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愛憎の果て
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それは、今朝方早く行われた記者会見だった。
前日深夜に、マスコミ各社に一斉に送信された記者会見発表の知らせ。だが、そこに記載されていたのは日時と会場、そして送信主が来栖美姫であることだけ。記者会見の具体的な内容については、何も明かされていなかった。
翌朝、会場には押しかけた報道陣のさまざまな疑惑や予想の声が飛び交い、ざわざわと色めき立っていた。
「おい、ようやくご本人様のお出ましだな」
「でも、あの記者会見発表の名前、来栖秀一じゃなくて姪の名前になってたよな。どういうことだ?」
「来栖秀一本人は出ずに、来栖美姫がマスコミの前で弁明するってことか?」
「くぁー、いくらマスコミ嫌いの来栖秀一とはいえ、恋人に釈明させるとか、酷すぎだろ!」
「でもま、来栖財閥の社長令嬢でもあるし、崩壊しそうな財閥を救うために必死なのかもな」
開始時間となり、司会から案内が入る。
「お待たせ致しました。では、これから記者会見を始めますので、お静かに願います」
その声を合図に、白いテーブルクロスが掛けられた長テーブルの奥にある入口へとカメラのレンズと人々の視線が集中する。
最初に現れた人物を見た途端、人々に騒めきが起こった。
「誰だ、あれは!?
来栖秀一じゃないぞ!」
そこに、政財界に詳しいひとりの男が答える。
「あれは、羽鳥大蔵元衆議院議員の三男、羽鳥大和だ。なんでこの会場にいるんだ!?」
波紋が広がる中、遅れて美姫が緊張に顔を引き攣らせながらゆっくりと現れた。
ふたりは顔を見合わせ、司会者の合図により着席した。その途端、一斉に記者から質問が嵐のように浴びせられる。
「今日の記者会見には来栖秀一さんが来ていないのはどうしてですか」
「あの週刊誌の記事には叔父である秀一さんとの恋愛発覚とあったのですが、それについてはどのように弁解しますか」
「あの写真を撮ったカメラマンが突然自殺されましたが、どう思いますか。来栖秀一さんはそれに関わっているとお思いですか」
「美姫さん、あなたは今までどちらにいたのですか。ツイッターであなたと来栖秀一さんを長野で見たという報告が多数あがっていましたが、ふたりで失踪していたのですか」
「今、来栖秀一さんはどちらにいらっしゃるんですか」
「羽鳥大和さんがなぜ、この記者会見の場にいるのですか。彼は、どんな関係があるのですか」
矢のように襲いかかる記者団を目の前に、美姫は全身を硬直させた。心臓が破裂しそうなほど爆動し、今にも倒れそうだ。
その時、「大丈夫だ」というように、大和の手が美姫の手を握った。
「これから全てお話し致しますので、まずは私たちの話を聞いて頂けますか。
質問はその後、終了時間になるまで1記者につきひとつずつ受け付けます」
大和の声がマイクを通して、会場全体に響く。決して声を荒げず、穏やかでありながらも思わず惹きつけられる彼の声に、一瞬にして会場に静寂がもたらされた。
「本日はご多忙な中、急な発表にも関わらず、会場にお集まり下さりありがとうございました。
今日皆様をお呼び立て致しましたのは......私、羽鳥大和と、来栖美姫さんとの婚約を正式に発表するためです」
それを聞き、会場全体に大波が起こったように一斉にどよめいた。
前日深夜に、マスコミ各社に一斉に送信された記者会見発表の知らせ。だが、そこに記載されていたのは日時と会場、そして送信主が来栖美姫であることだけ。記者会見の具体的な内容については、何も明かされていなかった。
翌朝、会場には押しかけた報道陣のさまざまな疑惑や予想の声が飛び交い、ざわざわと色めき立っていた。
「おい、ようやくご本人様のお出ましだな」
「でも、あの記者会見発表の名前、来栖秀一じゃなくて姪の名前になってたよな。どういうことだ?」
「来栖秀一本人は出ずに、来栖美姫がマスコミの前で弁明するってことか?」
「くぁー、いくらマスコミ嫌いの来栖秀一とはいえ、恋人に釈明させるとか、酷すぎだろ!」
「でもま、来栖財閥の社長令嬢でもあるし、崩壊しそうな財閥を救うために必死なのかもな」
開始時間となり、司会から案内が入る。
「お待たせ致しました。では、これから記者会見を始めますので、お静かに願います」
その声を合図に、白いテーブルクロスが掛けられた長テーブルの奥にある入口へとカメラのレンズと人々の視線が集中する。
最初に現れた人物を見た途端、人々に騒めきが起こった。
「誰だ、あれは!?
来栖秀一じゃないぞ!」
そこに、政財界に詳しいひとりの男が答える。
「あれは、羽鳥大蔵元衆議院議員の三男、羽鳥大和だ。なんでこの会場にいるんだ!?」
波紋が広がる中、遅れて美姫が緊張に顔を引き攣らせながらゆっくりと現れた。
ふたりは顔を見合わせ、司会者の合図により着席した。その途端、一斉に記者から質問が嵐のように浴びせられる。
「今日の記者会見には来栖秀一さんが来ていないのはどうしてですか」
「あの週刊誌の記事には叔父である秀一さんとの恋愛発覚とあったのですが、それについてはどのように弁解しますか」
「あの写真を撮ったカメラマンが突然自殺されましたが、どう思いますか。来栖秀一さんはそれに関わっているとお思いですか」
「美姫さん、あなたは今までどちらにいたのですか。ツイッターであなたと来栖秀一さんを長野で見たという報告が多数あがっていましたが、ふたりで失踪していたのですか」
「今、来栖秀一さんはどちらにいらっしゃるんですか」
「羽鳥大和さんがなぜ、この記者会見の場にいるのですか。彼は、どんな関係があるのですか」
矢のように襲いかかる記者団を目の前に、美姫は全身を硬直させた。心臓が破裂しそうなほど爆動し、今にも倒れそうだ。
その時、「大丈夫だ」というように、大和の手が美姫の手を握った。
「これから全てお話し致しますので、まずは私たちの話を聞いて頂けますか。
質問はその後、終了時間になるまで1記者につきひとつずつ受け付けます」
大和の声がマイクを通して、会場全体に響く。決して声を荒げず、穏やかでありながらも思わず惹きつけられる彼の声に、一瞬にして会場に静寂がもたらされた。
「本日はご多忙な中、急な発表にも関わらず、会場にお集まり下さりありがとうございました。
今日皆様をお呼び立て致しましたのは......私、羽鳥大和と、来栖美姫さんとの婚約を正式に発表するためです」
それを聞き、会場全体に大波が起こったように一斉にどよめいた。
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