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愛憎の果て
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遠沢の売り込んだ週刊誌の雑誌社の記者から、質問が飛ぶ。
「ふたりのスキャンダル写真を撮ったカメラマンが謎の自殺を遂げましたが、実は誰かによって殺されたのではないかという憶測も飛び交っています。雑誌に載せられた写真も消えています。
それについては、どうお考えですか」
美姫は、ビクッと小さく肩を震わせた。冷たい汗が背中を伝い落ちる。
動揺しちゃ、いけない。ここで私が失言をすれば、秀一さんが疑われることになってしまう。
慎重に、発言しなくては。
「わた、し......は、彼のことを存じ上げませんが、人の命は尊く、素晴らしいものと思います。彼がどんな理由にしろ......自らの命を絶ってしまったことを、深く遺憾に思います。
自殺か他殺については......警察が捜査し、判断しますので、私にはコメントしかねます」
そこまでなんとか言い切ると、美姫はグッと喉を詰まらせた。
お願い......これ以上、何も聞かないで。
美姫の心臓が、早鐘を打つ。
ここで司会が腕時計に視線を落とした後、口を開いた。
「では、約束の時間となりましたので、大変申し訳ないのですが、記者会見はこれにて終了します。
本日はお忙しい中、皆様ご足労下さり、ありがとうございました」
その言葉を受け、大和がまっすぐに前を向く。
「本日は私たちのためにお集まりいただき、ありがとうございました。
双方の親は政財界に関わり、名が知られていますが、私たちはただの一般人です。これ以降の質問、追跡、家への訪問等はご容赦下さいますようお願い申しあげます。
どうぞ、私たちをそっと見守っていて下さるとありがたいです」
大和が立ち上がると同時に、美姫も続いて立ちあがった。ふたりで深く一礼し、先程入ってきた扉に躰を向ける。
やっと、終わった......
今すぐにでもここを逃げ出したいという思いを押し殺すように、ゆっくりと会場を後にしようとすると、ひとりの記者が慌てて声をかけた。
「すみません!
最後に、婚約指輪を見せてもらえますか」
それに続いて、他の記者の声も次々に上がる。
「ふたりの立ち姿のショット、お願いします!」
「寄り添って肩を抱いてる感じでいいですか」
カメラマン達が記者達の間を割って前に出てくる。ちょうど大人二人が立てるほどのスペースが空いている長テーブルの横を囲むように、レンズがずらりと構えられた。
大和が窺うように視線を向けると、美姫が頷いた。
大和はカメラの視線の先へと、美姫を誘導した。長テーブルの横にふたりで立つと、美姫は左手を胸の上に翳した。そこには、極上のダイアモンドがあしらわれた婚約指輪がキラリと光っていた。
それは、記者会見の始まる直前に大和から受け取ったものだった。
「すみませーん、こちらに目線お願いしまーす!」
「もう少し、寄り添ってもらっていいですか」
「指輪がよく見えるように、こっちに向けてもらえますか?」
眩しくて目を開けていられないほどのたくさんのフラッシュに囲まれる中、大和と美姫は互いに寄り添い、幸せそうに微笑んだ。
「ふたりのスキャンダル写真を撮ったカメラマンが謎の自殺を遂げましたが、実は誰かによって殺されたのではないかという憶測も飛び交っています。雑誌に載せられた写真も消えています。
それについては、どうお考えですか」
美姫は、ビクッと小さく肩を震わせた。冷たい汗が背中を伝い落ちる。
動揺しちゃ、いけない。ここで私が失言をすれば、秀一さんが疑われることになってしまう。
慎重に、発言しなくては。
「わた、し......は、彼のことを存じ上げませんが、人の命は尊く、素晴らしいものと思います。彼がどんな理由にしろ......自らの命を絶ってしまったことを、深く遺憾に思います。
自殺か他殺については......警察が捜査し、判断しますので、私にはコメントしかねます」
そこまでなんとか言い切ると、美姫はグッと喉を詰まらせた。
お願い......これ以上、何も聞かないで。
美姫の心臓が、早鐘を打つ。
ここで司会が腕時計に視線を落とした後、口を開いた。
「では、約束の時間となりましたので、大変申し訳ないのですが、記者会見はこれにて終了します。
本日はお忙しい中、皆様ご足労下さり、ありがとうございました」
その言葉を受け、大和がまっすぐに前を向く。
「本日は私たちのためにお集まりいただき、ありがとうございました。
双方の親は政財界に関わり、名が知られていますが、私たちはただの一般人です。これ以降の質問、追跡、家への訪問等はご容赦下さいますようお願い申しあげます。
どうぞ、私たちをそっと見守っていて下さるとありがたいです」
大和が立ち上がると同時に、美姫も続いて立ちあがった。ふたりで深く一礼し、先程入ってきた扉に躰を向ける。
やっと、終わった......
今すぐにでもここを逃げ出したいという思いを押し殺すように、ゆっくりと会場を後にしようとすると、ひとりの記者が慌てて声をかけた。
「すみません!
最後に、婚約指輪を見せてもらえますか」
それに続いて、他の記者の声も次々に上がる。
「ふたりの立ち姿のショット、お願いします!」
「寄り添って肩を抱いてる感じでいいですか」
カメラマン達が記者達の間を割って前に出てくる。ちょうど大人二人が立てるほどのスペースが空いている長テーブルの横を囲むように、レンズがずらりと構えられた。
大和が窺うように視線を向けると、美姫が頷いた。
大和はカメラの視線の先へと、美姫を誘導した。長テーブルの横にふたりで立つと、美姫は左手を胸の上に翳した。そこには、極上のダイアモンドがあしらわれた婚約指輪がキラリと光っていた。
それは、記者会見の始まる直前に大和から受け取ったものだった。
「すみませーん、こちらに目線お願いしまーす!」
「もう少し、寄り添ってもらっていいですか」
「指輪がよく見えるように、こっちに向けてもらえますか?」
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