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入籍
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「妻になる人」の欄に「来栖 美姫」と丁寧にペンを走らせる美姫の瞳の奥が熱くなった。
ありがとう、大和。私を、受け入れてくれて。
いっぱい、笑顔にしてくれて。本気で、怒ってくれて。一緒に、泣いてくれて。
大和のこと、傷つけるばかりだったのに......諦めずに何度も、ぶつかってくれて。
力強く、引っ張り上げてくれて。深い愛情で包んでくれて。
あなたに、何度救われたか分からないよ。
これからは妻として、私が大和を支えていけるように頑張るから。
だから、一緒に幸せになろう。
決意を胸に美姫は書類を記入し終え、捺印した。
「じゃあ、俺たちこれから役所に提出してきます」
大和の言葉に、美姫も隣で頷いた。
「俺も出るところだから、駐車場まで一緒に行こう」
大地が背広と鞄を手に、立ち上がる。誠一郎とその隣で座る凛子は、笑顔でそれを見送った。
「気をつけてな」
「もし、何かあれば連絡下さいね」
大和は美姫を伴い、扉にいったん掛けた手を下ろすと、ふたりを振り返った。
「お父さん、お母さん。これからどうぞ、よろしくお願いします」
深くお辞儀をしてから顔を上げると、二人は瞳を潤ませ、何度も頷いた。美姫がそんな二人を見て微笑んだ後、大和の背中にそっと手を添えた。
「大和、行こっか」
「あぁ」
扉を閉めると、先ほどの両親の表情が蘇り、美姫は思わず涙ぐみそうになった。
本当に、ありがとう......大和。
エレベーターに乗り込むと、大地が申し訳なさそうに頭に手を置いた。
「せっかくの二人きりの時間を邪魔して、すまんな」
大地の言葉に、今度は二人が申し訳なくなり慌ててフォローする。
「そ、そんなことないですっ」
「なに言ってんだ、大兄! 俺たち一緒に住んでんだから、ふたりの時間なんていつでもあるから、そんな気ぃ遣わなくていいって!」
すると、大地が拳をつくった右手を口に当て、笑いを堪えた。
「な、なんだよ大兄!」
「いや......今日のお前たち見てたら、結婚って案外いいものかもしれないなと思ってさ」
大地はそう言って微笑んだ。
「大地...お義兄さんは、お付き合いしてる方がいらっしゃるんですか」
美姫が遠慮がちに尋ねた。
大地が遠い目をし、フッと笑みを浮かべた。
「あぁ、もう10年になるかな。ずっと支えてもらってる」
「え、そうなのか!? 全然知らなかった......」
大和は愕然とした。大地と色恋について話したことなど今まで一度もなく、そんな話を聞いたのは初めてだった。
「今まではただがむしゃらに秘書としての仕事をこなすことに必死だった。結婚なんて、全然考えたことなかったし、必要ないと思ってた。
でも......次回の選挙で、大瀧先生が俺を推薦するつもりだと仰って下さった時に、フッとあいつの顔が浮かんできてさ。俺が今までやってこられたのは、あいつの支えがあったからだったんだって気付いたんだ。
選挙に出馬して、初当選した暁にはプロポーズしようと思ってる。俺は、全力で戦うつもりだ。
そして、大瀧先生の事務所から独立する」
そこには、固い決意がみなぎっていた。
大地の強い思いに、大和と美姫は胸を打たれた。
「応援しています。頑張って下さいね」
月並みな言葉しか掛けられないことを申し訳なく思いつつも、美姫は心を込めて言った。
「選挙当選したら、その人紹介してくれよな」
「あぁ、分かった」
大和の言葉に、大地は少し照れたようにはにかんだ。
エレベーターが1階ロビーに着き、大地が下りると二人に笑顔で手を振った。
「二人ともおめでとう、幸せにな!」
ありがとう、大和。私を、受け入れてくれて。
いっぱい、笑顔にしてくれて。本気で、怒ってくれて。一緒に、泣いてくれて。
大和のこと、傷つけるばかりだったのに......諦めずに何度も、ぶつかってくれて。
力強く、引っ張り上げてくれて。深い愛情で包んでくれて。
あなたに、何度救われたか分からないよ。
これからは妻として、私が大和を支えていけるように頑張るから。
だから、一緒に幸せになろう。
決意を胸に美姫は書類を記入し終え、捺印した。
「じゃあ、俺たちこれから役所に提出してきます」
大和の言葉に、美姫も隣で頷いた。
「俺も出るところだから、駐車場まで一緒に行こう」
大地が背広と鞄を手に、立ち上がる。誠一郎とその隣で座る凛子は、笑顔でそれを見送った。
「気をつけてな」
「もし、何かあれば連絡下さいね」
大和は美姫を伴い、扉にいったん掛けた手を下ろすと、ふたりを振り返った。
「お父さん、お母さん。これからどうぞ、よろしくお願いします」
深くお辞儀をしてから顔を上げると、二人は瞳を潤ませ、何度も頷いた。美姫がそんな二人を見て微笑んだ後、大和の背中にそっと手を添えた。
「大和、行こっか」
「あぁ」
扉を閉めると、先ほどの両親の表情が蘇り、美姫は思わず涙ぐみそうになった。
本当に、ありがとう......大和。
エレベーターに乗り込むと、大地が申し訳なさそうに頭に手を置いた。
「せっかくの二人きりの時間を邪魔して、すまんな」
大地の言葉に、今度は二人が申し訳なくなり慌ててフォローする。
「そ、そんなことないですっ」
「なに言ってんだ、大兄! 俺たち一緒に住んでんだから、ふたりの時間なんていつでもあるから、そんな気ぃ遣わなくていいって!」
すると、大地が拳をつくった右手を口に当て、笑いを堪えた。
「な、なんだよ大兄!」
「いや......今日のお前たち見てたら、結婚って案外いいものかもしれないなと思ってさ」
大地はそう言って微笑んだ。
「大地...お義兄さんは、お付き合いしてる方がいらっしゃるんですか」
美姫が遠慮がちに尋ねた。
大地が遠い目をし、フッと笑みを浮かべた。
「あぁ、もう10年になるかな。ずっと支えてもらってる」
「え、そうなのか!? 全然知らなかった......」
大和は愕然とした。大地と色恋について話したことなど今まで一度もなく、そんな話を聞いたのは初めてだった。
「今まではただがむしゃらに秘書としての仕事をこなすことに必死だった。結婚なんて、全然考えたことなかったし、必要ないと思ってた。
でも......次回の選挙で、大瀧先生が俺を推薦するつもりだと仰って下さった時に、フッとあいつの顔が浮かんできてさ。俺が今までやってこられたのは、あいつの支えがあったからだったんだって気付いたんだ。
選挙に出馬して、初当選した暁にはプロポーズしようと思ってる。俺は、全力で戦うつもりだ。
そして、大瀧先生の事務所から独立する」
そこには、固い決意がみなぎっていた。
大地の強い思いに、大和と美姫は胸を打たれた。
「応援しています。頑張って下さいね」
月並みな言葉しか掛けられないことを申し訳なく思いつつも、美姫は心を込めて言った。
「選挙当選したら、その人紹介してくれよな」
「あぁ、分かった」
大和の言葉に、大地は少し照れたようにはにかんだ。
エレベーターが1階ロビーに着き、大地が下りると二人に笑顔で手を振った。
「二人ともおめでとう、幸せにな!」
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