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告白
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秀一には分かっていた。先ほど見せた美姫の表情はあまりにも辛く、悲しく曇っており、感動した時に見せるようなものではないことを。
秀一の心に決意の火が灯り、美姫の頬を掌で包み込んだ。
もう、この想いを隠すことなど、できない……
秀一の低く穏やかであるが、真剣味を帯びた声が響く。
「美姫。貴女はなぜ、私がこの曲を選んだのか......分かりますか?」
突然の質問の意図が分からず、美姫は秀一を見つめたまま小さく頭を振った。
「……いえ、分かりません」
「……私の想いを、知って頂きたかったからですよ」
美姫の頬に手を添えたまま、秀一が顔を近づけた。
「許されない関係と知りながら、貴女を愛してしまった私の気持ちを」
「……ッ!!!」
それを聞き、美姫の瞳孔が大きく見開かれていく。あまりにも突然の告白に、美姫の頭の中が真っ白になる。秀一が更に顔を近づけ、鼻と鼻を合わせる距離の近さで囁いた。
「美姫、貴女を心から愛しています」
それはドロリと甘く蕩ける毒を含んだ蜜のように、美姫の全身を痺れさせた。
「しゅう、いち……さん……」
ほん、とに……? 秀一さん……が、わたし、を?
美姫の瞳から涙が留め度もなく溢れ、頬を伝っていく。秀一の熱い舌が、美姫の涙を掬い取る。
「まったく……泣き虫なのは昔から変わりませんね」
目尻に優しく口づけが落とされる。美姫は睫毛を震わせ、秀一を見上げた。秀一のライトグレーの瞳に泣き顔の美姫が映ると、惹かれ合うように唇が重なる。
秀一さん……愛しています。
角度を変えてチュッ、チュッというリップ音とともに啄みながら落とされる秀一の口づけに息が上がり、美姫の全身が沸騰しそうなほど熱くなる。
あ……すご、い……
秀一の舌先が唇の輪郭をなぞり、擽ったさに僅かに口を開けると、隙間を縫うように熱をもった舌が捩じ込まれる。
「んぅっ!!!」
歯列をなぞり、美姫の口内を弄ぶかのように蠢く舌。秀一の舌先が上顎を羽で撫でるように愛撫する。
「んぅっ、ふぅっ…んんんぅぅぅっ!!!」
なに、これ。キス、だけで……身体の中心が疼いて……ドクドクする。
秀一の舌が美姫の舌を絡め取る。全ての愛液を吸い尽くすかのように激しく舌をチュゥッと吸われ、身体中に電気が走ったようにビリビリと痺れた。
「んっんん……んぅふぅ……」
涙で滲む愛しい人の姿を見上げると、ゾクリとするほど色香を纏った秀一が欲の籠もった瞳で美姫を見つめ返した。唇が離れると、甘い囁きが低く溢れる。
「ようやく、貴女に触れることができます……」
ようやく、って……秀一さんも私のことを、ずっと好きでいてくれたってこと?
期待で胸が高鳴る一方で、まだ自分の想いをきちんと秀一に伝えていないことに美姫は気付いた。
私の想いも秀一さんにちゃんと知って欲しい……
「秀一、さん……私も……ずっと、前から…秀一さんのことが……好き、でした」
声よりも想いが先に立ち、熱い塊が喉を塞ぐ中、必死に言葉を紡いで秀一に告げる。
すると、秀一がクスリと妖艶な笑みを溢した。
「ええ、知っていましたよ」
その言葉に驚き、思わず赤面する。
「え……知って、いたん……ですか?」
秀一の顔が美しさの伴う意地悪な表情へと変化する。
「私が、貴女の想いに気づかないとでも?昔から貴女は分かりやすいですからね……貴女の私に対する態度や言葉や仕草を見ていれば、貴女が私に対してどんな感情を抱いているかなど一目瞭然ですよ」
美姫は恥ずかしさに襲われ、逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。
まさか、秀一さんに私の気持ちが知られていたなんて……しかも秀一さんは私が秀一さんを好きなことを知りながらも、ずっと何も言わなかったんだ……
「秀一さん、なぜ……」
美姫の発した『なぜ』には、様々な意味が含まれていた。今までの秀一の態度は美姫にしてみれば、愛する人に対しての態度とは真逆のように感じていたからだ。驚きとショックを胸に呟いた美姫に、秀一が切なく睫毛を揺らした。
「貴女の父と異母兄弟とはいえ、私たちは血の繋がりのある叔父と姪の間柄。美姫の私への恋心に気づきつつも、禁忌の関係に貴女を引き摺り込むことを私はずっと避けてきました。貴女への想いは断ち切らなければいけないと、自分に言い聞かせたのです。
けれど、貴女をどれだけ遠ざけようと、他の女性と付き合おうと、二年間ウィーンに留学しようと、この想いを消すことは出来ませんでした……いいえ、消そうとすればする程に強くなる一方だったのです。叔父と姪の婚姻は認められず、倫理的には家族や世間に咎められることになるでしょう。ですが、成人となり、互いの同意の上であれば、恋人となって躰の結びつきを持っても法的に問われることはありません。
そこで私は、決心をしました。美姫が成人になるのを待ち、ずっと心に秘めていた恋心を打ち明けた上で貴女に判断を委ねよう、と」
「わたし、に……ですか?」
眉を顰める美姫を、ライトグレーの瞳が真っ直ぐに射抜く。
「ええ……このまま互いへの恋心を封印し、叔父と姪の関係でいるのか。それとも、叔父と姪の関係を捨てて私と茨の道を歩むのか」
美姫には迷いなど、なかった。何度も諦めようとしたこの恋心が今、成就しようとしているのだ。
美姫は、秀一のライトグレーの瞳を真正面からしっかりと見つめた。
「私は……秀一さんの傍にいたいです」
美姫の華奢な躰が秀一の胸に包み込まれた。それは、先ほど路上で抱き締められた時の柔らかさではなく、溢れ出す感情から出る力強いものだった。
「本当に、いいのですか?」
「はい」
美姫は大きく頷いた。
「もう…後戻りはできませんよ?」
「分かって、います」
たとえこれから先、辛く苦しい未来が二人を待ち受けていたとしても、
「私には……秀一さん以外の人なんて考えられないんです」
「美姫……もう、何があろうと……貴女を離しませんよ?」
秀一が熱の籠った瞳で美姫を覗き込む。その瞳の奥に雄の野生の火の揺らめきを感じ、美姫の中の雌の本能が眼を開く。
「秀一さん、離さないで下さい……」
秀一の薄く形の良い唇が美姫の唇と重なり、これから始まる甘くて淫らな秘事を思い、美姫の心は震えた。
秀一の心に決意の火が灯り、美姫の頬を掌で包み込んだ。
もう、この想いを隠すことなど、できない……
秀一の低く穏やかであるが、真剣味を帯びた声が響く。
「美姫。貴女はなぜ、私がこの曲を選んだのか......分かりますか?」
突然の質問の意図が分からず、美姫は秀一を見つめたまま小さく頭を振った。
「……いえ、分かりません」
「……私の想いを、知って頂きたかったからですよ」
美姫の頬に手を添えたまま、秀一が顔を近づけた。
「許されない関係と知りながら、貴女を愛してしまった私の気持ちを」
「……ッ!!!」
それを聞き、美姫の瞳孔が大きく見開かれていく。あまりにも突然の告白に、美姫の頭の中が真っ白になる。秀一が更に顔を近づけ、鼻と鼻を合わせる距離の近さで囁いた。
「美姫、貴女を心から愛しています」
それはドロリと甘く蕩ける毒を含んだ蜜のように、美姫の全身を痺れさせた。
「しゅう、いち……さん……」
ほん、とに……? 秀一さん……が、わたし、を?
美姫の瞳から涙が留め度もなく溢れ、頬を伝っていく。秀一の熱い舌が、美姫の涙を掬い取る。
「まったく……泣き虫なのは昔から変わりませんね」
目尻に優しく口づけが落とされる。美姫は睫毛を震わせ、秀一を見上げた。秀一のライトグレーの瞳に泣き顔の美姫が映ると、惹かれ合うように唇が重なる。
秀一さん……愛しています。
角度を変えてチュッ、チュッというリップ音とともに啄みながら落とされる秀一の口づけに息が上がり、美姫の全身が沸騰しそうなほど熱くなる。
あ……すご、い……
秀一の舌先が唇の輪郭をなぞり、擽ったさに僅かに口を開けると、隙間を縫うように熱をもった舌が捩じ込まれる。
「んぅっ!!!」
歯列をなぞり、美姫の口内を弄ぶかのように蠢く舌。秀一の舌先が上顎を羽で撫でるように愛撫する。
「んぅっ、ふぅっ…んんんぅぅぅっ!!!」
なに、これ。キス、だけで……身体の中心が疼いて……ドクドクする。
秀一の舌が美姫の舌を絡め取る。全ての愛液を吸い尽くすかのように激しく舌をチュゥッと吸われ、身体中に電気が走ったようにビリビリと痺れた。
「んっんん……んぅふぅ……」
涙で滲む愛しい人の姿を見上げると、ゾクリとするほど色香を纏った秀一が欲の籠もった瞳で美姫を見つめ返した。唇が離れると、甘い囁きが低く溢れる。
「ようやく、貴女に触れることができます……」
ようやく、って……秀一さんも私のことを、ずっと好きでいてくれたってこと?
期待で胸が高鳴る一方で、まだ自分の想いをきちんと秀一に伝えていないことに美姫は気付いた。
私の想いも秀一さんにちゃんと知って欲しい……
「秀一、さん……私も……ずっと、前から…秀一さんのことが……好き、でした」
声よりも想いが先に立ち、熱い塊が喉を塞ぐ中、必死に言葉を紡いで秀一に告げる。
すると、秀一がクスリと妖艶な笑みを溢した。
「ええ、知っていましたよ」
その言葉に驚き、思わず赤面する。
「え……知って、いたん……ですか?」
秀一の顔が美しさの伴う意地悪な表情へと変化する。
「私が、貴女の想いに気づかないとでも?昔から貴女は分かりやすいですからね……貴女の私に対する態度や言葉や仕草を見ていれば、貴女が私に対してどんな感情を抱いているかなど一目瞭然ですよ」
美姫は恥ずかしさに襲われ、逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。
まさか、秀一さんに私の気持ちが知られていたなんて……しかも秀一さんは私が秀一さんを好きなことを知りながらも、ずっと何も言わなかったんだ……
「秀一さん、なぜ……」
美姫の発した『なぜ』には、様々な意味が含まれていた。今までの秀一の態度は美姫にしてみれば、愛する人に対しての態度とは真逆のように感じていたからだ。驚きとショックを胸に呟いた美姫に、秀一が切なく睫毛を揺らした。
「貴女の父と異母兄弟とはいえ、私たちは血の繋がりのある叔父と姪の間柄。美姫の私への恋心に気づきつつも、禁忌の関係に貴女を引き摺り込むことを私はずっと避けてきました。貴女への想いは断ち切らなければいけないと、自分に言い聞かせたのです。
けれど、貴女をどれだけ遠ざけようと、他の女性と付き合おうと、二年間ウィーンに留学しようと、この想いを消すことは出来ませんでした……いいえ、消そうとすればする程に強くなる一方だったのです。叔父と姪の婚姻は認められず、倫理的には家族や世間に咎められることになるでしょう。ですが、成人となり、互いの同意の上であれば、恋人となって躰の結びつきを持っても法的に問われることはありません。
そこで私は、決心をしました。美姫が成人になるのを待ち、ずっと心に秘めていた恋心を打ち明けた上で貴女に判断を委ねよう、と」
「わたし、に……ですか?」
眉を顰める美姫を、ライトグレーの瞳が真っ直ぐに射抜く。
「ええ……このまま互いへの恋心を封印し、叔父と姪の関係でいるのか。それとも、叔父と姪の関係を捨てて私と茨の道を歩むのか」
美姫には迷いなど、なかった。何度も諦めようとしたこの恋心が今、成就しようとしているのだ。
美姫は、秀一のライトグレーの瞳を真正面からしっかりと見つめた。
「私は……秀一さんの傍にいたいです」
美姫の華奢な躰が秀一の胸に包み込まれた。それは、先ほど路上で抱き締められた時の柔らかさではなく、溢れ出す感情から出る力強いものだった。
「本当に、いいのですか?」
「はい」
美姫は大きく頷いた。
「もう…後戻りはできませんよ?」
「分かって、います」
たとえこれから先、辛く苦しい未来が二人を待ち受けていたとしても、
「私には……秀一さん以外の人なんて考えられないんです」
「美姫……もう、何があろうと……貴女を離しませんよ?」
秀一が熱の籠った瞳で美姫を覗き込む。その瞳の奥に雄の野生の火の揺らめきを感じ、美姫の中の雌の本能が眼を開く。
「秀一さん、離さないで下さい……」
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