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茫然自失
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心配した畑中が付き添う中、美姫はエレベーターを挟んだ向かい側の受付へ急いだ。悠の事故の時で、もう手順は分かっていた。
予想通り救命救急センターへ行くよう案内され、迷うことなくそちらへ足を向ける。救急救命センターの廊下は相変わらず薄暗く、美姫の履いたヒールの足音が神経質にリノリウムの床を鳴らした。
「手術室」の案内板を見ることなく、まっすぐ手術室に向かって歩く。
この感覚、嫌だ。どうしても、思い出してしまう。
悠が死んでしまうんではないかと不安で恐ろしかったあの情景とリンクして、苦しくなってくる。
美姫の鼓動は廊下中に響いているのではないかと思うぐらい激しく跳躍し、喉からせり上がって出てきそうな気持ち悪さを覚えた。
手術室の前に辿り着くと、ランプは点いていなかった。
ぇ。
もう、手術が終わったの……!?
そんな筈はないという気持ちで白い扉を見つめていると、中から看護師が出てきた。
美姫が駆け寄る。
「父!! 父は、どこですか!?
来栖、来栖誠一郎は!? 娘、私、娘です!!」
混乱しながら取り乱す美姫に、看護師が手を取り、落ち着かせるように穏やかな声で告げた。
「手は尽くしたのですが……」
その後も看護師は何か説明していたが、美姫の耳には一切入ってこなかった。目の前が真っ暗になり、全身の力が抜けた。
「来栖社長!!」
畑中が慌てて美姫の躰を支え、手術室の目の前にあるベンチに座らせた。
看護師は美姫を気遣いながらも、ずっとそこにいるわけにもいかず、
「来栖さんの遺体は、地下の霊安室に運ばれましたから」
そう声を掛け、足早に去って行った。
お父様が、死んだ。
死ん、だ……
そ、んな……
革靴の音が遠くから響き、だんだんと大きくなる。
「美姫!!!」
大和が大声で呼んでも美姫は呆然としており、その呼びかけに気付きもしなかった。
「美姫。美姫……」
大和に両肩を掴まれ、抱き締められても、まるで人形のように反応がない。
「お父さんがいる。霊安室に、一緒に行こう」
美姫を立ち上がらせ、歩かせる。
まるで夢遊病患者のように、意志のないまま美姫はふらふらと大和に腕を引かれて歩いていた。
予想通り救命救急センターへ行くよう案内され、迷うことなくそちらへ足を向ける。救急救命センターの廊下は相変わらず薄暗く、美姫の履いたヒールの足音が神経質にリノリウムの床を鳴らした。
「手術室」の案内板を見ることなく、まっすぐ手術室に向かって歩く。
この感覚、嫌だ。どうしても、思い出してしまう。
悠が死んでしまうんではないかと不安で恐ろしかったあの情景とリンクして、苦しくなってくる。
美姫の鼓動は廊下中に響いているのではないかと思うぐらい激しく跳躍し、喉からせり上がって出てきそうな気持ち悪さを覚えた。
手術室の前に辿り着くと、ランプは点いていなかった。
ぇ。
もう、手術が終わったの……!?
そんな筈はないという気持ちで白い扉を見つめていると、中から看護師が出てきた。
美姫が駆け寄る。
「父!! 父は、どこですか!?
来栖、来栖誠一郎は!? 娘、私、娘です!!」
混乱しながら取り乱す美姫に、看護師が手を取り、落ち着かせるように穏やかな声で告げた。
「手は尽くしたのですが……」
その後も看護師は何か説明していたが、美姫の耳には一切入ってこなかった。目の前が真っ暗になり、全身の力が抜けた。
「来栖社長!!」
畑中が慌てて美姫の躰を支え、手術室の目の前にあるベンチに座らせた。
看護師は美姫を気遣いながらも、ずっとそこにいるわけにもいかず、
「来栖さんの遺体は、地下の霊安室に運ばれましたから」
そう声を掛け、足早に去って行った。
お父様が、死んだ。
死ん、だ……
そ、んな……
革靴の音が遠くから響き、だんだんと大きくなる。
「美姫!!!」
大和が大声で呼んでも美姫は呆然としており、その呼びかけに気付きもしなかった。
「美姫。美姫……」
大和に両肩を掴まれ、抱き締められても、まるで人形のように反応がない。
「お父さんがいる。霊安室に、一緒に行こう」
美姫を立ち上がらせ、歩かせる。
まるで夢遊病患者のように、意志のないまま美姫はふらふらと大和に腕を引かれて歩いていた。
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