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入学
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心細い思いでいると、後ろから数人の女の子たちに『美姫先輩!』と呼びかけられた。
振り向くと、青海学園テニス部の後輩たちだった。全員幼稚舎から大学までのストレート組で、美姫とは年が2つ離れているものの、中等部と高等部にてテニス部に所属していたため、4年の付き合いになる。
普通、大学の入学式というとリクルートスーツのような地味なスーツで出席する学生が多い。だが、セレブの多く集まる青海学園大学、特にストレート組においては華やかなスーツに身を包んだ学生が多く、美姫も含み、この3人も例外ではなかった。それぞれ海外の有名ブランドのスーツに合わせたバッグと靴でコーディネートし、高級なアクセサリーを身に纏っている。
こんなところでも、美姫は自分が青海学園に戻ってきたのだという実感が湧いてきていた。
「美姫先輩、お久し振りです!」
「こんなところで会えるなんて思ってませんでしたぁ!」
「美姫先輩、青学に戻ってきたんですね! すごく嬉しいですっ!!」
次々に声を掛けられ、美姫の尖っていた気持ちが一気に丸くなった。懐かしい顔ぶれに、自然と美姫に笑みが浮かぶ。
「朱里、愛、菫、久しぶりー! そうなの、青学に戻ってきちゃった。三年次からの編入生なんだけど、またよろしくね。みんなは、どこの学部にしたの?」
そこで、それぞれの学部について説明したり、先程正門でもらったサークルや愛好会などのチラシを見ながらどこに入るかについてのことで話が盛り上がった。
「もちろん美姫先輩は、テニスサークル入るんですよね?」
3人は期待で目を輝かせた。中等部、高等部と美姫はテニス部の部長を務めており、彼女たちの憧れだったからだ。
「うーん、サークルや同好会には入らないかな。たぶん、忙しくて参加出来ないと思うから......」
そう答えた美姫に、3人は同時に「アッ!」という顔を見せた。
「昨日のプレゼン発表、見ました!」
「新しいロゴ、すっごく素敵です!」
「先輩の制服姿も、めちゃめちゃ可愛かったです!!!」
興奮したように話す後輩たちを可愛く思いながら、美姫は「そう言ってもらえると、嬉しい」と微笑んだ。
「それにしても、美姫先輩と大和先輩ってやっぱりお似合いですよね」
朱里がほぉっと溜息を吐くと、他の二人の興奮度も上がった。
「婚約発表の記者会見見て、泣いちゃいましたー!」
「私、ずっと美姫先輩は大和先輩と一緒になるって信じてました!」
「中等部の時からふたりの仲いいところ見てて、憧れてました!」
『先輩、結婚おめでとうございます!!!』
心から自分と大和との結婚をお祝いしてくれる後輩たちを前に、美姫は顔を綻ばせた。
「ありがとう、みんな」
講堂前で係からアナウンスが入り、順に入場するよう指示が入る。
本来なら学部別に新学部生、新大学院生、そして編入生の順で入場するのだが、これほど大勢の学生を統制するのは難しい。学生たちの殆どは、学部が違っていても友人同士で固まってぞろぞろと入場していた。 美姫も編入生として後ろに並ばなければならなかったが、後輩たちの強い勧めで一緒にいることになり、横並びに座った。
入学式はカソリック系らしく、途中賛美歌やお祈りの時間などを挟みながら、滞りなく進行していく。式の間中、美姫は自分に視線が集まっていることを感じてはいたが、朱里と愛に挟まれて座っていた為、それほど気にすることなく済んだ。
ひとりじゃなくて、本当によかった......
美姫は心から安堵の息を吐いた。
入学式は、2時間ほどで終了した。講堂を出ると、美姫はたちまち昔からの青海学園の知り合いに囲まれてしまった。
「式の時に、美姫先輩見つけてビックリしました!」
「きゃあ、また先輩に会えて嬉しいです!」
「どこの学部ですか?」
するとそこに、青海学園大学の入学式の様子を報道しに来ていた者たちから連絡を受けて駆け付けた報道記者たちが、美姫を見つけて一斉に駆け寄る。
「来栖さん、青海学園大学に編入学、おめでとうございます」
「昨日のプレゼンは大成功でしたね。今日は、夫である来栖大和さんは来られているんですか」
「来栖秀一さんにはこのことは伝えましたか」
「未だ来栖氏の行方が分かっていませんが、美姫さんは本当はご存知なんじゃないですか」
報道陣と、美姫がいることを知って野次馬のように群がる学生たちが詰めかけ、押し合いへし合いとなり、美姫は恐怖で足が竦んだ。
「美姫!」
そんな中、大和がその輪の中から連れ出してくれ、ようやく美姫は青海大学を後にすることが出来た。
振り向くと、青海学園テニス部の後輩たちだった。全員幼稚舎から大学までのストレート組で、美姫とは年が2つ離れているものの、中等部と高等部にてテニス部に所属していたため、4年の付き合いになる。
普通、大学の入学式というとリクルートスーツのような地味なスーツで出席する学生が多い。だが、セレブの多く集まる青海学園大学、特にストレート組においては華やかなスーツに身を包んだ学生が多く、美姫も含み、この3人も例外ではなかった。それぞれ海外の有名ブランドのスーツに合わせたバッグと靴でコーディネートし、高級なアクセサリーを身に纏っている。
こんなところでも、美姫は自分が青海学園に戻ってきたのだという実感が湧いてきていた。
「美姫先輩、お久し振りです!」
「こんなところで会えるなんて思ってませんでしたぁ!」
「美姫先輩、青学に戻ってきたんですね! すごく嬉しいですっ!!」
次々に声を掛けられ、美姫の尖っていた気持ちが一気に丸くなった。懐かしい顔ぶれに、自然と美姫に笑みが浮かぶ。
「朱里、愛、菫、久しぶりー! そうなの、青学に戻ってきちゃった。三年次からの編入生なんだけど、またよろしくね。みんなは、どこの学部にしたの?」
そこで、それぞれの学部について説明したり、先程正門でもらったサークルや愛好会などのチラシを見ながらどこに入るかについてのことで話が盛り上がった。
「もちろん美姫先輩は、テニスサークル入るんですよね?」
3人は期待で目を輝かせた。中等部、高等部と美姫はテニス部の部長を務めており、彼女たちの憧れだったからだ。
「うーん、サークルや同好会には入らないかな。たぶん、忙しくて参加出来ないと思うから......」
そう答えた美姫に、3人は同時に「アッ!」という顔を見せた。
「昨日のプレゼン発表、見ました!」
「新しいロゴ、すっごく素敵です!」
「先輩の制服姿も、めちゃめちゃ可愛かったです!!!」
興奮したように話す後輩たちを可愛く思いながら、美姫は「そう言ってもらえると、嬉しい」と微笑んだ。
「それにしても、美姫先輩と大和先輩ってやっぱりお似合いですよね」
朱里がほぉっと溜息を吐くと、他の二人の興奮度も上がった。
「婚約発表の記者会見見て、泣いちゃいましたー!」
「私、ずっと美姫先輩は大和先輩と一緒になるって信じてました!」
「中等部の時からふたりの仲いいところ見てて、憧れてました!」
『先輩、結婚おめでとうございます!!!』
心から自分と大和との結婚をお祝いしてくれる後輩たちを前に、美姫は顔を綻ばせた。
「ありがとう、みんな」
講堂前で係からアナウンスが入り、順に入場するよう指示が入る。
本来なら学部別に新学部生、新大学院生、そして編入生の順で入場するのだが、これほど大勢の学生を統制するのは難しい。学生たちの殆どは、学部が違っていても友人同士で固まってぞろぞろと入場していた。 美姫も編入生として後ろに並ばなければならなかったが、後輩たちの強い勧めで一緒にいることになり、横並びに座った。
入学式はカソリック系らしく、途中賛美歌やお祈りの時間などを挟みながら、滞りなく進行していく。式の間中、美姫は自分に視線が集まっていることを感じてはいたが、朱里と愛に挟まれて座っていた為、それほど気にすることなく済んだ。
ひとりじゃなくて、本当によかった......
美姫は心から安堵の息を吐いた。
入学式は、2時間ほどで終了した。講堂を出ると、美姫はたちまち昔からの青海学園の知り合いに囲まれてしまった。
「式の時に、美姫先輩見つけてビックリしました!」
「きゃあ、また先輩に会えて嬉しいです!」
「どこの学部ですか?」
するとそこに、青海学園大学の入学式の様子を報道しに来ていた者たちから連絡を受けて駆け付けた報道記者たちが、美姫を見つけて一斉に駆け寄る。
「来栖さん、青海学園大学に編入学、おめでとうございます」
「昨日のプレゼンは大成功でしたね。今日は、夫である来栖大和さんは来られているんですか」
「来栖秀一さんにはこのことは伝えましたか」
「未だ来栖氏の行方が分かっていませんが、美姫さんは本当はご存知なんじゃないですか」
報道陣と、美姫がいることを知って野次馬のように群がる学生たちが詰めかけ、押し合いへし合いとなり、美姫は恐怖で足が竦んだ。
「美姫!」
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