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愛憎の果て
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美姫をきつく抱き締めた秀一の躰がわなわなと震え、絶望感に苛まれた声が落とされる。
「貴女は、私を捨てるのですか!? 私は、貴女がいなければこの人生になんの意味も持たないのですよ。
貴女がいなければ、息さえ出来ない......
私を再び、孤独と絶望の淵へと落とすつもりですか!?」
秀一の過去を思い出し、美姫は心臓を突かれたように苦しくなった。
愛していた母を幼くして亡くし、愛されたいと願っていた父からは無視され、義母に蔑まれ、慕っていた兄にも背中を向けられ、これまで生きてきた秀一。
誰の愛も必要とせず、誰も愛そうともせず生きていこうとした彼に光を与えたのは美姫だった。そんな美姫が、秀一を見捨てられるはずなどない......そう訴えられ、美姫の決意は大きく掻き乱される。
美姫は、ウッ、ウッ......と何度も嗚咽した後、小さな声で囁くように肩から息を吐いた。
「秀一さん......貴方はもう、あの時のように幼い子供ではありません。
貴方なら、どんな苦境も乗り越えていける......私は、信じています」
秀一は、美姫の言葉にショックを受けた。
今までの美姫であれば、過去の深い傷を思い起こさせれば、彼を救いたいと寄り添い、戻ってくるという自信があった。
だが、美姫の信念は秀一の言葉に動かされる事はなかった。
秀一は知った。
美姫は、本当に自分から離れるつもりなのだと。
自分とは違う道を選び、羽鳥大和と生きる人生を選んだのだ、と。
---そして自分は、美姫に見捨てられたのだ、と......
全身の力が抜け、秀一はへなへなとソファに崩れ落ちた。
美姫、が......
私の、美姫が......
離れて、いく......
「秀一、さん......」
美姫が、力の抜けた秀一の躰を抱き締めた。
「ごめ...ごっめんな、さい......しゅ、いち......さん......ッゥ、ウグッ...ご、め」
だが、美姫の謝罪の言葉は、秀一の耳にも心にも届くことはなかった。
み、き。
美姫。
貴女は、私の、もの......
私、だけの......
誰にも、渡さない。
---ましてや、羽鳥大和になど。
決して......
秀一は、ムクッと躰を引き起こした。
今の秀一の心に渦巻いているもの。それは、羽鳥大和への嫉妬だけではなかった。美姫を深く愛するがあまり、その強い想いは裏切られたことで底知れぬ憎しみへと変化していた。
憎しみは感情を焼き尽くし、冷淡な行動へと駆り立てる。
悪魔に魅入られた瞬間だった。
---羽鳥大和に、美姫を奪われるぐらいなら......
秀一は、美姫の華奢な首に引き寄せられるように手を掛けた。
「行かせません。あの、男のところになど、決して......
貴女は私のもの、私のものなのです......」
秀一の指が、美姫の細くて白い首をギリギリと締め付けていく。
「ヴッ......」
秀一が誰を傷つけようとも自分だけは傷つけることは絶対にないと確信していた美姫は、目玉が飛び出しそうなぐらい、秀一を凝視した。だが、華奢な首をギリギリと締め付ける力強い手の力と、血走った瞳が本気で美姫を殺そうとしていることを物語っていた。
「貴女は、私を捨てるのですか!? 私は、貴女がいなければこの人生になんの意味も持たないのですよ。
貴女がいなければ、息さえ出来ない......
私を再び、孤独と絶望の淵へと落とすつもりですか!?」
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愛していた母を幼くして亡くし、愛されたいと願っていた父からは無視され、義母に蔑まれ、慕っていた兄にも背中を向けられ、これまで生きてきた秀一。
誰の愛も必要とせず、誰も愛そうともせず生きていこうとした彼に光を与えたのは美姫だった。そんな美姫が、秀一を見捨てられるはずなどない......そう訴えられ、美姫の決意は大きく掻き乱される。
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「秀一さん......貴方はもう、あの時のように幼い子供ではありません。
貴方なら、どんな苦境も乗り越えていける......私は、信じています」
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今までの美姫であれば、過去の深い傷を思い起こさせれば、彼を救いたいと寄り添い、戻ってくるという自信があった。
だが、美姫の信念は秀一の言葉に動かされる事はなかった。
秀一は知った。
美姫は、本当に自分から離れるつもりなのだと。
自分とは違う道を選び、羽鳥大和と生きる人生を選んだのだ、と。
---そして自分は、美姫に見捨てられたのだ、と......
全身の力が抜け、秀一はへなへなとソファに崩れ落ちた。
美姫、が......
私の、美姫が......
離れて、いく......
「秀一、さん......」
美姫が、力の抜けた秀一の躰を抱き締めた。
「ごめ...ごっめんな、さい......しゅ、いち......さん......ッゥ、ウグッ...ご、め」
だが、美姫の謝罪の言葉は、秀一の耳にも心にも届くことはなかった。
み、き。
美姫。
貴女は、私の、もの......
私、だけの......
誰にも、渡さない。
---ましてや、羽鳥大和になど。
決して......
秀一は、ムクッと躰を引き起こした。
今の秀一の心に渦巻いているもの。それは、羽鳥大和への嫉妬だけではなかった。美姫を深く愛するがあまり、その強い想いは裏切られたことで底知れぬ憎しみへと変化していた。
憎しみは感情を焼き尽くし、冷淡な行動へと駆り立てる。
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---羽鳥大和に、美姫を奪われるぐらいなら......
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「行かせません。あの、男のところになど、決して......
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「ヴッ......」
秀一が誰を傷つけようとも自分だけは傷つけることは絶対にないと確信していた美姫は、目玉が飛び出しそうなぐらい、秀一を凝視した。だが、華奢な首をギリギリと締め付ける力強い手の力と、血走った瞳が本気で美姫を殺そうとしていることを物語っていた。
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