<本編完結!AS開始>【R18】愛するがゆえの罪 ー溜息が出るほど美しくて淫らな叔父と姪の禁断愛ストーリーー

奏音 美都

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愛憎の果て

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 だが、それでも美姫の決心が揺らぐことはなかった。

「私は......全てを捨てて、秀一さんとウィーンに行くことなど、出来ません。こうなってしまったのは、私の責任です。
 私はこれからお母様と、大和と協力して、来栖財閥の信用を取り戻し、お祖父様とお父様が築き上げた来栖財閥を守っていくつもりです」
 
 秀一は美姫の頬を大きな手で包み込み、美しいライトグレーの瞳を近づけた。

「美姫、今まで会社経営に携わったことのない貴女ができることなど、何もありません。来栖財閥は崩壊します。こうなることは、運命だったのです。

 私は貴女をどこにも行かせません。貴女だって、私から離れられるわけがないのです。
 美姫、両親への情は捨てるのです。

 私だけが貴女の世界なのです。
 私だけいれば、それでいいのです」

 美姫は、必死の決意をして告げたにも関わらず、まるで幼い子供を宥めるように言い聞かせる秀一に憤りを感じた。

 秀一さんは、そうやっていつも私を子供扱いする。私は、一時の感情に任せてこんなことしてるわけじゃ、ないのに......

 秀一さんは、全然分かってない。

「お父様の為だけじゃ......来栖財閥や、世間の為だけじゃ、ないんです。本当は、お父様のことすら......私にとっては、二の次なのかもしれない。

 私がここに残る決意をした本当の理由は......秀一さん、貴方の為なんです」
「なぜ、私の......為、なんですか」

 秀一が、腑に落ちないという表情で美姫を見つめる。

 美姫が潤んだ瞳で切なく秀一を見つめた。

「ふたりの関係が発覚してログハウスに辿り着いて......私、その時、不思議と不安を感じなかったんです。
 これからはなんの心配もしなくてもいいんだ。秀一さんとふたりきりでずっといられると思って、幸せでした。

 けれど......生活するうちに、分かったんです。秀一さんは、ピアノなくして生活することは出来ないって。
 貴方は、ピアニストになるべくして生まれた人です。『ピアノ界の巨匠』モルテッソーニですら認める、類い稀な才能を持っているんです。

 私は......私のために、その才能を捨てて欲しくないんです」

 本当は、ずっと桃源郷に住んでいたかった。
 幸せな夢の中に。

 でも、それは出来ないと気付いたから......

 秀一が僅かに震え、動揺が伝わった。

「何を......言っているのですか。ピアノを捨てる事など、美姫を失うことと比べたら、なんてことはありません。

 言ったでしょう? 私にとって何よりも大切なのは貴女だけなのです。
 それ以外のものは、どうだっていいのです」

 秀一が唇を寄せようとするのを、美姫の手が押し退ける。

「嘘です!」

 悲痛な声を上げた。

「秀一さんだって、気づいていたはずです。貴方の指が、全身が、頭が、心が、魂が......ピアノを求めています。それは、貴方の生活の一部であり、肉や骨のように、躰の一部であり、魂を形作っているものなんです。

 私はそれを、奪う事など出来ない。

 秀一さん、貴方は世界中の聴衆を魅了することが出来る、一流のピアニストなんです。世界が、貴方が戻ってくるのを待っています。
 私の元になど、引き止めてはいけないんです......」

 ログハウスで、魔力に引き寄せられるかのようにピアノに向かい、取り憑かれたかのように一心に曲を奏でる秀一の姿を思い出し、美姫は睫毛を伏せた。

 秀一が美姫の手を取り、引き寄せる。

「では、美姫も一緒に来てください。
 貴女なしではピアノを弾く事など、出来ません。貴女が来てくれるのであれば、私は世界が誇る一流のピアニストになることをお約束しましょう」

 美姫は掴まれたその手を、もう一方の震える手で弱々しく押し返し、込み上げる嗚咽を飲み下した。

「わた、しは.....行け、ません」
「なぜ!?なぜ、なのですか!?
 叔父と姪の禁忌の関係? フッ、そんなことなど、世間に言わせておけばいいのです。

 私は、周りの戯言など気にしません。貴女が傍にいてくれれば、どんな非難や批判だって受け止めてみせます」

 秀一は美しい顔を歪め、美姫の両腕を強く掴んだ。
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