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不意打ち
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「感情的な男は醜いですね。別に拉致したわけではありませんよ、勘違いしないで下さい。
こちらとしては、感謝して欲しいぐらいですね。こうしてわざわざ逢瀬を教えて差し上げているのですから。
私には、こそこそする理由もありませんしね」
『人の女を連れ出しといて、こそこそする理由がないとかよく言えんな! 美姫は俺の嫁だ、指一本触れたら承知しねぇぞ!!
美姫!美姫を出せ!! 美姫は無事なのか!?』
必死の呼びかけに、美姫がおずおずと答える。
「大和、ここにいるよ」
『美姫!! 変なことされてないか?
今、どこにいる? これから迎えに行くから!!』
迎えに来るって......ここ、韓国なのに。
蒼然とする美姫に、秀一はクスッと笑った。
「今日は、美姫との空白の時間を埋める為に付き合ってもらっているだけです。あなたが想像するようなことは、何もありませんよ」
それを聞き、美姫は安堵と残念な気持ちが入り混じった感情が広がりながら、大和を安心させるように言った。
「今バーで飲んでるの、私は水だけど。ホテルの部屋に戻ったら必ず連絡するから、待ってて......
ちゃんと、秀一さんに話さなくちゃいけないことがあるの」
大和は長い沈黙の後、力なく答えた。
『分かった......お前から連絡くるの、待ってるから。
必ず、電話してくれ』
その言葉を受け、美姫が答える前に秀一はスピーカーを解除して耳元にスマホを当てた。
「では、愉しい時間をこれ以上邪魔されては気分が悪いですので切りますね」
徐に通話終了ボタンを押すと、更に電源まで落とした。
唖然としている美姫に、秀一がブランデーグラスの真上でスマホを指で挟み、悪魔の微笑みを浮かべた。
「本当はグラスに沈めたいぐらいですけど......」
美姫の反応を見つめながら、更にスマホをグラスの近くにまで下ろす。
「それでは貴女の仕事に差し障りがあるでしょうから、今夜はやめておきましょうか」
冷や汗を浮かべる美姫の手に、スマホが渡される。
「あ、ありがとう......ございます」
「どういたしまして」
秀一は妖艶に微笑むと、再びソファに肘を掛けて深く躰を沈めた。
「......どうして、大和からの電話を取ったんですか」
秀一の真意が掴めず、美姫は尋ねた。
「私には、後ろめたいことなど何一つありませんから。
それとも、隠す必要でもありましたか?」
「い、いえ......」
そう言われてしまうと自分だけがふしだらな思いを抱えていたようで、美姫は羞恥に襲われた。そんな美姫に艶やかな笑みを浮かべ、秀一はブランデーボトルを手に取るとグラスに並々と注いだ。
「貴女は私に邪よこしまな気持ちを抱いているから、二人きりで会うのが怖いのです。
だから、羽鳥大和にそのことを隠したい」
美姫は本心を読まれ、狼狽えつつも必死に反撃した。
「ッ......隠したいのは、当たり前じゃないですか!!
だって、私たちは恋人だったんですよ? 大和に知られれば、心配されるに決まってます!」
私を抱きたいって言ったのは、秀一さんなのに。
納得いかない気持ちで憤慨する。
秀一が、グラス越しに美姫を覗く。
「それが、馬鹿だというんです」
「ば......」
思わぬ言葉に言葉が紡げない美姫に、秀一は意地の悪い眼差しを寄せた。
「そうして、なんでもかんでも隠そうとするから、嘘をついていることが苦しくなる。その嘘を突き通す為に、己の首を絞めることになる......そうではありませんか?」
美姫は、言い返せなかった。秀一の、言う通りだった。
やっぱり秀一さんには......敵わない。
こちらとしては、感謝して欲しいぐらいですね。こうしてわざわざ逢瀬を教えて差し上げているのですから。
私には、こそこそする理由もありませんしね」
『人の女を連れ出しといて、こそこそする理由がないとかよく言えんな! 美姫は俺の嫁だ、指一本触れたら承知しねぇぞ!!
美姫!美姫を出せ!! 美姫は無事なのか!?』
必死の呼びかけに、美姫がおずおずと答える。
「大和、ここにいるよ」
『美姫!! 変なことされてないか?
今、どこにいる? これから迎えに行くから!!』
迎えに来るって......ここ、韓国なのに。
蒼然とする美姫に、秀一はクスッと笑った。
「今日は、美姫との空白の時間を埋める為に付き合ってもらっているだけです。あなたが想像するようなことは、何もありませんよ」
それを聞き、美姫は安堵と残念な気持ちが入り混じった感情が広がりながら、大和を安心させるように言った。
「今バーで飲んでるの、私は水だけど。ホテルの部屋に戻ったら必ず連絡するから、待ってて......
ちゃんと、秀一さんに話さなくちゃいけないことがあるの」
大和は長い沈黙の後、力なく答えた。
『分かった......お前から連絡くるの、待ってるから。
必ず、電話してくれ』
その言葉を受け、美姫が答える前に秀一はスピーカーを解除して耳元にスマホを当てた。
「では、愉しい時間をこれ以上邪魔されては気分が悪いですので切りますね」
徐に通話終了ボタンを押すと、更に電源まで落とした。
唖然としている美姫に、秀一がブランデーグラスの真上でスマホを指で挟み、悪魔の微笑みを浮かべた。
「本当はグラスに沈めたいぐらいですけど......」
美姫の反応を見つめながら、更にスマホをグラスの近くにまで下ろす。
「それでは貴女の仕事に差し障りがあるでしょうから、今夜はやめておきましょうか」
冷や汗を浮かべる美姫の手に、スマホが渡される。
「あ、ありがとう......ございます」
「どういたしまして」
秀一は妖艶に微笑むと、再びソファに肘を掛けて深く躰を沈めた。
「......どうして、大和からの電話を取ったんですか」
秀一の真意が掴めず、美姫は尋ねた。
「私には、後ろめたいことなど何一つありませんから。
それとも、隠す必要でもありましたか?」
「い、いえ......」
そう言われてしまうと自分だけがふしだらな思いを抱えていたようで、美姫は羞恥に襲われた。そんな美姫に艶やかな笑みを浮かべ、秀一はブランデーボトルを手に取るとグラスに並々と注いだ。
「貴女は私に邪よこしまな気持ちを抱いているから、二人きりで会うのが怖いのです。
だから、羽鳥大和にそのことを隠したい」
美姫は本心を読まれ、狼狽えつつも必死に反撃した。
「ッ......隠したいのは、当たり前じゃないですか!!
だって、私たちは恋人だったんですよ? 大和に知られれば、心配されるに決まってます!」
私を抱きたいって言ったのは、秀一さんなのに。
納得いかない気持ちで憤慨する。
秀一が、グラス越しに美姫を覗く。
「それが、馬鹿だというんです」
「ば......」
思わぬ言葉に言葉が紡げない美姫に、秀一は意地の悪い眼差しを寄せた。
「そうして、なんでもかんでも隠そうとするから、嘘をついていることが苦しくなる。その嘘を突き通す為に、己の首を絞めることになる......そうではありませんか?」
美姫は、言い返せなかった。秀一の、言う通りだった。
やっぱり秀一さんには......敵わない。
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