<本編完結!AS開始>【R18】愛するがゆえの罪 ー溜息が出るほど美しくて淫らな叔父と姪の禁断愛ストーリーー

奏音 美都

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晴天の霹靂(へきれき) ー大和回想ー

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 美姫は、大きく息を吐いた。

「大和。私がここに大和を呼び出したのは......お願いを、するためなの。

 これから、私がするのは......すごく狡くて、残酷なお願い。
 私は......大和の優しさを、利用しようとしてる。自分でも、最低だって思ってる。

 でも、こんなこと頼めるのは......大和しか、いないの。
 どうか、私を。私たちを、救って......ッッ」

 美姫が、両手に口を当て、頭を深く下げた。

 美姫の、願い。それが、たとえどんなものであっても......

 掌に爪が食い込むほど固く拳を握り締めると、美姫に力強く頷いた。

「あぁ、叶えてやる。
 言っただろ? お前は狡くなっていいって。

 それでお前が幸せになれるなら、俺はそれでいいんだ」

 美姫は、『私たちを、救って』と言った。

 美姫と、来栖秀一のため......
 それが、美姫の幸せに繋がるなら......

 美姫は瞳を潤ませ、喉をグッと詰まらせた。それから俺を見つめ、信じられない言葉を告げた。
 
「大和。
 私と結婚して、来栖財閥の後継者として一緒に財閥を救って下さい」

 な......

 美姫を呆然と見つめたまま、言葉を失くした。一瞬、冗談かとも思ったが、こんな状況で美姫が冗談なんて言うはずがない。

 それに......俺を見つめる美姫の瞳は、決意に満ちていた。

 本気、なのか?

「だ、だってお前、今......来栖秀一とウィーンに行くって......」

 俺は、それでも現実を受け止めきれずにいた。自分で言い聞かせるように、呆然としたまま独り言のように呟く。

 そうだ、美姫はあいつとウィーンに行くんだ。
 俺と結婚するなんて、ありえねぇ......

 だが美姫は、決意に満ちた瞳を俺に向けた。

「明日の朝、私は秀一さんと成田空港で落ち合い、ウィーンに発つことになってる。
 そこで私は......彼に、別れを告げるつもり」

 俺は、耳を疑った。

 絶対に、来栖秀一と別れる選択肢を美姫は選ばないと思っていた。
 離れられるはずなどないと。

「出来る、のか?」

 来栖秀一と、別れるなんて......

 思わず、そんな言葉がついて出た。

 美姫は俯き、肩を震わせた。
 
「私が、いちゃいけないの。
 秀一さんと私は叔父と姪の関係。それは、何があっても変わることなどない。
 私は、あの人の足枷にしかなれないの......」

 来栖秀一を愛しながらも、あいつの為に自分の気持ちを押し殺す美姫の姿を見て、苦しくなった。

 美姫を、苦しませたくない。
 美姫が、好きだ。

 だからこそ、俺は......たとえ、俺の手からまたすり抜ける事になっても、幸せになってもらいたい。

「だったら、ふたりでどこか世界の果てにでも逃げちまえばいいじゃねぇか! 誰にも見つからない場所で。
 それで、二人だけで暮らせば...」

 美姫が俺の言葉を遮り、ヒステリックに叫んだ。

「私だって!!!
 私、だって......そう、したかった......でも、無理なの!!!
 あの人は、ピアノがなくちゃ生きていけないの。ピアノは、彼そのものなの。

 来栖秀一は、聴衆を虜にし、魅了することの出来る世界に誇るピアニスト。舞台に立ち、大勢の聴衆の前でピアノを奏でる時、その輝きは一層増す。

 私には、それを奪えない。
 彼は、世界に羽ばたくべき人なの。

 ふたりでいても、お互いに苦しめるだけ......ウッ......底のない暗闇に堕ちていく、だけ......なの」

 まるで血を絞り出すようにして、ひとことひとこと紡がれる美姫の言葉。来栖秀一を心の底から愛していることが、その端々から伝わってきた。愛する男の未来のために、身を引くと決断したその思いは、永遠の愛の誓いのようにも聞こえた。

 それほどまでに、お前は......あいつを。

 胸を激しく掻き毟りたくなるほどに、嫉妬が激しく立ち昇っていく。

 ---来栖秀一には敵わない。

 認めたくない思いが、奥底から漏れ出してくる。

「秀一さんが、私との別れを望んでいないのは知ってる。私が別れを告げたところで、納得しないことも分かってる。

 けれど、私は言わなければいけないの。この負の連鎖を、断ち切ると決めたから」

 本気で、別れるつもりなんだな。

 美姫の表情から、それが伝わってきた。だが、俺にはまだ納得できないことがある。

「お前が来栖秀一のために、別れを決断したことは分かった。
 けど、だからって......何で、俺たちが結婚しなきゃいけないんだ?」

 俺は、美姫の真意が掴めずにいた。
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