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詰問

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 間に挟まれた陽子は、たじたじしながらもお互いを紹介した。

「あ、美姫さん。こっちは私の友達で綾瀬 真奈美さん。薫子の、友達でもあるの。
 えと、こっちは来栖 美姫さ...」
「知っとるよ」

 低い真奈美の声が響いた。

 真奈美は前に出ると、美姫を正面から見据えた。
 
「私、大和と付き合っとったの」

 この、人が......大和が以前お付き合いしてた人、なんだ......

 真奈美はブロンドの髪を綺麗に緩めの内巻きにし、しっかりとしたアイメイクで、華やかな顔立ちをしていた。ふわモコのピンクニットに黒と白の格子柄スカート。細めの網タイツに春用のショートブーツを履いていた。一見しただけでは分からないが、上下の服はフランスの某有名ブランドの服で、ブーツはイタリアブランドだ。バッグにはいかにもそれと分かるブランドロゴが大きく入っており、清楚というよりは派手な印象が強かった。

 こういうタイプが、大和の好みなのかな。すごく可愛いくて女の子らしいけど、華やかというか、ちょっと派手......かな。
 大和はもっと清楚な感じの子が好みなのかと思ってたから、意外だったかも。

 美姫の心の中にモヤモヤとした気持ちが広がっていく。

 大和に彼女がいたことは以前から知ってたことだし、同じ大学に行けば会うかもしれないってことは覚悟してたはずじゃない。
 大和は私の過去を受け入れてくれた。私も、彼の過去を受け入れないと......

 美姫は動揺しながらも自分に言い聞かせ、心を落ち着かせるよう努めた。

「そう、だったんですね。お会いできて、嬉しいです」

 元カノからの挑戦的な言葉にどう対応すればいいのか分からず、曖昧に微笑んだ美姫に、真奈美は逆上した。

「あんた、私のことバカにしとんの?」

 いきなりきつい名古屋弁で迫られ、美姫は思わず退いた。

「そ、そんなつもりは......」

 どうしよう。怒らせちゃったみたい......

 真奈美はいかにも自分の方がランクが上で、大和は自分のものだと主張するような美姫の言い方に頭にきていた。

「私、知っとるんだでね、大学入ってからあんたと大和が付き合っとらんかったって!」
「ちょ、ちょっと......真奈ちゃん」

 こんな大勢の人がいるカフェテリアで言い合いが始まったら、注目されるのは目に見えて分かる。ましてや美姫は今、世間から注目を浴びている人間だ。

 陽子は真奈美を宥めながら、声を掛けた。

「ここではなんだからさ......場所、変えよ」

 陽子が案内したのは、大学歴史展示室だった。以前薫子から、あまり人が来ることのないここを悠との密会場所に使っていたと聞いたことを思い出したのだ。

「ここなら、殆ど人が来ることないから」

 美姫は以前大和に案内された時には建物の前は通ったものの、中に入るのは初めてだった。

 展示室には、3人の他には誰もいなかった。だが、展示をゆっくり楽しめるような雰囲気はもちろんない。あるのは......真奈美から放たれる敵意のある眼差しと重い空気だった。

「あんたらが高校の時、付き合っとったことは知っとるよ。でも、別れたんでしょ?
 大和、あんたのこと忘れるためにどんだけ苦しんだか知っとんの? そんな大和を支えてあげたかったのに......私には、それが出来んかった。
 なんで、またのこのこ出てくるの?」
 
 真奈美の気迫に押されそうになりながら、美姫は拳を握り締めた。  

 ここで私が大和とは高校で別れてから付き合っていなかったと話せば、そのことを真奈美さんがマスコミに暴露するかもしれない。
 そうなれば、今までの努力が全て無駄になってしまう。
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