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新たな誓い
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来賓控室へ向う途中、美姫は見知った顔を見て、足を止めた。
「佐和さん、来てくれたんですね!」
目尻や頬の皺は増えたが、温かい包み込むような眼差しは、ちっとも変わっていない。手を取って握り締める美姫に、佐和は目尻の皺を深くして微笑んだ。
「美姫様、お久しぶりでございます。
こんなに、お美しくなられて......」
その後は感動で涙が詰まり、言葉にならなかった。口を押さえ、涙を流す佐和に美姫も涙が湧き上がり、天井を見上げた。
そんな二人を温かく見つめた後、大和が笑顔で佐和に声を掛けた。
「佐和さん、お久し振りです。元気そうで、よかった」
佐和が大和を見上げ、笑みを深めた。
「大和様もご立派になられて......ケーキを嬉しそうに食べていたあの頃が、つい昨日のように感じてましたのに」
「佐和さんのケーキの味、今でも忘れられないぐらいすごく美味しかったです。
今度、俺にレシピ教えてもらえませんか」
佐和が目を丸くして大和を見つめる。
「まぁっ、大和様、お料理までなさるんですか!」
「ふふっ、大和、私よりも上手なんですよ。私こそ、佐和さんからお料理習わないと」
佐和は「まぁまぁ......」と言いながら、嬉しそうに目を細めた。
美姫から直接聞くことはなかったものの、佐和は美姫が秀一にずっと恋心を寄せていたことを感じていた。だから、地元の岡山で美姫と秀一のスキャンダルを知った時には、全身が震える程の大きな衝撃を受け、心を痛めたのだった。
美姫の幼馴染であり、佐和にとって息子のような存在であった大和が美姫と結ばれ、今、佐和は深い感動と安堵の思いでいっぱいだった。
「親族でもない私が挙式に参列しても大丈夫なのですか」
不安そうな表情を見せる佐和に、美姫は力強く答えた。
「何を言ってるんですか! 佐和さんは私にとって、もう一人の母親みたいなものですよ。結婚式が決まった時に、すぐに佐和さんの顔が思い浮かんで、絶対に来て欲しいって思ったんです。
佐和さんが来られて、本当によかった」
微笑む美姫に、佐和はまた涙が溢れ出すのを止められなかった。
「年をとると、涙もろくなってしまって。嫌ですねぇ......」
「佐和さん、来てくれたんですね!」
目尻や頬の皺は増えたが、温かい包み込むような眼差しは、ちっとも変わっていない。手を取って握り締める美姫に、佐和は目尻の皺を深くして微笑んだ。
「美姫様、お久しぶりでございます。
こんなに、お美しくなられて......」
その後は感動で涙が詰まり、言葉にならなかった。口を押さえ、涙を流す佐和に美姫も涙が湧き上がり、天井を見上げた。
そんな二人を温かく見つめた後、大和が笑顔で佐和に声を掛けた。
「佐和さん、お久し振りです。元気そうで、よかった」
佐和が大和を見上げ、笑みを深めた。
「大和様もご立派になられて......ケーキを嬉しそうに食べていたあの頃が、つい昨日のように感じてましたのに」
「佐和さんのケーキの味、今でも忘れられないぐらいすごく美味しかったです。
今度、俺にレシピ教えてもらえませんか」
佐和が目を丸くして大和を見つめる。
「まぁっ、大和様、お料理までなさるんですか!」
「ふふっ、大和、私よりも上手なんですよ。私こそ、佐和さんからお料理習わないと」
佐和は「まぁまぁ......」と言いながら、嬉しそうに目を細めた。
美姫から直接聞くことはなかったものの、佐和は美姫が秀一にずっと恋心を寄せていたことを感じていた。だから、地元の岡山で美姫と秀一のスキャンダルを知った時には、全身が震える程の大きな衝撃を受け、心を痛めたのだった。
美姫の幼馴染であり、佐和にとって息子のような存在であった大和が美姫と結ばれ、今、佐和は深い感動と安堵の思いでいっぱいだった。
「親族でもない私が挙式に参列しても大丈夫なのですか」
不安そうな表情を見せる佐和に、美姫は力強く答えた。
「何を言ってるんですか! 佐和さんは私にとって、もう一人の母親みたいなものですよ。結婚式が決まった時に、すぐに佐和さんの顔が思い浮かんで、絶対に来て欲しいって思ったんです。
佐和さんが来られて、本当によかった」
微笑む美姫に、佐和はまた涙が溢れ出すのを止められなかった。
「年をとると、涙もろくなってしまって。嫌ですねぇ......」
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