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余波
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新ロゴ事業に向けて進展する中、美姫は京香の口利きのもと青海学園大学への編入試験を受け、三年次からの編入生として4月から受け入れられることとなった。
そこで、N大学には正式に退学届を出すことになったのだが、美姫には気にかかることがあった。N大での友人のことだ。もちろん、礼音、久美には顔を合わせることなど出来るはずもないが、せめて麻子、匠、勝にはちゃんと顔を合わせて退学することを伝えておきたかった。
「美姫が仲良くしてた友達なら俺も会ってみたいし、外で会うとまた大変だから、家に呼んだらいいんじゃないか」
事情を話した美姫に対し、大和はそう提案してくれた。
私がひとりで会うことに不安を抱いていることに大和は気づいて、そう言ってくれたんだ......
そんな優しさに感謝しつつ、大和の好意に甘えて3人を家に招待することになった。
直接電話することが躊躇われたため、3人にはメールで連絡した。皆、美姫からの連絡に喜び、家に来てくれると返事をしてくれたものの、不安は拭い切れない。
みんな、ずっと連絡してこなかった私のこと怒ってないかな。
会ったら、何を話せばいいんだろう。
考えれば考えるほど心臓の鼓動が高まり、そわそわと落ち着きをなくす。心ここにあらずといった感じでキッチンで準備をしていると、インターホンが鳴る音が響いた。
「俺、取ろうか?」
隣で手伝ってくれていた大和が、そう声を掛けてくれた。彼の言葉で、不思議なくらいに気持ちが落ち着いてくるのを美姫は感じた。
美姫は、大和を見上げて微笑んだ。
「私、行くよ」
鳴ったのは、この家の扉のではなく、ロビーに繋がっている方のインターホンだった。受話器を取ると、モニターには懐かしい麻子、勝、匠の顔が映っていた。
『美姫ー、着いたよー!』
「うん、今開けるね」
美姫はその笑顔にホッとしながらロビーの扉を解錠した。ブーッという音が響くと同時に、インターホンのモニターが黒くなった。
これから......来るんだ。
「着いたって?」
大和に後ろから尋ねられ、美姫は振り向いて頷いた。
「やべっ、じゃあ急いで着替えてくる!」
慌ててエプロンを外し、部屋へと向かう大和の後ろ姿を笑って見送ると、美姫は気合いを入れるように両頬を軽く叩いた。
それから暫くして、家の扉のインターホンが響いた。
美姫は緊張で喉を鳴らした後、インターホンには出ず、直接扉を開けた。
「美姫、久しぶりー、会いたかったよー! 結婚おめでとー!!
もうなになに、高校から付き合ってたとか全然聞いてなかったからびっくりだよぉ!」
麻子が美姫に抱きつきながら、少し不満げな顔を見せた。
よかった......いつも通りの麻子だ。
久しぶりに会って、お互い気まずい空気になるのではないかと危惧していたが、そんな様子を見せることのない麻子の態度に、美姫は心の中で安堵した。
そこで、N大学には正式に退学届を出すことになったのだが、美姫には気にかかることがあった。N大での友人のことだ。もちろん、礼音、久美には顔を合わせることなど出来るはずもないが、せめて麻子、匠、勝にはちゃんと顔を合わせて退学することを伝えておきたかった。
「美姫が仲良くしてた友達なら俺も会ってみたいし、外で会うとまた大変だから、家に呼んだらいいんじゃないか」
事情を話した美姫に対し、大和はそう提案してくれた。
私がひとりで会うことに不安を抱いていることに大和は気づいて、そう言ってくれたんだ......
そんな優しさに感謝しつつ、大和の好意に甘えて3人を家に招待することになった。
直接電話することが躊躇われたため、3人にはメールで連絡した。皆、美姫からの連絡に喜び、家に来てくれると返事をしてくれたものの、不安は拭い切れない。
みんな、ずっと連絡してこなかった私のこと怒ってないかな。
会ったら、何を話せばいいんだろう。
考えれば考えるほど心臓の鼓動が高まり、そわそわと落ち着きをなくす。心ここにあらずといった感じでキッチンで準備をしていると、インターホンが鳴る音が響いた。
「俺、取ろうか?」
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「私、行くよ」
鳴ったのは、この家の扉のではなく、ロビーに繋がっている方のインターホンだった。受話器を取ると、モニターには懐かしい麻子、勝、匠の顔が映っていた。
『美姫ー、着いたよー!』
「うん、今開けるね」
美姫はその笑顔にホッとしながらロビーの扉を解錠した。ブーッという音が響くと同時に、インターホンのモニターが黒くなった。
これから......来るんだ。
「着いたって?」
大和に後ろから尋ねられ、美姫は振り向いて頷いた。
「やべっ、じゃあ急いで着替えてくる!」
慌ててエプロンを外し、部屋へと向かう大和の後ろ姿を笑って見送ると、美姫は気合いを入れるように両頬を軽く叩いた。
それから暫くして、家の扉のインターホンが響いた。
美姫は緊張で喉を鳴らした後、インターホンには出ず、直接扉を開けた。
「美姫、久しぶりー、会いたかったよー! 結婚おめでとー!!
もうなになに、高校から付き合ってたとか全然聞いてなかったからびっくりだよぉ!」
麻子が美姫に抱きつきながら、少し不満げな顔を見せた。
よかった......いつも通りの麻子だ。
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