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爆発

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「それ、知ったの......美姫が『KURUSU』ブランドのプレゼンで出掛けてた日なんだ。
 プレゼンの様子観る為にパソコン開けた時、ついでにメールチェックしてたら、美姫と金髪の男が空港に向かってるの見かけたってあって、写真も添付されてた。レナードって有名なピアニストだって言ってて、調べたら来栖秀一と兄弟弟子だったってことが分かった。それで、ピンと来たんだ。そいつが、美姫を来栖秀一に会わせようとしてたんじゃないのかって。

 すげぇ、ショックだった......空港まで行ったってことは、美姫の中で相当揺れてて、ギリギリまで悩んでたんだって分かったから。

 でも、結局お前は来栖秀一じゃなくて、俺を選んだ。だから何も言わず、忘れようとしたんだ」

 美姫は、堪らず俯いた。

 だから、あの日......大和の様子がおかしかったんだ。

 自宅に帰ってきたら、鍋が焦げてたことを思い出した。

 それから、久しぶりに大和が触れてくれたこと。
 行為の途中で、大和がやめてしまったこと......

 あの時は、大和が大地の死から立ち直れなくて、そんな気になれないのだと思っていた。

 大和は、自分の裏切りを知りながらもそれを受け入れようとし、愛そうとしていたのだ。けれど、躰は反応してくれず、大和は途中でやめざるをえなくなってしまった。

『なぁ......俺のこと、好きか?』

 大和の縋るような瞳が脳裏に蘇る。

 大和は、どんな思いでそれを私に聞いたのだろう。愛したくても愛せずに、苦しい思いをしていた大和の思いに......私は気づいてあげられなかった。

「俺はずっと待ってたんだ。
 お前が、来栖秀一の元に会いに行こうとしてたって。でも、俺を選んだんだって。
 そう言ってくれるのを、待ってた......」

 美姫は込み上がる涙を抑えきれなかった。

 以前、秀一の演奏を聴いた時には、美姫は正直な気持ちを大和に話せていた。大和に嘘をつきたくないと思っていた。

 けれど、大地の死にショックを受けている大和を目の前にした時、秀一に会いに行こうとしていたことを話すことなど、絶対に出来ない、するべきではないと思った。もうこれ以上、大和を傷つけたくなかったから。

 でも、それだけじゃない。

 あの時、秀一のことしか考えられなかった。ぎりぎりで踏みとどまったものの、もしかしたら大和を裏切り、秀一の元へ行っていたかもしれない。そんな想いを大和に話したくなかったから、打ち明けられなかったのだ。

 大和は、いつだって正直に話してくれることを望んでいると知っていたはずなのに。

 いつの間に、私は変わってしまったんだろう。
 大和のことを変わっただなんて、非難できない。

 言い出すタイミングがなかっただなんて、ていのいい言い訳に過ぎない。
 言おうと思えば......ううん、タイミングなんて関係ない。

 もし大和に真摯であろうとするなら、言えたはず。

「ッグ......ご、め。ごめ、な......さい......」

 大和のライトブラウンの瞳が揺らぎ、美姫を掴んでいた手から力が抜けた。

「俺、たち......いつから、互いの気持ちを話せなくなってたんだろうな」

 発した先から風にさらわれて、消えてしまいそうなほど頼りなかった。

「ッッ......ウッ......」

 本当に。

 ---どうして私たち、こうなってしまったんだろう。
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