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新生
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そんな二人の様子を見て、京香は楽しそうに笑った。
「凛子さんには私の方からお話させてもらいましたから。美姫さんと大和にどうするのか任せるって言ってらしたわよ。ふふっ...早速、経営者としてのお手並み拝見ってとこかしら」
それを聞き、美姫と大和は同時に喉をゴクリと鳴らした。
確かに以前、結婚の承諾について条件を出された時に、京香から来栖財閥の広告塔になるよう提示された。そして、いい知り合いがいるから紹介するとも。
だがまさかそれが、来栖財閥が契約している広告代理店そのものを変えることになるとまでは思っていなかった。
「マジ、かよ......」
大和が呟き、顔を青ざめた。
今日入籍を済ませたばかりで、まだ後継者として何も教わっていない自分が、いきなりこんな重要な仕事を任されるなんて考えてもみなかったのだ。
俺の、来栖財閥の後継者としての器を量るつもりでいるってことなのか!?
これで失敗したら......責任重大だ。
美姫は、来栖財閥の内情について、よくは知らないものの不安になった。
来栖財閥を担当している広告代理店は、確か祖父の代からずっと同じ大手企業が担当しており、長年の付き合いであるはずだ。それを、聞いたこともないような会社と契約するなど、もし自分たちと母が承諾したとしても、重役会議にかければたちまち反対にあうに違いない。
今、来栖財閥の従業員、特に来栖財閥の子会社や関連会社の重役を務める親族の間では、社長である誠一郎への不信に揺れている者も少なくない。そのひとつの原因は、婚約の席での話通り、羽鳥が来栖財閥の株を買い占め、大株主となったことにある。来栖財閥が羽鳥に乗っ取られるのではないかと、彼らは恐れている。
スキャンダルを起こした社長の娘の婿になど、来栖財閥の後継者など務めさせるわけにはいかないと、裏で密かに囁かれているとも聞いている。そんな中、契約した広告代理店が大和の母親からの推薦であったことが知られれば、反発を買い、ひいては組織の分裂にまで発展しかねない。
その判断を、凛子はふたりに任せるつもりでいるのだ。
お母様、先ほど私たちに会った時は何も仰らなかった。
いきなりこんな大きな決断を、私たちに任せるなんて......いったい、何を考えていらっしゃるの!?
美姫の心に、急速に不安が広がっていく。
京香がそんな美姫の表情を読み取ったように不敵な笑いを浮かべる。
「美姫さんは、不満?」
「い、いえ......そんなわけでは」
はっきりと言えない美姫に代わり、大和が京香に尋ねた。
「来栖財閥には長年付き合いのある広告代理店があるわけだろ。どうして急に、勝手にこんな話持ってきたのか、ちゃんと理由を聞かせて欲しい」
京香は聖輝を見つめながらシャンパングラスを掲げ、まるで自分の自慢話をするように彼の経歴を語り始めた。
「ここにいる聖輝はね、大学生の頃から自分でビジネスを立ち上げてネットを中心にロゴマークや広告を制作する会社を立ち上げたの。私はその頃に彼に知り合い、お金をいくらか出資したんだったわよね?」
確認するように聖輝に話を振る京香に、彼は軽く頭を下げた。
「えぇ。あの時は、大変お世話になりました」
京香は聖輝の言葉に満足すると、話を続けた。
「大学卒業後、彼は広告代理店業界で世界第2位のニューヨークのオフニコムグループに勤め、そこで実績と経験を積み上げたのよ。その後、自分の会社を再び立ち上げる為、帰国したってわけ」
「どうしてそんな凄い企業で働いていたのに、日本に帰って会社を立ち上げようと考えられたんですか」
大和は、素直に聖輝に疑問をぶつけた。
彼の柔らかかった表情が、真面目なものへと変わる。
「日本には、世界的規模で活動する広告代理店は今のところ皆無と言っていいでしょう。私は世界の企業を相手に出来るような広告代理店を日本で立ち上げる為に、帰国しました。
現在、来栖財閥は経営の危機に面していますね。それを救う為に、お二人は再建を誓った......そうですよね?」
まっすぐに瞳を捉える聖輝に負けないよう、大和も彼の瞳を見返した。
「はい、そうです」
「凛子さんには私の方からお話させてもらいましたから。美姫さんと大和にどうするのか任せるって言ってらしたわよ。ふふっ...早速、経営者としてのお手並み拝見ってとこかしら」
それを聞き、美姫と大和は同時に喉をゴクリと鳴らした。
確かに以前、結婚の承諾について条件を出された時に、京香から来栖財閥の広告塔になるよう提示された。そして、いい知り合いがいるから紹介するとも。
だがまさかそれが、来栖財閥が契約している広告代理店そのものを変えることになるとまでは思っていなかった。
「マジ、かよ......」
大和が呟き、顔を青ざめた。
今日入籍を済ませたばかりで、まだ後継者として何も教わっていない自分が、いきなりこんな重要な仕事を任されるなんて考えてもみなかったのだ。
俺の、来栖財閥の後継者としての器を量るつもりでいるってことなのか!?
これで失敗したら......責任重大だ。
美姫は、来栖財閥の内情について、よくは知らないものの不安になった。
来栖財閥を担当している広告代理店は、確か祖父の代からずっと同じ大手企業が担当しており、長年の付き合いであるはずだ。それを、聞いたこともないような会社と契約するなど、もし自分たちと母が承諾したとしても、重役会議にかければたちまち反対にあうに違いない。
今、来栖財閥の従業員、特に来栖財閥の子会社や関連会社の重役を務める親族の間では、社長である誠一郎への不信に揺れている者も少なくない。そのひとつの原因は、婚約の席での話通り、羽鳥が来栖財閥の株を買い占め、大株主となったことにある。来栖財閥が羽鳥に乗っ取られるのではないかと、彼らは恐れている。
スキャンダルを起こした社長の娘の婿になど、来栖財閥の後継者など務めさせるわけにはいかないと、裏で密かに囁かれているとも聞いている。そんな中、契約した広告代理店が大和の母親からの推薦であったことが知られれば、反発を買い、ひいては組織の分裂にまで発展しかねない。
その判断を、凛子はふたりに任せるつもりでいるのだ。
お母様、先ほど私たちに会った時は何も仰らなかった。
いきなりこんな大きな決断を、私たちに任せるなんて......いったい、何を考えていらっしゃるの!?
美姫の心に、急速に不安が広がっていく。
京香がそんな美姫の表情を読み取ったように不敵な笑いを浮かべる。
「美姫さんは、不満?」
「い、いえ......そんなわけでは」
はっきりと言えない美姫に代わり、大和が京香に尋ねた。
「来栖財閥には長年付き合いのある広告代理店があるわけだろ。どうして急に、勝手にこんな話持ってきたのか、ちゃんと理由を聞かせて欲しい」
京香は聖輝を見つめながらシャンパングラスを掲げ、まるで自分の自慢話をするように彼の経歴を語り始めた。
「ここにいる聖輝はね、大学生の頃から自分でビジネスを立ち上げてネットを中心にロゴマークや広告を制作する会社を立ち上げたの。私はその頃に彼に知り合い、お金をいくらか出資したんだったわよね?」
確認するように聖輝に話を振る京香に、彼は軽く頭を下げた。
「えぇ。あの時は、大変お世話になりました」
京香は聖輝の言葉に満足すると、話を続けた。
「大学卒業後、彼は広告代理店業界で世界第2位のニューヨークのオフニコムグループに勤め、そこで実績と経験を積み上げたのよ。その後、自分の会社を再び立ち上げる為、帰国したってわけ」
「どうしてそんな凄い企業で働いていたのに、日本に帰って会社を立ち上げようと考えられたんですか」
大和は、素直に聖輝に疑問をぶつけた。
彼の柔らかかった表情が、真面目なものへと変わる。
「日本には、世界的規模で活動する広告代理店は今のところ皆無と言っていいでしょう。私は世界の企業を相手に出来るような広告代理店を日本で立ち上げる為に、帰国しました。
現在、来栖財閥は経営の危機に面していますね。それを救う為に、お二人は再建を誓った......そうですよね?」
まっすぐに瞳を捉える聖輝に負けないよう、大和も彼の瞳を見返した。
「はい、そうです」
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