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呑み込まれる理性
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翌日。
美姫は、逞しく鍛えられた秀一の裸体に指を伸ばしていた。背中を向ける彼の少し盛り上がった美しい三角筋に触れ、美姫の鼓動が速まる。
ほんとに......以前よりも逞しくなってる。
細身で引き締まった秀一も魅力的だが、美しいボディラインを誇る今の躰は一言で言えば『美味しそうな躰』そのものだった。
甘くてセクシーな香りが、まるで衣服のように彼の躰を纏っている。蜜の匂いに蝶が誘われるように、美姫もまたその香りに惹かれずにはいられなかった。クラクラと眩暈を感じ、甘い疼きに襲われる。
肩の端から首まで指を滑らせる。美姫の吐息が秀一の背中にかかり、ピクッと小さく躰が震えた。
「フッ美姫......擽ったいですよ」
「ぁ、すみません......」
振り向いて甘く微笑む秀一に、美姫は顔を赤らめずにはいられなかった。
心臓が、壊れそう......
そこに、バターン!と扉が開き、大声が響いた。
「何してんだ!」
「やま、と......」
踏み台の上の美姫はメジャーを手に、驚いて大和を見つめた。美姫と秀一を取り囲むようにして立っていた女性スタッフ達も、何事かと一斉に大和を見上げる。
流麗なボディラインを見せつけるようにして、秀一が眉を顰めた。
「見れば分かるでしょう?
採寸ですよ」
大和が憤然としながら秀一に歩み寄る。
「採寸は、パタンナーの仕事だろ! なんで美姫にやらせてんだ!
その前に、なんで裸になる必要があるんだ!!」
秀一が馬鹿にしたように鼻で笑った。
「今回は躰のボディラインをしっかり把握する為にもヌード寸法を測る必要があると判断したのですよ。何も知識がないと思っていましたが、パタンナーを知っていたことだけは褒めて差し上げましょう」
秀一の言葉を無視し、大和は今度は美姫に詰め寄った。
「美姫、パタンナーはどうした?」
「そ、それが......河野さん、秀一さんの採寸するのに手が震えちゃって、ちゃんと測れなかったの。
他のスタッフさんにも頼んだんだけど、みんな手が震えるか、舞い上がって間違えたりとか、鼻血まで出す子もいて......それで結局、私が採寸することになったの」
欲望の島の高級娼婦たちさえも骨抜きにしてしまう秀一のフェロモンを前にし、正気でいられる女性スタッフなどいなかった。
大和が、美姫からメジャーを取り上げる。
「なら、俺がやる」
え、大和が!?
美姫は驚きつつも、大和に尋ねた。
「仕事の方は大丈夫なの?」
「あぁ、取引先との商談を終えて、今は昼休み中だから。それが終わったらまた本社に戻る」
大和の後ろに控えていた山本も、黙って頷いた。
昼休みでさえも心配になって、様子見に来たんだ。
大和に任せた方がこの場が丸く収まるだろうけど......
美姫が考えていると、秀一が不快な表情を表した。
「何を言っているのですか。採寸の仕方も分からないようなこんな男に、私の大事なコンサートツアーの衣装の採寸を任せられるはずないでしょう」
秀一の言葉に、美姫は俯いた。
これは、大勢の人が関わっている重大なプロジェクトの一環なんだ。私はプロとして、責任をもってやり遂げなければいけない。
美姫は、大和を見上げた。
「採寸は少しでも間違うと、イメージに合ったものが出来なくなっちゃうの。これでも私、デザイナーの仕事を任せられてからしっかり縫製のことも勉強してきたし、この仕事を完璧にこなしたいの。
だから、これは私に任せてくれないかな?」
美姫の言葉を聞いて大和は一瞬眉を顰めたものの、メジャーを返した。
「俺こそ、なんかごめん......」
目を逸らして俯いた大和に、彼の気持ちを踏みにじってしまった気がしてしまい、美姫は罪悪感を覚えた。
美姫は、逞しく鍛えられた秀一の裸体に指を伸ばしていた。背中を向ける彼の少し盛り上がった美しい三角筋に触れ、美姫の鼓動が速まる。
ほんとに......以前よりも逞しくなってる。
細身で引き締まった秀一も魅力的だが、美しいボディラインを誇る今の躰は一言で言えば『美味しそうな躰』そのものだった。
甘くてセクシーな香りが、まるで衣服のように彼の躰を纏っている。蜜の匂いに蝶が誘われるように、美姫もまたその香りに惹かれずにはいられなかった。クラクラと眩暈を感じ、甘い疼きに襲われる。
肩の端から首まで指を滑らせる。美姫の吐息が秀一の背中にかかり、ピクッと小さく躰が震えた。
「フッ美姫......擽ったいですよ」
「ぁ、すみません......」
振り向いて甘く微笑む秀一に、美姫は顔を赤らめずにはいられなかった。
心臓が、壊れそう......
そこに、バターン!と扉が開き、大声が響いた。
「何してんだ!」
「やま、と......」
踏み台の上の美姫はメジャーを手に、驚いて大和を見つめた。美姫と秀一を取り囲むようにして立っていた女性スタッフ達も、何事かと一斉に大和を見上げる。
流麗なボディラインを見せつけるようにして、秀一が眉を顰めた。
「見れば分かるでしょう?
採寸ですよ」
大和が憤然としながら秀一に歩み寄る。
「採寸は、パタンナーの仕事だろ! なんで美姫にやらせてんだ!
その前に、なんで裸になる必要があるんだ!!」
秀一が馬鹿にしたように鼻で笑った。
「今回は躰のボディラインをしっかり把握する為にもヌード寸法を測る必要があると判断したのですよ。何も知識がないと思っていましたが、パタンナーを知っていたことだけは褒めて差し上げましょう」
秀一の言葉を無視し、大和は今度は美姫に詰め寄った。
「美姫、パタンナーはどうした?」
「そ、それが......河野さん、秀一さんの採寸するのに手が震えちゃって、ちゃんと測れなかったの。
他のスタッフさんにも頼んだんだけど、みんな手が震えるか、舞い上がって間違えたりとか、鼻血まで出す子もいて......それで結局、私が採寸することになったの」
欲望の島の高級娼婦たちさえも骨抜きにしてしまう秀一のフェロモンを前にし、正気でいられる女性スタッフなどいなかった。
大和が、美姫からメジャーを取り上げる。
「なら、俺がやる」
え、大和が!?
美姫は驚きつつも、大和に尋ねた。
「仕事の方は大丈夫なの?」
「あぁ、取引先との商談を終えて、今は昼休み中だから。それが終わったらまた本社に戻る」
大和の後ろに控えていた山本も、黙って頷いた。
昼休みでさえも心配になって、様子見に来たんだ。
大和に任せた方がこの場が丸く収まるだろうけど......
美姫が考えていると、秀一が不快な表情を表した。
「何を言っているのですか。採寸の仕方も分からないようなこんな男に、私の大事なコンサートツアーの衣装の採寸を任せられるはずないでしょう」
秀一の言葉に、美姫は俯いた。
これは、大勢の人が関わっている重大なプロジェクトの一環なんだ。私はプロとして、責任をもってやり遂げなければいけない。
美姫は、大和を見上げた。
「採寸は少しでも間違うと、イメージに合ったものが出来なくなっちゃうの。これでも私、デザイナーの仕事を任せられてからしっかり縫製のことも勉強してきたし、この仕事を完璧にこなしたいの。
だから、これは私に任せてくれないかな?」
美姫の言葉を聞いて大和は一瞬眉を顰めたものの、メジャーを返した。
「俺こそ、なんかごめん......」
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