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疑惑
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自然な流れに沿って気軽に言うつもりだったのに、重く響いてしまった。見つめる大和の表情が固くなる。
既に答えが分かってしまい、失望と後悔で美姫の心が黒く塗り潰されていく。
言うんじゃ、なかった......
「......あぁ、寝るか」
暫くして掛けられた大和の言葉に、美姫は耳を疑った。けれど、それを確かめる前に大和の手が美姫の手を取り、階段を上っていく。繋いだ手の温かさが、真実だということを裏付けていた。
今夜の大和は、いつになく積極的で、愛撫も丁寧だった。
「美姫......」
行為の最中に名前を呼ばれた途端、全ての景色が彩づいていく。それは、愛されているのだという自信を美姫に与えてくれる。女性としての尊厳を取り戻させてくれる。乾いた心に潤いが満ちていく。
見つめ合い、絡まり合う視線に愛おしさが溢れる。
どうか、この時間ときがずっと続くよう、美姫は心から祈った。
心が近づいたと思った。
まだ不安と疑惑はあるけれど、きっと何でもないのだと、目を瞑っていられると思っていた。
大和の、拒否の言葉を聞くまでは......
「ごめ......やっぱ、俺......無理だ......」
行為の途中で大和はベッドから下りると、呆然とする美姫の視線を背に部屋を出て行ってしまう。
中途半端に火照らされた美姫の躰が行き場のない肉欲を持て余し、熱を発し続ける。
それとは逆に、心は冷えていった。
どうして、なの......
すぐに洗面所に入る音が響き、だいぶたってから水が流れる音が聞こえてきた。それから、自分の部屋ではない扉が開き、閉まる音。
大和、戻って来なかった......
「ック」
ひとり部屋に残された美姫は、唇をきつく噛み締めた。そこから血がじわりと滲み、鉄の味が広がる。
大和は私との行為の途中で部屋を出てトイレに行き、そこで自慰をしたってこと、なの?
それから私を置き去りにしたまま部屋に戻って、寝てしまったの?
あれほど勇気を出したのに裏切られ、美姫の女性としての誇りも尊厳もズタズタに切り裂かれた。
既に答えが分かってしまい、失望と後悔で美姫の心が黒く塗り潰されていく。
言うんじゃ、なかった......
「......あぁ、寝るか」
暫くして掛けられた大和の言葉に、美姫は耳を疑った。けれど、それを確かめる前に大和の手が美姫の手を取り、階段を上っていく。繋いだ手の温かさが、真実だということを裏付けていた。
今夜の大和は、いつになく積極的で、愛撫も丁寧だった。
「美姫......」
行為の最中に名前を呼ばれた途端、全ての景色が彩づいていく。それは、愛されているのだという自信を美姫に与えてくれる。女性としての尊厳を取り戻させてくれる。乾いた心に潤いが満ちていく。
見つめ合い、絡まり合う視線に愛おしさが溢れる。
どうか、この時間ときがずっと続くよう、美姫は心から祈った。
心が近づいたと思った。
まだ不安と疑惑はあるけれど、きっと何でもないのだと、目を瞑っていられると思っていた。
大和の、拒否の言葉を聞くまでは......
「ごめ......やっぱ、俺......無理だ......」
行為の途中で大和はベッドから下りると、呆然とする美姫の視線を背に部屋を出て行ってしまう。
中途半端に火照らされた美姫の躰が行き場のない肉欲を持て余し、熱を発し続ける。
それとは逆に、心は冷えていった。
どうして、なの......
すぐに洗面所に入る音が響き、だいぶたってから水が流れる音が聞こえてきた。それから、自分の部屋ではない扉が開き、閉まる音。
大和、戻って来なかった......
「ック」
ひとり部屋に残された美姫は、唇をきつく噛み締めた。そこから血がじわりと滲み、鉄の味が広がる。
大和は私との行為の途中で部屋を出てトイレに行き、そこで自慰をしたってこと、なの?
それから私を置き去りにしたまま部屋に戻って、寝てしまったの?
あれほど勇気を出したのに裏切られ、美姫の女性としての誇りも尊厳もズタズタに切り裂かれた。
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