのカラコンに目が引き寄せられる。
「誕生日、おめでとう!って言いたくてさ…」
その途端、誕生日当日に礼音から電話をもらって、それをきっかけに秀一さんのお仕置きが始まったことを思い出して、急激に恥ずかしさに襲われた。
「あ、ありがとう……」
そう答えた美姫の顔は、真っ赤だった。
「…ねぇ、ちょっとそこのベンチで話そうよ」
レポートの期日まではまだ余裕があるし、図書室にどうしても行かなければいけないわけではない。そう考えた美姫は、軽く頷いた。礼音が美姫の背中に軽く手を添え、美姫は促されるようにベンチに座った。
気温がいつもより高いとはいえ、やはり11月。美姫は真っ白なファーコートを前で重ねるようにして少し上で合わせ、首を埋めた。ミモレ丈のグレーのスカートにふわりと風が吹き込んできた。
それにしても……近い、よね……
礼音はお互いの腕が触れ合うほどの距離に座っている。
寒いからなのか……それとも、パーソナルスペースが狭い人なのか……近すぎるって言うのも…失礼、なのかな……?
同じサークルに2年一緒にいて、礼音がフレンドリーで誰とでも仲がいいということ、明るくて優しいことも分かってるから、角が立つようなことは出来るなら言いたくない。
それに、私が過剰反応してるって思われるのも嫌だし……
「あ、ちょっと待ってて……」
突然礼音が立ち上がり、駆け出した。
美姫は冷えてしまった手をコートのポケットに入れ、礼音が戻ってくるのを待った。
手袋、持って来れば良かった……
外を歩く学生達もまだ手袋してる人は少なく、みんなポケットに手を入れたり、恋人の腕に絡ませたりして暖をとっていた。
いいなぁ、キャンパスで恋人同士で手を繋ぐなんて……
美姫は思わず、自分と秀一が手を繋いで歩いている絵を想像した。
学生同士っていうよりは……学生と助教授、って感じかな……
自分で考えながら、照れてしまう。
「はい、どうぞ」
目の前に缶のお汁粉が渡された。
今日、朝から講義が入っててよかった……
次の講義の3限目までには時間があるので、レポートの資料探しのために図書室へ行くことにした。
友人の中には全てネットで検索して、コピーペーストしてレポートを作成する子もいるが、美姫は図書室で資料を選んでその中から興味のあるものを見つけ出して自分なりの意見を纏める作業が好きだった。それに今は...何か集中してやっていないと、重く暗い考えに押し潰され、不安に呑み込まれそうで怖かったのだ。
「美姫ちゃんっ!」
後ろから聞き覚えのある声がすると同時に手をギュッと掴まれた。
えっ……
「礼音。どうしたの?」
振り向くと、そこには礼音が爽やかな笑顔を見せて立っていた。日本人には明る過ぎる色素の薄いプラチナアッシュのヘアカラーも、少し強めにかけられたニュアンスパーマも彼の華やかな顔立ちと雰囲気に合っていた。レザーのトートバッグを肩に掛け、ターコイズのステンカラーコートを羽織り、薄いグレーのパーカーに白い無地のカットソーを重ね着して、黒のスキニーパンツにローテクスニーカー。
礼音はその顔立ちとファッションセンス、そして明るく誰とでも気軽に友達になれる性格から、学部を問わず多くの女性にモテていた。目が合うと、どうしても彼の髪色に合わせたヘーゼルグリーンのカラコンに目が引き寄せられる。
「誕生日、おめでとう!って言いたくてさ…」
その途端、誕生日当日に礼音から電話をもらって、それをきっかけに秀一さんのお仕置きが始まったことを思い出して、急激に恥ずかしさに襲われた。
「あ、ありがとう……」
そう答えた美姫の顔は、真っ赤だった。
「…ねぇ、ちょっとそこのベンチで話そうよ」
レポートの期日まではまだ余裕があるし、図書室にどうしても行かなければいけないわけではない。そう考えた美姫は、軽く頷いた。礼音が美姫の背中に軽く手を添え、美姫は促されるようにベンチに座った。
気温がいつもより高いとはいえ、やはり11月。美姫は真っ白なファーコートを前で重ねるようにして少し上で合わせ、首を埋めた。ミモレ丈のグレーのスカートにふわりと風が吹き込んできた。
それにしても……近い、よね……
礼音はお互いの腕が触れ合うほどの距離に座っている。
寒いからなのか……それとも、パーソナルスペースが狭い人なのか……近すぎるって言うのも…失礼、なのかな……?
同じサークルに2年一緒にいて、礼音がフレンドリーで誰とでも仲がいいということ、明るくて優しいことも分かってるから、角が立つようなことは出来るなら言いたくない。
それに、私が過剰反応してるって思われるのも嫌だし……
「あ、ちょっと待ってて……」
突然礼音が立ち上がり、駆け出した。
美姫は冷えてしまった手をコートのポケットに入れ、礼音が戻ってくるのを待った。
手袋、持って来れば良かった……
外を歩く学生達もまだ手袋してる人は少なく、みんなポケットに手を入れたり、恋人の腕に絡ませたりして暖をとっていた。
いいなぁ、キャンパスで恋人同士で手を繋ぐなんて……
美姫は思わず、自分と秀一が手を繋いで歩いている絵を想像した。
学生同士っていうよりは……学生と助教授、って感じかな……
自分で考えながら、照れてしまう。
「はい、どうぞ」
目の前に缶のお汁粉が渡された。
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