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After Story1 ー甘く蕩かされるハロウィンー

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「しゅ……秀一さん……これ、恥ずかしいです……」



 猫耳をつけ、メイド服を着た美姫は耳まで真っ赤にして短いスカートを押さえた。下にペチコートを履いているものの、丈が短すぎて下着が見えそうでおぼつかない。ご丁寧に、お尻には尻尾までついていた。

「ハロウィンを楽しみたいと仰ったのは、美姫でしょう?
 ふふっ、よくお似合いですよ……」

 なんの衣装をつけていなくても、美姫には秀一の悪魔の角と尻尾がはっきりと見えた。

「確かにハロウィンは楽しみたいって言いましたけど、衣装を着るのは子供達ですよね?
 それに……私だけ、なんて……恥ずかしすぎます」

 秀一の眼鏡のフレームがキラリと光った。

「申し訳ありませんが、私の方では何も用意していないのですよ。
 ですが、そうですね……少し、お待ち頂けますか」

 戻ってきた秀一は、漆黒の燕尾服にシルクハット、そして赤い蝶ネクタイにマントを掛けていた。まるで、夜を伴い幻想的な舞踏会に現れた妖艶な伯爵、といった雰囲気だった。

 わ、秀一さん……素敵……

 美姫が見惚れていると、秀一が美姫の背中から腕を回し、抱き寄せた。雌を強く惹きつけてやまない彼の雄の色香に包まれ、一瞬のうちに堕とされる。

「ンンッ……」

 牙を穿つ前戯のように首筋を舌でペロリと舐められ、ゾクゾクと背筋に震えが走る。美姫の耳朶が甘噛みされ、低く甘い囁きが鼓膜に響く。

「Trick or Treat?」
「え?」
「クスッ……甘いお菓子と甘いお仕置き、どちらを御望みですか?」

 耳腔に尖らせた舌が入り込み、ピチャピチャと淫らな水音が鼓膜から脳髄にまで甘く響き、腰から力が抜けそうになる。秀一の愛撫にすぐチュク……と淫蜜を溢れ出す、素直な自分の反応を恥ずかしく思いつつも、彼の巧みな舌遣いに翻弄されてしまう。

 上目遣いに秀一を斜め上に見やると、彼は余裕の笑みで返してきた。流されそうになりかけていた美姫は、必死で理性をかき集めて秀一に答えた。

「ッハァ……あ、まい……お菓子、で……ック」

 秀一の口から、小さい笑いが零れる。

「それは、貴女の本心ですか?」

 美姫は涙目になりながら、無言でコクンと頷いた。

「いいでしょう。
 では、生クリームの準備をお願いします」

 氷水を張ったボウルの上に一回り小さいボウルを載せ、そこから生クリームを流し込み、砂糖を加える。

 規則正しくゆっくりと泡立て器を使い、生クリームを泡立てていく。

「お手伝い、しましょうか」

 背中を抱かれ、肩越しにのぞかれ、美姫は大きく背中をしならせた。

「だ、大丈夫です。
 秀一さんは、ゆっくりしていて下さい」

 メイド服で生クリームを泡立てていることに落ち着かず、美姫は慌てて答えた。

 けれど、秀一の気配は遠のくことはなかった。後ろから手が回り、ボウルを抑える。

「動いてしまうと、やりにくいでしょう?」

 秀一の腕が回されたことで後ろから抱きしめられている形になり、躰が密着する。やりやすくなるどころか、胸がドキドキして更に落ち着かない。彼の濃厚なフェロモンと生クリームの甘い匂いが混ざり合い、美姫を官能的に酔わせる。

「ぁ!」

 手元が狂い、泡立て器のクリームが飛び散った。美姫の顎に美しい手が伸ばされ、後ろを向かされる。

「ん……」
 
 秀一の唇が頬についた生クリームを舐めとる。

「甘い、ですね……」

 見下ろす美しい透明感のあるライトグレーに欲情の焔を見た、美姫の躰が一気に火照らされる。髪にも飛び散ってしまったのか、掌で優しく頭を包み込まれ、口づけが落とされた。



「私には……貴女が、甘いお菓子です」


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