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罪の代償
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大蔵も大樹も、京香の暴走を唖然として見つめていた。気性の激しい性格ではあったが、京香がここまで荒れるなど、初めてだ。
大和はグッと眉を寄せ、苦しげな表情で京香を見つめた。
「違う! 違うんだ!! 俺にも、非があるんだ。
俺、は……ック美姫を裏切り、浮気したんだ……」
京香の手が止まり、大和をハッと見上げる。
大和は、力なく言った。
「だから……俺も納得してるし、来栖家のお母さんも承諾してくれたんだ。
もう、決まったことなんだ……」
だが、京香は怒りをおさめるどころか、更に激昂した。
「私は納得してないわよ!! 納得出来るわけないじゃない!!
浮気は男の甲斐性でしょう? 私だって、この人に何度浮気されたことか分からないわ。今だって!!
来栖財閥社長の妻ともあろうものが、たかが一度や二度の夫の浮気で心が揺さぶられてどうするの!!」
大蔵は思わぬところでとばっちりを受け、黙り込みを決めた。
美姫が震える唇をきつく結び、大和に目を向ける。
「大和、ありがとう。でもお義母様の言う通り、納得してもらえることじゃない。
私は、受け止めなければいけないの」
「お義母様なんて、呼ぶんじゃないわよ!!」
京香は美姫に対してありとあらゆる罵詈雑言を吐き、さんざん|詰(なじ)り、非難し、責め立てた。美姫は正座し、京香の言葉を受け止めた。
ようやく気持ちが落ち着くと、京香は凛子を呼び出した。
それから暫くして血相を変えた凛子が羽鳥家に現れ、深々と頭を下げた。
「とんでもないご無礼を致しまして、大変申し訳ありませんでした」
美姫と大和は胸を痛め、項垂れた。自分たちの軽率な考えが、逆に凛子の立場を更に悪いものにしてしまったのだ。
京香は頭を下げた凛子に、フンッと鼻を鳴らした。
「凛子さん、あなたの娘は土下座して謝ったのよ。母親なら、同じことをして謝るべきでなくて?」
凛子は「失礼しました」と言って、正座をした。それから両手を床に揃え、京香を真摯な眼差しで見つめた。
「大変、申し訳ございませんでした」
丁寧な所作で頭を下げて土下座する凛子の姿は、見惚れてしまう程美しかった。京香でさえ、一瞬言葉を失くした後、「ふん、まぁいいわ」と捨て台詞を吐いた。
京香は大和との離婚だけでなく、羽鳥家に対する迷惑料としての慰謝料も請求した。
凛子が口を開く前に、美姫が京香に答えた。
「大和さんは、これからも来栖家の人間として来栖財閥を支えて下さいます。
私は大和さんに、譲り受けた父の遺産を全てお渡しします。羽鳥家へは、私が父から生前受け取っていた来栖の株や土地を慰謝料としてお支払い致します」
話し合いをする前から、既に美姫は父の遺産を放棄して大和に全て渡すつもりでいた。大蔵は大樹に指示してすぐさま念書を用意させ、その旨を書かせ、美姫に署名させた。
慰謝料の件が無事におさまったところで、来栖秀一のツアー終了後に離婚会見をし、その際に美姫と秀一の関係も公表することを伝えた。そして、それまでは離婚を公にしないようと頼んだ。
「そんなことしたら、大和は世間の恥晒しになるわ!!」
京香は美姫と秀一の仲を公表することに反対したが、大蔵の考えは違った。
どうせもう、離婚は避けられない。思わぬところから、金も転がり込んできた。
また、離婚記者会見により美姫の非が明らかになることによって、大和への同情が集まる可能性も高いと大蔵は踏んだ。それにより大和への好感度が上がり、同時に父親である大蔵にも好印象が齎される、と。それで息子への同情が票へと繋がるのなら、この取引もさほど悪くないと大蔵は考えたのだ。
大蔵の意見に京香も逆らえず、結局美姫の意向は尊重されることになったものの、美姫は大和の気持ちを思うとやるせなくなった。
大和はグッと眉を寄せ、苦しげな表情で京香を見つめた。
「違う! 違うんだ!! 俺にも、非があるんだ。
俺、は……ック美姫を裏切り、浮気したんだ……」
京香の手が止まり、大和をハッと見上げる。
大和は、力なく言った。
「だから……俺も納得してるし、来栖家のお母さんも承諾してくれたんだ。
もう、決まったことなんだ……」
だが、京香は怒りをおさめるどころか、更に激昂した。
「私は納得してないわよ!! 納得出来るわけないじゃない!!
浮気は男の甲斐性でしょう? 私だって、この人に何度浮気されたことか分からないわ。今だって!!
来栖財閥社長の妻ともあろうものが、たかが一度や二度の夫の浮気で心が揺さぶられてどうするの!!」
大蔵は思わぬところでとばっちりを受け、黙り込みを決めた。
美姫が震える唇をきつく結び、大和に目を向ける。
「大和、ありがとう。でもお義母様の言う通り、納得してもらえることじゃない。
私は、受け止めなければいけないの」
「お義母様なんて、呼ぶんじゃないわよ!!」
京香は美姫に対してありとあらゆる罵詈雑言を吐き、さんざん|詰(なじ)り、非難し、責め立てた。美姫は正座し、京香の言葉を受け止めた。
ようやく気持ちが落ち着くと、京香は凛子を呼び出した。
それから暫くして血相を変えた凛子が羽鳥家に現れ、深々と頭を下げた。
「とんでもないご無礼を致しまして、大変申し訳ありませんでした」
美姫と大和は胸を痛め、項垂れた。自分たちの軽率な考えが、逆に凛子の立場を更に悪いものにしてしまったのだ。
京香は頭を下げた凛子に、フンッと鼻を鳴らした。
「凛子さん、あなたの娘は土下座して謝ったのよ。母親なら、同じことをして謝るべきでなくて?」
凛子は「失礼しました」と言って、正座をした。それから両手を床に揃え、京香を真摯な眼差しで見つめた。
「大変、申し訳ございませんでした」
丁寧な所作で頭を下げて土下座する凛子の姿は、見惚れてしまう程美しかった。京香でさえ、一瞬言葉を失くした後、「ふん、まぁいいわ」と捨て台詞を吐いた。
京香は大和との離婚だけでなく、羽鳥家に対する迷惑料としての慰謝料も請求した。
凛子が口を開く前に、美姫が京香に答えた。
「大和さんは、これからも来栖家の人間として来栖財閥を支えて下さいます。
私は大和さんに、譲り受けた父の遺産を全てお渡しします。羽鳥家へは、私が父から生前受け取っていた来栖の株や土地を慰謝料としてお支払い致します」
話し合いをする前から、既に美姫は父の遺産を放棄して大和に全て渡すつもりでいた。大蔵は大樹に指示してすぐさま念書を用意させ、その旨を書かせ、美姫に署名させた。
慰謝料の件が無事におさまったところで、来栖秀一のツアー終了後に離婚会見をし、その際に美姫と秀一の関係も公表することを伝えた。そして、それまでは離婚を公にしないようと頼んだ。
「そんなことしたら、大和は世間の恥晒しになるわ!!」
京香は美姫と秀一の仲を公表することに反対したが、大蔵の考えは違った。
どうせもう、離婚は避けられない。思わぬところから、金も転がり込んできた。
また、離婚記者会見により美姫の非が明らかになることによって、大和への同情が集まる可能性も高いと大蔵は踏んだ。それにより大和への好感度が上がり、同時に父親である大蔵にも好印象が齎される、と。それで息子への同情が票へと繋がるのなら、この取引もさほど悪くないと大蔵は考えたのだ。
大蔵の意見に京香も逆らえず、結局美姫の意向は尊重されることになったものの、美姫は大和の気持ちを思うとやるせなくなった。
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