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幸せな女と幸せを演じる女
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「普段はあまり見せないようにしてるんだけど、今日は特別」
子供たちに普遍の人気を誇る、パンで出来た不死身のヒーローたちが活躍するアニメを見せながら、薫子は自分に言い訳するように言った。
薫子の横では、詩織が嬉々として歌に合わせて踊っている。微笑ましく見つめる薫子の瞳は、母そのものだった。
詩織の心がアニメに向けられたところで、ようやく落ち着けた薫子はケーキに手をつけた。
「本当に久しぶりだよね。仕事、忙しいんでしょ?」
「うん、いつも会いたいって思ってても時間とれなくてごめんね」
本当に、薫子に会うのはいつぶりだろう。しーちゃんの成長ぶりを見ると、時間の経過に驚かされるな。
「ふふっ。今、一番注目されてる『KURUSU』ブランドのデザイナー兼チーフだもん、仕方ないよ。
今日は、大和は?」
大和のことを聞かれ、美姫はビクッと肩を震わせた。
「大和は、三ヶ日開けて今日が初出社なの。
うちは、明日からだから......」
「そっか、大和にも会いたかったなー。悠は時々大学で会ってるみたいだけど、私は全然会ってないから」
美姫は、「ごめんね」と短く答えた。
本当は、大和のことを相談したくて来たんだけど......私たち夫婦が上手くいってることを疑いもしない薫子を目の前にすると、話すことが躊躇われてしまう。
大和の浮気を話せば、例えその原因が私が秀一さんを忘れられなかったことにあると説明しても、薫子は私に同情してしまう。彼を、非難するかもしれない。
私は大和を敵にしたいわけじゃない。
ただ、この苦しい胸の内を誰かに知って欲しいだけ......
「悠も今日はいないの?」
大和のことを聞かれたので、それに応えるようにして薫子に尋ねた。薫子は大和に会っていないと話していたが、美姫も同じ大学ながら悠に会うことはなかった。
「取引先へ挨拶回りに行ってるの。本当は新年会の時に支社や取引先の方に挨拶する予定だったんだけど、しーちゃんがすぐに飽きて愚図りだしちゃって。結局、少し顔出しただけで帰ってきちゃったから。
4月からお義父様の元で仕事を始めるから、大学が冬休みの間に仕事の手伝いしたり、取引先回ったりして色々と忙しそうなの。
以前はそういう話は一切しなかったんだけど、今はなんでも話してくれるから嬉しい」
頬を少し染めた薫子に、美姫は微笑んだ。
「悠、薫子に甘えてるんだよ。相変わらずラブラブで、羨ましい」
冗談めかして言ったものの、それは奥底からの本心だった。
薫子が嬉しそうに返す。
「そういう美姫たちだって仲いいじゃない!」
美姫は、曖昧な笑みで応えた。
子供たちに普遍の人気を誇る、パンで出来た不死身のヒーローたちが活躍するアニメを見せながら、薫子は自分に言い訳するように言った。
薫子の横では、詩織が嬉々として歌に合わせて踊っている。微笑ましく見つめる薫子の瞳は、母そのものだった。
詩織の心がアニメに向けられたところで、ようやく落ち着けた薫子はケーキに手をつけた。
「本当に久しぶりだよね。仕事、忙しいんでしょ?」
「うん、いつも会いたいって思ってても時間とれなくてごめんね」
本当に、薫子に会うのはいつぶりだろう。しーちゃんの成長ぶりを見ると、時間の経過に驚かされるな。
「ふふっ。今、一番注目されてる『KURUSU』ブランドのデザイナー兼チーフだもん、仕方ないよ。
今日は、大和は?」
大和のことを聞かれ、美姫はビクッと肩を震わせた。
「大和は、三ヶ日開けて今日が初出社なの。
うちは、明日からだから......」
「そっか、大和にも会いたかったなー。悠は時々大学で会ってるみたいだけど、私は全然会ってないから」
美姫は、「ごめんね」と短く答えた。
本当は、大和のことを相談したくて来たんだけど......私たち夫婦が上手くいってることを疑いもしない薫子を目の前にすると、話すことが躊躇われてしまう。
大和の浮気を話せば、例えその原因が私が秀一さんを忘れられなかったことにあると説明しても、薫子は私に同情してしまう。彼を、非難するかもしれない。
私は大和を敵にしたいわけじゃない。
ただ、この苦しい胸の内を誰かに知って欲しいだけ......
「悠も今日はいないの?」
大和のことを聞かれたので、それに応えるようにして薫子に尋ねた。薫子は大和に会っていないと話していたが、美姫も同じ大学ながら悠に会うことはなかった。
「取引先へ挨拶回りに行ってるの。本当は新年会の時に支社や取引先の方に挨拶する予定だったんだけど、しーちゃんがすぐに飽きて愚図りだしちゃって。結局、少し顔出しただけで帰ってきちゃったから。
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「悠、薫子に甘えてるんだよ。相変わらずラブラブで、羨ましい」
冗談めかして言ったものの、それは奥底からの本心だった。
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「そういう美姫たちだって仲いいじゃない!」
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