<本編完結!AS開始>【R18】愛するがゆえの罪 ー溜息が出るほど美しくて淫らな叔父と姪の禁断愛ストーリーー

奏音 美都

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ふたりの母

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 もうすぐ大和の来る時間だからと凛子は帰って行き、美姫はひとりになった。手術前の最後の食事となる夕食を終え、時計を見ると6時半だった。

 大和、6時には来るって言ってたけど......

 スマホが鳴り、LINEが届く。

『ごめん。仕事でトラブルがあって、間に合わなさそうだ。
 明日の朝、そっちに行く』

 面会時間は9時までとなっており、付き添いの宿泊は許可されていない。美姫は心細く思いつつも、どこかでホッとする気持ちもあった。

 明日の手術の不安と緊張が高まる中、落ち着いてなどいられなかった。

 もし手術が失敗したら……
 癌だったら……
 子宮まで失ってしまったら……

 悪いことばかり考えてしまい、押し潰されそうになる。

 美姫は堪らずサイドテーブルに置かれたパソコンに手を伸ばし、膝の上に置くとベッドのヘッドボードに凭れた。鼓動が高鳴り、指が震える。

 Wi-Fiの設定をし、ネットを繋いだ。

 メールを立ち上げる美姫の胸には、緊張と不安と高揚、そして……背徳感が入り混ざっていた。

 今日も、来てる……

 それは、秀一からのメールだった。

 仕事上連絡が必要な為、メールアドレスを交換していた。交換せずとも、秀一は美姫のアドレスを既に知っていたかもしれないが。  

 エレベーターでの一件以来、秀一と関わりたくない気持ちがあっても、私情をビジネスに持ち込むわけにはいかない。秀一がウィーンに帰ってからも、ツアーの衣装デザインの確認や問い合わせ等、仕事の内容についてのやり取りをしていた。

 美姫のメールに対しての秀一の返事も美姫同様ビジネスライクなものであったのだが、暫くしてから……そう、美姫の卵巣に腫瘍が発見された日辺りから、その内容に変化が表れた。

 仕事のことも書かれているのだが、それに加えて日々の生活に絡め、美姫を愛しく思う気持ちが短い文章で綴られ、毎日メールで送られてきた。

 ーー日本のうだるような暑さを逃れてウィーンに戻れば、こちらはすっかり秋の気配が近づいています。11月にもなればシェーンブルン宮殿を紅葉が美しく彩りますが、そこに貴女がいなければ、その美しさも哀愁で胸を切なくさせることでしょう。

 ーー今日は、ウィーン市庁舎の広場にザックに駆り出されました。蚤の市で貴女が好きそうな花瓶を見つけ、貴女はどうしているかと心に浮かびました。

 ーーブラームス・ザールでの定期演奏会に呼ばれました。ニューイヤーコンサートでの貴女の着物姿は凛としていて華麗で、本当に美しかった。瞼を閉じると、すぐに思い浮かびます。

 美姫の胸が奥底から熱くなる。文章を追っていると、まるで秀一が話しかけているかのように感じる。

 心がウィーンへ、秀一の元へと羽ばたいていく。 

 ウィーンの街並みが目の前に広がり、耳に、鼻腔に蘇る。
 秀一の隣で歩き、微笑み、見つめ合う自分を想像してしまう。

 そこには『愛している』とか『貴女が欲しい』といった、激しい胸の内を明かすような言葉は一切書かれていない。けれど、こんなに穏やかに優しい文章なのに、秀一の思いが胸の奥深くにまで染み込んでくるようだった。
 
 気づけば、何度も何度も読み返してしまっていた。読むたびに、胸が切なく締め付けられた。
 秀一への恋心を、自覚させられずにはいられなかった。

 愛してはいけない人なのに。

 明らかな恋文であれば拒否しなければならないが、それとも違う文章に美姫は『そういった文章は送らないで下さい』とも言えなかった。

 美姫が出来ることといえば、ビジネスとして接することだけ。プライベートの話は一切せず、もちろん秀一への想いを伝えることもなかった。

 そんな美姫に、秀一はいつか愛想をつかしてしまうのではと恐くなる。
 もう、自分のことを諦めてしまうかもしれない、と。

 だからメールを確認する時、美姫は今日は届いてるだろうかといつも不安な気持ちになる。

 美姫は受信箱の秀一の名前を見て、速くなる鼓動を感じながらクリックした。

 今日は、なんて書いてあるんだろう……

『手術前で、不安ではないですか。
 美姫が望むのであれば……今すぐにでも貴女の元へ飛んでいき、その苦しみを分かち合いたい』

「ッッ!」

 手術のこと、何も話してなかったのに……

 美姫の瞳から涙が溢れ出す。

 不安。
 不安、です……

 会いたい。
 秀一さんに、会いたい……

「ッグ会い……たいッッ」

 ノックすることも躊躇いもなく、病室の扉が開いた。



「さすがにウィーンから東京までは遠いですね。
 面会時間が、あと2時間しかありません」



「秀一さんっ!!」

 美姫は慌てて半身を起こし、驚きのあまりに涙が奥へ引っ込んだ。
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