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決裂
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秀一はスピーカーから流れる久美の下卑た笑い声を聞き、一瞬拳を固く握りしめたが、すぐにいつもの冷静な口調で喋り始めた。
「遠沢隼人は、金に汚い男のようですね。あなたが遠沢から強姦され、姉との離婚が決まった際にも、慰謝料を払うどころか口止め料を払わされたとか?」
『ど、どうして......それ、を......』
怯えた久美の声が、か細く響いた。
美姫は、久美もまた自分と同じく強姦に合っていたのだという過去を聞き、心臓が止まりそうになった。
久美も同じ経験をしているのなら、私がどれだけ辛く、苦しい思いをしているのか、分かっているはずなのに......
そこまで考えて、美姫はハッとした。
久美は、知らないんだ。私が礼音に襲われたんだってことを。
もしかしたら、私が礼音に同意して一夜を共に過ごして、それに逆上した秀一さんが礼音に対して復讐したんだと思っているのかもしれない。
だったら、私は......
ほんの僅かの迷いはあったものの、美姫は久美の誤解が解けたなら復讐を諦めるかもしれないと思い、声を張り上げた。
「久美!誤解、なの!
私は、あの日礼音に襲われたの。久美と同じ傷を受けたの......
久美なら分かるでしょ。好きでもない人に、無理やり犯されることが、どんなに怖くて、どんなに惨めで、どんなに悔しいか......
確かに......礼音に対してのあの制裁は酷すぎるし、私も胸が痛くなった。でも、礼音にも非があるの。
お願い......秀一さんは、ただ私を守ろうとしただけなの。私の、私のせいなの......」
『美姫、あなた、ほんとに......』
「久、美......」
美姫が希望を持って答える。
『反吐がでるほど、いいこちゃんね。本当に、何もわかってないお嬢様。
私はねぇ、礼音が美姫を無理やり犯したってことは分かってるわ!』
「ぇ...」
『あのねぇ、あんたと私じゃレイプされたって言っても、天と地ほどの違いがあるの。
あんたなんて、誰もが羨むぐらいイケメンの礼音じゃない。しかも、礼音はあんたのことをずっと好きだった。
ねぇ、教えてよ。
どんな甘い言葉で囁かれたの?どんな指使いでイかせられたの?どんな顔して、礼音はイッたの?」
美姫は久美の言葉に蒼然となった。
久美は、知っていた。私が犯されたことを知っていながら、ううん......知って、さらに......恨みを募らせている。
「ちが、ちがうっ......私が受けた、のは......そんなんじゃ、ない......」
だが、美姫はあの行為を思い出そうとすると、全身が震え、眩暈を覚えた。息が乱れ、心臓がバクバクと打ち鳴らす。
「美姫......」
倒れそうになる美姫を秀一が支え、そっと腰を下ろして抱き留めた。
『私は、礼音に抱かれたあんたが憎い。たとえ、不本意だって分かってても、無理やりだって説明されても、この気持ちは消えない......止められない。
でも......何より憎いのは、礼音にあんな酷いことをした、来栖秀一。
私は、許さない。絶対に、許さない......』
「藤堂礼音の復讐のため......美しい話ですね。あなたは私の目をかいくぐり、遠沢に相当の依頼金を払い、躰を売り、スクープ写真を手にしました。これであなたの目的---私たちを別れさせ、私を芸能界から追放することにより、藤堂礼音の復讐を果たすことが達成される。
さて、どうでしょうか......この後の、あなたの人生について考えてみましょうか。
まず、遠沢は大学生のあなたでは到底支払えないほどの相当の額の依頼金をふっかけてきたのではないですか。そして、依頼金を埋めるための借金の穴を当てる予定だった週刊誌に売ったお金も、殆ど遠沢に奪われた......
これからあなたが辿るのは、一生ついてまわる多額の返済に追われる生活。そして、求めても手にいれることのない藤堂礼音の愛情への虚しさ。それから......藤堂礼音以上の制裁を、いつ受けるのかもしれないという恐怖。あなたの生活は、常に監視され、追跡されることでしょう。
ふふっ......背後には、くれぐれも注意して下さい』
久美だけでなく、美姫までもが凍りつき、言葉を失くした。
「遠沢隼人は、金に汚い男のようですね。あなたが遠沢から強姦され、姉との離婚が決まった際にも、慰謝料を払うどころか口止め料を払わされたとか?」
『ど、どうして......それ、を......』
怯えた久美の声が、か細く響いた。
美姫は、久美もまた自分と同じく強姦に合っていたのだという過去を聞き、心臓が止まりそうになった。
久美も同じ経験をしているのなら、私がどれだけ辛く、苦しい思いをしているのか、分かっているはずなのに......
そこまで考えて、美姫はハッとした。
久美は、知らないんだ。私が礼音に襲われたんだってことを。
もしかしたら、私が礼音に同意して一夜を共に過ごして、それに逆上した秀一さんが礼音に対して復讐したんだと思っているのかもしれない。
だったら、私は......
ほんの僅かの迷いはあったものの、美姫は久美の誤解が解けたなら復讐を諦めるかもしれないと思い、声を張り上げた。
「久美!誤解、なの!
私は、あの日礼音に襲われたの。久美と同じ傷を受けたの......
久美なら分かるでしょ。好きでもない人に、無理やり犯されることが、どんなに怖くて、どんなに惨めで、どんなに悔しいか......
確かに......礼音に対してのあの制裁は酷すぎるし、私も胸が痛くなった。でも、礼音にも非があるの。
お願い......秀一さんは、ただ私を守ろうとしただけなの。私の、私のせいなの......」
『美姫、あなた、ほんとに......』
「久、美......」
美姫が希望を持って答える。
『反吐がでるほど、いいこちゃんね。本当に、何もわかってないお嬢様。
私はねぇ、礼音が美姫を無理やり犯したってことは分かってるわ!』
「ぇ...」
『あのねぇ、あんたと私じゃレイプされたって言っても、天と地ほどの違いがあるの。
あんたなんて、誰もが羨むぐらいイケメンの礼音じゃない。しかも、礼音はあんたのことをずっと好きだった。
ねぇ、教えてよ。
どんな甘い言葉で囁かれたの?どんな指使いでイかせられたの?どんな顔して、礼音はイッたの?」
美姫は久美の言葉に蒼然となった。
久美は、知っていた。私が犯されたことを知っていながら、ううん......知って、さらに......恨みを募らせている。
「ちが、ちがうっ......私が受けた、のは......そんなんじゃ、ない......」
だが、美姫はあの行為を思い出そうとすると、全身が震え、眩暈を覚えた。息が乱れ、心臓がバクバクと打ち鳴らす。
「美姫......」
倒れそうになる美姫を秀一が支え、そっと腰を下ろして抱き留めた。
『私は、礼音に抱かれたあんたが憎い。たとえ、不本意だって分かってても、無理やりだって説明されても、この気持ちは消えない......止められない。
でも......何より憎いのは、礼音にあんな酷いことをした、来栖秀一。
私は、許さない。絶対に、許さない......』
「藤堂礼音の復讐のため......美しい話ですね。あなたは私の目をかいくぐり、遠沢に相当の依頼金を払い、躰を売り、スクープ写真を手にしました。これであなたの目的---私たちを別れさせ、私を芸能界から追放することにより、藤堂礼音の復讐を果たすことが達成される。
さて、どうでしょうか......この後の、あなたの人生について考えてみましょうか。
まず、遠沢は大学生のあなたでは到底支払えないほどの相当の額の依頼金をふっかけてきたのではないですか。そして、依頼金を埋めるための借金の穴を当てる予定だった週刊誌に売ったお金も、殆ど遠沢に奪われた......
これからあなたが辿るのは、一生ついてまわる多額の返済に追われる生活。そして、求めても手にいれることのない藤堂礼音の愛情への虚しさ。それから......藤堂礼音以上の制裁を、いつ受けるのかもしれないという恐怖。あなたの生活は、常に監視され、追跡されることでしょう。
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