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奪われた幸せ ー久美sideー

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 羽田空港から2時間のフライトを経て、鹿児島空港に到着。そこから空港リムジンバスに約40分ほど乗り、鹿児島中央駅で降りる。

 山陽鹿児島における都市間移動の拠点駅であり、新大阪駅から当駅に至る山陽・九州新幹線の終着駅である鹿児島中央駅は、鹿児島市のみならず鹿児島県全域とのアクセス拠点となっている。

 バス停から降りると上層が漆黒、下層がレンガ造りのビルがドーンと建っているのに目を奪われる。漆黒の層の一番下には「鹿児島中央駅」と金色で表示が入っており、ここが桜島口(東口)へと繋がる。かなりモダンな外観に度肝を抜かれた。

 地図で見ると、ここは複合商業駅ビルであるアミュプラザ鹿児島のプレミア館の方で、その隣の薄ピンク色の建物が本館らしい。本館の奥からは大きな観覧車が見えていて、アミューズメントエリアとして充実していることが窺えた。

 うわぁ、鹿児島って結構栄えてんだ......

 そんな失礼な感想を抱きつつ、いろんなお店を回ってみたい誘惑がむくむくと湧いてくるけど、それより早く礼音に会いたいという気持ちが勝り、急いで改札へと向かった。

 JR鹿児島本線 都城行きの電車に乗る。途中、鹿児島駅(鹿児島中央駅とは異なる)からJR日豊線 都城行きに変わるが、線の名前が変わるだけで乗換等は必要ない。けれど、JR日豊線になった途端、線路が海沿いを走るため車窓からの景色は一変する。

 車窓から広がるキラキラと光る錦江湾を一望出来るだけでも感動なのに、その向こうには桜島がくっきりと見え、自然と興奮が高まった。夏から秋にかけてイルカが見えることもあるらしいと聞き、そんな景色を礼音と一緒に眺められたら......と、つい想像した。
 
 車窓の景色を堪能しているうちに線路が海沿いを離れて町中を通り、目的地である駅に到着した。

 その駅は、姶良あいら市にある。事前に調べた情報によると、姶良市は鹿児島県本土の中央部に位置した海と山に囲まれた町で、交通の要衝として藩政時代から街道が敷かれ、「白銀坂」や「竜門司坂」など、当時の石畳が今も残っているらしい。鹿児島市と霧島市に隣接したベットタウンとしても知られる町だが、あちこちで史跡と出会うことができ、歴史的な一面も垣間見ることができるとあった。

 そこから相当など田舎なんだろうなと想像していたけど、来てみたら案外開けたところなので拍子抜けした。もちろん東京に比べたら田舎だけど、道路も整備されてるし、生活するのに不便は感じなさそうだ。

 ほんのり潮風に乗って磯の香りが漂ってくる。残念ながら駅からは海の景色は見えないけれど、ここから海が近いのだということを感じられて嬉しくなった。

 駅正面からまっすぐに歩くとすぐにぶつかる信号を右折し、あとはひたすらまっすぐ歩く。道行く人たちを眺めていると、申し訳ないけど垢抜けないというか......ここに礼音みたいにファッションセンスの高い男の子が歩いていたら違和感を感じるのだろうなという気がした。

 山を隔てた隣はすぐ鹿児島市だし、九州には博多もあるけど、やっぱり礼音は東京の方が似合う。きっと礼音も早く帰りたがっているだろうと思うと、自然と歩く速度が速くなった。

 5分もすると、ホームページで見た創業当時から残る石造りの蔵「石蔵」が見えてきた。現在、県内には113の酒蔵があるそうだが、藤堂酒造の焼酎蔵は現存するものとしては最も古く、国の登録有形文化財にも指定されているそうだ。

 まるで石が焼けているかのように見える黒いシミのようなものは麹菌で、蔵元ごとに異なる麹菌が各蔵独自の風味を生み出すらしい。ふたつある蔵のうちの片方の壁には大きく「藤堂焼酎 藤の舞」とあった。

 ついに、来た......

 思わず、生唾を飲み込んだ。
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