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拘束
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つめ、たい......
ここは、どこ?
深い意識の底から少しずつ浮上し、重い瞼を開ける。
けれど、目を開けた先も闇が広がっていた。
申し訳程度に造られた小さな四角い明かり取りの窓から漏れるただ一筋の光だけが、私の胸元に落ちている。
私......裸、だ。
どう、して......
一糸も纏っていないことに気づいた途端、先ほど感じた背中に当たる固いベッドの冷たい感触が一層肌に伝わってきた。
混乱しながら周りを見回す。真っ暗だった景色がシルエットとなり、次第に目が闇に慣れていく。
少しずつ明瞭になっていく視界の先に、私を取り囲むように張り巡らされた檻が姿を現した。
これ......大きな、鳥籠......
大きな円錐形の鳥籠の中に置かれた一台のシングルベッド。私はそこに横たわっているのだった。
頭に錘が埋め込まれているかのような感覚を覚えながら、起き上がろうとして手に力を込めると、シャラン......と金属音が冷たく響く。
両手に鮮血を思わせるような赤い枷が嵌められていて、それはコンクリートの床に繋がった杭にしっかりと埋め込まれていた。けれど、起き上がって鳥籠の中を歩き回るのに十分な長さはある。
監禁されている......
「ッグ......ハァッ、ハァッハァッハァッ、ハッハッハッハッ」
目に見えない恐怖が全身に纏わりつき、どんどん呼吸が浅くなる。
いったい、誰が......こんな、こと。
心臓の音だけが鼓膜を支配し、背筋が凍りつきそうなくらい寒いのに嫌な汗が伝う。それでも恐怖心に鞭打ち、もう一度金属音を響かせて上半身を起こした。
すると、遠くから足音が近づいてくる音が僅かに耳に響いた。
絶望と希望が入り混じる中、喉を鳴らし、震える両手を組んで祈りを捧げる。
どうか、これが......救いの音であって。
錆びついた扉がゆっくりと開くけど、暗闇が深くてその人の姿は見えない。
けれど、近づいた足音は耳慣れたもので......
「どう、して......」
それは、私を深い絶望の底へと突き落とす。
美しく、気高く......狂おしいぐらい愛おしい、悪魔の妖艶な瞳。
「お目覚めですか、プリンセス?」
微塵の動揺もない、優美なテノールが漆黒の闇に似合わない不自然さと相まって不気味に響く。
「しゅ......いち、さん......
ど、して......」
あの日、私は秀一さんを空港で見送ったはず。
ウィーンへと、送り出したはずなのに。
愕然とする私に、秀一さんは妖艶な笑みを浮かべた。
「美姫。
まさか私から、逃れられるなどと思っているのではないでしょうね」
ここは、どこ?
深い意識の底から少しずつ浮上し、重い瞼を開ける。
けれど、目を開けた先も闇が広がっていた。
申し訳程度に造られた小さな四角い明かり取りの窓から漏れるただ一筋の光だけが、私の胸元に落ちている。
私......裸、だ。
どう、して......
一糸も纏っていないことに気づいた途端、先ほど感じた背中に当たる固いベッドの冷たい感触が一層肌に伝わってきた。
混乱しながら周りを見回す。真っ暗だった景色がシルエットとなり、次第に目が闇に慣れていく。
少しずつ明瞭になっていく視界の先に、私を取り囲むように張り巡らされた檻が姿を現した。
これ......大きな、鳥籠......
大きな円錐形の鳥籠の中に置かれた一台のシングルベッド。私はそこに横たわっているのだった。
頭に錘が埋め込まれているかのような感覚を覚えながら、起き上がろうとして手に力を込めると、シャラン......と金属音が冷たく響く。
両手に鮮血を思わせるような赤い枷が嵌められていて、それはコンクリートの床に繋がった杭にしっかりと埋め込まれていた。けれど、起き上がって鳥籠の中を歩き回るのに十分な長さはある。
監禁されている......
「ッグ......ハァッ、ハァッハァッハァッ、ハッハッハッハッ」
目に見えない恐怖が全身に纏わりつき、どんどん呼吸が浅くなる。
いったい、誰が......こんな、こと。
心臓の音だけが鼓膜を支配し、背筋が凍りつきそうなくらい寒いのに嫌な汗が伝う。それでも恐怖心に鞭打ち、もう一度金属音を響かせて上半身を起こした。
すると、遠くから足音が近づいてくる音が僅かに耳に響いた。
絶望と希望が入り混じる中、喉を鳴らし、震える両手を組んで祈りを捧げる。
どうか、これが......救いの音であって。
錆びついた扉がゆっくりと開くけど、暗闇が深くてその人の姿は見えない。
けれど、近づいた足音は耳慣れたもので......
「どう、して......」
それは、私を深い絶望の底へと突き落とす。
美しく、気高く......狂おしいぐらい愛おしい、悪魔の妖艶な瞳。
「お目覚めですか、プリンセス?」
微塵の動揺もない、優美なテノールが漆黒の闇に似合わない不自然さと相まって不気味に響く。
「しゅ......いち、さん......
ど、して......」
あの日、私は秀一さんを空港で見送ったはず。
ウィーンへと、送り出したはずなのに。
愕然とする私に、秀一さんは妖艶な笑みを浮かべた。
「美姫。
まさか私から、逃れられるなどと思っているのではないでしょうね」
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