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After Story3 ー怖いぐらいに幸せな……溺愛蜜月旅行❤️ー
DAY1ー25
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熱に浮かされる前に秀一に振り向き、彼のすぐ傍に立つと、美姫は別の話題を振った。
「秀一さん、作曲されていたのですか?」
世界的に有名なピアニストである秀一だが、ここ1、2年は作曲活動に力を入れていた。
今では映画音楽やTVドラマ、CMの作曲など、多岐に渡ってオファーが来るほどに、秀一は作曲でもその類稀なる才能を開花させている。
彼の興味が作曲に移ったのは、それ自体への興味と探究心もさることながら、一番は専門学校に通い始めて公演についていくことが厳しくなった美姫への配慮が大きかった。
多くの苦難と批判を乗り越え、ようやく結ばれた秀一と美姫。もう決して離れることはさせないと誓った。
これからの生涯、少しでも長く多くの時間を美姫と過ごすこと。それが、秀一の優先事項だ。
もちろん、決して仕事には手を抜かない。だが、そのスタイルを変えることで愛する人と過ごす時間を多く持つことは出来る。
秀一にも、音楽と共にある時、自分がより一層輝けることを自覚していた。美姫には、いつまでも自分に恋してもらいたい。だからこそ、自分もまたそんな存在でなくてはならない。
秀一は美姫の腕を引き寄せ、華奢な腰を抱くとドレスに軽く口付けた。
「オーストリア皇太子の成婚式の際に、教会で演奏する賛美歌の曲を依頼されてましてね。さすがに私もパイプオルガンを使った作曲を手掛けたことはないので、手こずっているところです。
普通なら、断ってもいいところなのですが……」
美姫は依頼主の名前を聞いて驚きつつ、秀一に同調した。
「そう、ですよね……皇太子からの依頼でしたら、断れませんよね。こんな……」
とても名誉なこと。
そう言おうとした美姫の言葉に被せて、秀一が答えた。
「こんな、絶好の機会を逃すわけにいきませんからね」
「ぇ?」
絶好の機会?
「ここで皇太子に恩を売っておけば、私のオーストリア国籍取得への道が一気に開けます。そして、美姫も。
そうなれば、私たちは晴れて戸籍の上でも夫婦となれるのですから」
日本では法律上認められていない叔姪婚だが、美姫たちの暮らすオーストリアでは法的に認められている。もちろん、日本で二重国籍は認められていないため、オーストリアの国籍を取得するのであれば、日本の国籍を捨てなければならない。
だが、それよりも最大のネックになっているのは、オーストリアが世界一国籍を取得するのが難しい国だということだ。人によっては10年、20年の月日を要するとも言われている。
それでも、美姫は何年、何十年かかろうが国籍を取得し、戸籍上の夫婦となることを望んだ。姪と叔父の禁断愛をずっと背徳とし、罪悪感を背負いながら生きてきた美姫にとって、法的に秀一と夫婦と認めてもらいたいという思いが強かったからだ。
国籍取得の一番の近道と言われるのが、オーストリアにとってどれだけ要人であるか、つまり、どれだけ国に貢献できるかということだ。皇太子の成婚に助力したとなれば、それはかなりの貢献となるだろう。
「フッフフ……この仕事、なんとしてでも完璧に遂行し、皇太子と国籍取得の交渉に持ち込んで見せますよ」
悪どく微笑む秀一からは、真っ黒なオーラが漂っていた。
しゅ、秀一さん……まさか皇太子まで丸め込むつもりじゃないよね。
まさか、ね……
美姫は嫌な予感がしつつも、それを無理やり遠くに押しやった。
ふたりがオーストリア国籍を取得するのは、そんなに遠い未来ではなさそうだ。
「秀一さん、作曲されていたのですか?」
世界的に有名なピアニストである秀一だが、ここ1、2年は作曲活動に力を入れていた。
今では映画音楽やTVドラマ、CMの作曲など、多岐に渡ってオファーが来るほどに、秀一は作曲でもその類稀なる才能を開花させている。
彼の興味が作曲に移ったのは、それ自体への興味と探究心もさることながら、一番は専門学校に通い始めて公演についていくことが厳しくなった美姫への配慮が大きかった。
多くの苦難と批判を乗り越え、ようやく結ばれた秀一と美姫。もう決して離れることはさせないと誓った。
これからの生涯、少しでも長く多くの時間を美姫と過ごすこと。それが、秀一の優先事項だ。
もちろん、決して仕事には手を抜かない。だが、そのスタイルを変えることで愛する人と過ごす時間を多く持つことは出来る。
秀一にも、音楽と共にある時、自分がより一層輝けることを自覚していた。美姫には、いつまでも自分に恋してもらいたい。だからこそ、自分もまたそんな存在でなくてはならない。
秀一は美姫の腕を引き寄せ、華奢な腰を抱くとドレスに軽く口付けた。
「オーストリア皇太子の成婚式の際に、教会で演奏する賛美歌の曲を依頼されてましてね。さすがに私もパイプオルガンを使った作曲を手掛けたことはないので、手こずっているところです。
普通なら、断ってもいいところなのですが……」
美姫は依頼主の名前を聞いて驚きつつ、秀一に同調した。
「そう、ですよね……皇太子からの依頼でしたら、断れませんよね。こんな……」
とても名誉なこと。
そう言おうとした美姫の言葉に被せて、秀一が答えた。
「こんな、絶好の機会を逃すわけにいきませんからね」
「ぇ?」
絶好の機会?
「ここで皇太子に恩を売っておけば、私のオーストリア国籍取得への道が一気に開けます。そして、美姫も。
そうなれば、私たちは晴れて戸籍の上でも夫婦となれるのですから」
日本では法律上認められていない叔姪婚だが、美姫たちの暮らすオーストリアでは法的に認められている。もちろん、日本で二重国籍は認められていないため、オーストリアの国籍を取得するのであれば、日本の国籍を捨てなければならない。
だが、それよりも最大のネックになっているのは、オーストリアが世界一国籍を取得するのが難しい国だということだ。人によっては10年、20年の月日を要するとも言われている。
それでも、美姫は何年、何十年かかろうが国籍を取得し、戸籍上の夫婦となることを望んだ。姪と叔父の禁断愛をずっと背徳とし、罪悪感を背負いながら生きてきた美姫にとって、法的に秀一と夫婦と認めてもらいたいという思いが強かったからだ。
国籍取得の一番の近道と言われるのが、オーストリアにとってどれだけ要人であるか、つまり、どれだけ国に貢献できるかということだ。皇太子の成婚に助力したとなれば、それはかなりの貢献となるだろう。
「フッフフ……この仕事、なんとしてでも完璧に遂行し、皇太子と国籍取得の交渉に持ち込んで見せますよ」
悪どく微笑む秀一からは、真っ黒なオーラが漂っていた。
しゅ、秀一さん……まさか皇太子まで丸め込むつもりじゃないよね。
まさか、ね……
美姫は嫌な予感がしつつも、それを無理やり遠くに押しやった。
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