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首痕
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「......き!! 美姫っ!!
おい!大丈夫か!?」
肩を揺すられ、美姫はハッと目を醒ました。
ゆ......め......
夢、だったんだ。
まだぼんやりとした視界の向こうに、心配そうに美姫を見下ろす大和の顔があった。
「や、まと......ごめん。起こしちゃった、よね」
眉を下げて申し訳なさそうに謝る美姫に、大和はハァと息を吐き、頭を撫でた。
「俺のことは、いいから。
大丈夫か? すげぇ......魘されてた、けど......」
気遣うように問いかける大和に、美姫は小さく頷いた。
「心配かけて、ごめんね。
喉、渇いたから......ちょっと、キッチン行ってくる」
美姫は何でもないというように上半身を起こし、ベッドから下りると大和の横に立った。大和は前髪を無造作に掻き上げると、「あぁ......」と短く答え、ベッドに腰を下ろした。
キッチンの戸棚からグラスを取り出す手が震えている。蛇口を捻り、水を注ぐと一気に飲み干した。
「ッハァ、ッハァ......」
手、だけじゃない。全身も小刻みに震えている。
ゆ、め......あれは、夢。
そう思いながらも、美姫は無意識にグラスを置いた手をそっと首へと触れた。
もう、痣は残っていない。それなのに、あの時の感触がまだへばりついて離れない。
下半身に違和感を覚え、美姫はお手洗いへと向かった。
パンティーを下ろし、見つめた美姫の瞳が絶望に染まる。クラッチ部分が濡れ、濃い染みを滲ませていた。
トイレットペーパーを秘所にあてがうと、そこにも濃厚な蜜がべったりと張り付いた。
「ック......」
逃れ、られないの......?
私の躰はまだ、あの人に拘束されたままだというの?
今すぐにでもパンティーを履き変えたかったが、寝室にはまだ大和がいるかもしれない。美姫はクラッチ部分を拭き取り、パンティーライナーを当てた。
手を洗い、洗面所の鏡を何気なく見上げた美姫は、短く息を吸った。
「ヒッ......!!!」
顔を蒼白にし、後退りする。
どうして......痣は、消えたはずなのに。
うっすらと首に赤く残る、指の跡。
それは、間違いなく秀一の細く長い指の形だった。
美姫は蹲り、全身を震わせた。
まるで、それは首枷のように......
『貴女と私は見えない鎖で縛られているのです。
断ち切ることなど、出来ない』
夢の中の秀一の言葉が、美姫の脳内で響き渡る。
やめて! 私は鎖を断ち切った。
もう、縛られてなどいない......!
頭を抱え、何度も呪文のように唱えた後、美姫は震える躰を抱き締めながらゆっくりと立ち上がった。
.......ない。
鏡に映る首の痣は、消えていた。
幻、覚......
美姫は肩を撫で下ろすと、洗面所の扉を開けた。まだ、膝が震えている。
キッチンへと戻り、戸棚から幾つもの紙袋を取り出した。ザッと中身を開け、先ほどのグラスに再び水を注ぐ。次々に錠剤やカプセルを口に含み、水でどんどん流し込んだ。
消えて!
お願い......もう、消えて......
おい!大丈夫か!?」
肩を揺すられ、美姫はハッと目を醒ました。
ゆ......め......
夢、だったんだ。
まだぼんやりとした視界の向こうに、心配そうに美姫を見下ろす大和の顔があった。
「や、まと......ごめん。起こしちゃった、よね」
眉を下げて申し訳なさそうに謝る美姫に、大和はハァと息を吐き、頭を撫でた。
「俺のことは、いいから。
大丈夫か? すげぇ......魘されてた、けど......」
気遣うように問いかける大和に、美姫は小さく頷いた。
「心配かけて、ごめんね。
喉、渇いたから......ちょっと、キッチン行ってくる」
美姫は何でもないというように上半身を起こし、ベッドから下りると大和の横に立った。大和は前髪を無造作に掻き上げると、「あぁ......」と短く答え、ベッドに腰を下ろした。
キッチンの戸棚からグラスを取り出す手が震えている。蛇口を捻り、水を注ぐと一気に飲み干した。
「ッハァ、ッハァ......」
手、だけじゃない。全身も小刻みに震えている。
ゆ、め......あれは、夢。
そう思いながらも、美姫は無意識にグラスを置いた手をそっと首へと触れた。
もう、痣は残っていない。それなのに、あの時の感触がまだへばりついて離れない。
下半身に違和感を覚え、美姫はお手洗いへと向かった。
パンティーを下ろし、見つめた美姫の瞳が絶望に染まる。クラッチ部分が濡れ、濃い染みを滲ませていた。
トイレットペーパーを秘所にあてがうと、そこにも濃厚な蜜がべったりと張り付いた。
「ック......」
逃れ、られないの......?
私の躰はまだ、あの人に拘束されたままだというの?
今すぐにでもパンティーを履き変えたかったが、寝室にはまだ大和がいるかもしれない。美姫はクラッチ部分を拭き取り、パンティーライナーを当てた。
手を洗い、洗面所の鏡を何気なく見上げた美姫は、短く息を吸った。
「ヒッ......!!!」
顔を蒼白にし、後退りする。
どうして......痣は、消えたはずなのに。
うっすらと首に赤く残る、指の跡。
それは、間違いなく秀一の細く長い指の形だった。
美姫は蹲り、全身を震わせた。
まるで、それは首枷のように......
『貴女と私は見えない鎖で縛られているのです。
断ち切ることなど、出来ない』
夢の中の秀一の言葉が、美姫の脳内で響き渡る。
やめて! 私は鎖を断ち切った。
もう、縛られてなどいない......!
頭を抱え、何度も呪文のように唱えた後、美姫は震える躰を抱き締めながらゆっくりと立ち上がった。
.......ない。
鏡に映る首の痣は、消えていた。
幻、覚......
美姫は肩を撫で下ろすと、洗面所の扉を開けた。まだ、膝が震えている。
キッチンへと戻り、戸棚から幾つもの紙袋を取り出した。ザッと中身を開け、先ほどのグラスに再び水を注ぐ。次々に錠剤やカプセルを口に含み、水でどんどん流し込んだ。
消えて!
お願い......もう、消えて......
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