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悪女
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ーー美姫と秀一の記者会見会場。
美姫が、秀一と恋仲になった経緯を説明する。
「幼い頃から傍にいて見守ってくれていた秀一さんを、最初は慕っているだけでした。けれどそれは次第に恋心へと変わり、気がつけば彼を一人の男性として愛するようになっていました。
高等部に入り、大和が告白してくれた時……この恋を諦める為に彼と付き合い始めました。けれど、何度諦めようとしても、私の中から秀一さんの存在が消えませんでした。
そして、20歳の誕生日を迎えた私に秀一さんが告白してくれた時、気持ちが大きく揺さぶられてしまったんです。わたし、しは……大和という恋人がいながら、秀一さんと隠れて付き合うようになりました」
美姫が肩を震わせて俯き、それから顔を上げた。
「4年前のスキャンダルは……事実です。それが発覚した時、私は秀一さんと共に逃亡するつもりでした。彼と共に、ウィーンで暮らそうと思っていました。けれど……父の危篤を知り、財閥の危機を聞かされ……秀一さんと別れる決意をしました。
私は、秀一さんとは何の関係もない、あのスキャンダルは作られたものだと大和に嘘をつき、彼と結婚しました。
それ、なのに……再会したら気持ちが再燃してしまい、恋心を止めることが出来ませんでした。どうしても、この人と一緒になりたいと思ってしまったのです。
私は、最低の人間です。私を愛してくれた夫だけでなく、父も、母も、信頼してくれていた財閥や『KURUSU』の人たちも、消費者の皆様や世間も裏切り、欺いたんです……」
記者からは質問だけでなく、怒号も飛び交い、会場が大混乱に陥った。司会者が何度も記者たちに注意を促し、最後に「このまま静まらないようであれば、会見は終了となります」と脅したことにより、ようやくいったん収束した。
秀一が美姫を見つめてから、正面に顔を向けた。
「悪いのは、私です。私が美姫への恋心を封印していれば、彼女は実らぬ想いに別れを告げ、幸せな道を歩めたはずでした。
彼女が私を諦める為に恋人をつくったと知りながらも、成人を迎えた美姫に恋心を打ち明けてしまった。そして、彼女が結婚してからは諦めようとしたものの、再会した途端に彼女への想いが溢れ出し、躊躇う彼女に強引にアプローチしました。
私が、全ての出来事を招いた諸悪の根源なのです。彼女を、禁忌の世界に引き摺り込んでしまった……
美姫の人生を、夫となった大和くんの人生を狂わせ、兄夫婦から大切な娘を奪い、私を支え、信じて下さったファンの皆様、そして世間を裏切ったのです。
大変、申し訳ございませんでした」
秀一が、深く頭を下げた。
プライドが高く、誰に対しても、特に記者達に対して威圧的な態度だった秀一が初めて謝罪し、頭まで下げる姿はかなりの衝撃だった。
皆がその光景を、我が目を疑うように見つめていた。
美姫は、潤んだ瞳で秀一を見つめた。
「そうじゃ、ない。決めたのは、私です。
ずっと秀一さんを好きだった。愛してた……忘れられなくて、諦められなかった。
大勢の人を裏切り、迷惑をかけてしまうと知りながらも、一緒にいたいと思ってしまったんです。
夫には慰謝料として、父から譲り受けた遺産を全てお渡しすることで離婚に合意してもらいました。ですが、彼を裏切り、傷つけた罪が償われるとは思っていません。
財閥や『KURUSU』のスタッフ等、様々な人達にご迷惑を掛けてしまいました。本当に、申し訳ありませんでした……
これから私は全てを捨て、秀一さんと共にウィーンに発ちます。自分勝手で我儘で……ごめ、なさ……
でも……秀一さんだけが唯一人、私の求める人なんです。彼が、いれば……他には、何も……いらないック」
秀一と共に深々と頭を下げ、肩を大きく揺らした。
ーー大和と凛子の記者会見会場。
大和は、右手で顔を覆った。
「妻は……離婚の慰謝料として、父から受け取った遺産を全て譲ると言いました。けれど、そんなことで私の受けた傷は癒えません。
私は幼い頃から彼女に気持ちを寄せ、ずっと想ってきました。彼女と恋人になり、結婚し、とても幸せだったんです。
それが……美姫には、実は別の男……しかも、叔父が恋人だったなんて……ッグ。す、みませ……ウッ」
凛子は俯き、瞳を伏せた。
美姫が、秀一と恋仲になった経緯を説明する。
「幼い頃から傍にいて見守ってくれていた秀一さんを、最初は慕っているだけでした。けれどそれは次第に恋心へと変わり、気がつけば彼を一人の男性として愛するようになっていました。
高等部に入り、大和が告白してくれた時……この恋を諦める為に彼と付き合い始めました。けれど、何度諦めようとしても、私の中から秀一さんの存在が消えませんでした。
そして、20歳の誕生日を迎えた私に秀一さんが告白してくれた時、気持ちが大きく揺さぶられてしまったんです。わたし、しは……大和という恋人がいながら、秀一さんと隠れて付き合うようになりました」
美姫が肩を震わせて俯き、それから顔を上げた。
「4年前のスキャンダルは……事実です。それが発覚した時、私は秀一さんと共に逃亡するつもりでした。彼と共に、ウィーンで暮らそうと思っていました。けれど……父の危篤を知り、財閥の危機を聞かされ……秀一さんと別れる決意をしました。
私は、秀一さんとは何の関係もない、あのスキャンダルは作られたものだと大和に嘘をつき、彼と結婚しました。
それ、なのに……再会したら気持ちが再燃してしまい、恋心を止めることが出来ませんでした。どうしても、この人と一緒になりたいと思ってしまったのです。
私は、最低の人間です。私を愛してくれた夫だけでなく、父も、母も、信頼してくれていた財閥や『KURUSU』の人たちも、消費者の皆様や世間も裏切り、欺いたんです……」
記者からは質問だけでなく、怒号も飛び交い、会場が大混乱に陥った。司会者が何度も記者たちに注意を促し、最後に「このまま静まらないようであれば、会見は終了となります」と脅したことにより、ようやくいったん収束した。
秀一が美姫を見つめてから、正面に顔を向けた。
「悪いのは、私です。私が美姫への恋心を封印していれば、彼女は実らぬ想いに別れを告げ、幸せな道を歩めたはずでした。
彼女が私を諦める為に恋人をつくったと知りながらも、成人を迎えた美姫に恋心を打ち明けてしまった。そして、彼女が結婚してからは諦めようとしたものの、再会した途端に彼女への想いが溢れ出し、躊躇う彼女に強引にアプローチしました。
私が、全ての出来事を招いた諸悪の根源なのです。彼女を、禁忌の世界に引き摺り込んでしまった……
美姫の人生を、夫となった大和くんの人生を狂わせ、兄夫婦から大切な娘を奪い、私を支え、信じて下さったファンの皆様、そして世間を裏切ったのです。
大変、申し訳ございませんでした」
秀一が、深く頭を下げた。
プライドが高く、誰に対しても、特に記者達に対して威圧的な態度だった秀一が初めて謝罪し、頭まで下げる姿はかなりの衝撃だった。
皆がその光景を、我が目を疑うように見つめていた。
美姫は、潤んだ瞳で秀一を見つめた。
「そうじゃ、ない。決めたのは、私です。
ずっと秀一さんを好きだった。愛してた……忘れられなくて、諦められなかった。
大勢の人を裏切り、迷惑をかけてしまうと知りながらも、一緒にいたいと思ってしまったんです。
夫には慰謝料として、父から譲り受けた遺産を全てお渡しすることで離婚に合意してもらいました。ですが、彼を裏切り、傷つけた罪が償われるとは思っていません。
財閥や『KURUSU』のスタッフ等、様々な人達にご迷惑を掛けてしまいました。本当に、申し訳ありませんでした……
これから私は全てを捨て、秀一さんと共にウィーンに発ちます。自分勝手で我儘で……ごめ、なさ……
でも……秀一さんだけが唯一人、私の求める人なんです。彼が、いれば……他には、何も……いらないック」
秀一と共に深々と頭を下げ、肩を大きく揺らした。
ーー大和と凛子の記者会見会場。
大和は、右手で顔を覆った。
「妻は……離婚の慰謝料として、父から受け取った遺産を全て譲ると言いました。けれど、そんなことで私の受けた傷は癒えません。
私は幼い頃から彼女に気持ちを寄せ、ずっと想ってきました。彼女と恋人になり、結婚し、とても幸せだったんです。
それが……美姫には、実は別の男……しかも、叔父が恋人だったなんて……ッグ。す、みませ……ウッ」
凛子は俯き、瞳を伏せた。
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