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決裂
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「美姫......」
秀一は、美姫が自分の行いによって自責の念に駆られ、苦しんでいる姿を見てショックだった。
私は美姫が穢されたことを知った時、怒りと憎しみに任せて藤堂礼音を制裁しました。後悔など、するはずがない---そう、思っていたというのに。
そのことが美姫を深く傷つけ、罪悪感を背負わせることになるとは思いもしませんでした。
もしまた自分が藤井久美を傷つけ、あるいは殺害すれば、美姫は藤堂礼音の時以上の悲しみと苦しみ、そして自責の念に駆られることになるのでしょう。
私は、藤堂礼音と藤井久美を制裁することにより美姫を守り、救った気持ちでいたというのに、私が彼らを傷つけた刃は、美姫の心をも深く傷つけていたとは。愛おしく、大切に願っていた存在を、自ら傷つけていたことに気づかなかったなんて。
愚かなのは、私でした。
秀一は唇をきつく引き結んだ後、フッと息を吐いた。
「......分かりました。彼女に手を下すのはやめておきましょう。
私の彼らへの行為が貴女を傷つけることになるなど、思いもよりませんでした。
美姫......私はただ......貴女が大切で、愛おしいだけなのですよ。貴女が罪悪感をもつことは、私が罪を背負うことよりも苦しいのです」
「は、い......」
分かっていた。自分が苦しんでいることを知れば、秀一はそれに対して苦しむであろうことは。
終わりのない負の連鎖へと、引き込まれるようだ。
けれど、美姫にはもう、こうするより他になかった。
「藤井久美に危害は加えないと言いましたが、ただ事態を傍観するわけにはいきません。
これから週刊誌の編集部に連絡して、明日の発売を差し押さえるよう話してみます」
「わ、かり......ました」
秀一が美姫を抱く腕に力を込めた。
「何があろうとも......私は貴女を守ってみせます」
「秀一、さん......」
美姫が頷いたのを確認すると秀一が立ち上がり、書斎へと消えて行った。残された美姫には、立ち上がる気力さえ残っていなかった。
今でも、信じられない......密告者が、久美だったなんて。
大学に入学して、1番仲が良かったのが久美だった。
それまで青海学園で何不自由ない生活を送っていた私が、慣れない大学生活をなんとか乗り切ることができたのは、久美のおかげだ。寮で隣同士だったことから仲良くなって、よく連れ立って食堂に行ったり、お風呂に入ったりもした。試験前には一緒に勉強し、久美に誘われて入ったサークルで、仲のいい友達も出来た。
......その中には、礼音もいた。
今までしたことのなかった大衆居酒屋での飲み会や、友達の家に集まっての鍋パーティー。賑やかな輪の中には、いつも久美がいて。笑顔がたくさん、溢れてた。
それはずっと変わらないと、疑うことなどなかったのに。
いつから久美は、私に対して憎しみを抱いていたの?
全然、知らなかった。久美の抱えてる闇に、気付けなかった。
もっと、話し合えばよかったのかな。
どうすれば。どうすれば、よかったの?
秀一は、美姫が自分の行いによって自責の念に駆られ、苦しんでいる姿を見てショックだった。
私は美姫が穢されたことを知った時、怒りと憎しみに任せて藤堂礼音を制裁しました。後悔など、するはずがない---そう、思っていたというのに。
そのことが美姫を深く傷つけ、罪悪感を背負わせることになるとは思いもしませんでした。
もしまた自分が藤井久美を傷つけ、あるいは殺害すれば、美姫は藤堂礼音の時以上の悲しみと苦しみ、そして自責の念に駆られることになるのでしょう。
私は、藤堂礼音と藤井久美を制裁することにより美姫を守り、救った気持ちでいたというのに、私が彼らを傷つけた刃は、美姫の心をも深く傷つけていたとは。愛おしく、大切に願っていた存在を、自ら傷つけていたことに気づかなかったなんて。
愚かなのは、私でした。
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「......分かりました。彼女に手を下すのはやめておきましょう。
私の彼らへの行為が貴女を傷つけることになるなど、思いもよりませんでした。
美姫......私はただ......貴女が大切で、愛おしいだけなのですよ。貴女が罪悪感をもつことは、私が罪を背負うことよりも苦しいのです」
「は、い......」
分かっていた。自分が苦しんでいることを知れば、秀一はそれに対して苦しむであろうことは。
終わりのない負の連鎖へと、引き込まれるようだ。
けれど、美姫にはもう、こうするより他になかった。
「藤井久美に危害は加えないと言いましたが、ただ事態を傍観するわけにはいきません。
これから週刊誌の編集部に連絡して、明日の発売を差し押さえるよう話してみます」
「わ、かり......ました」
秀一が美姫を抱く腕に力を込めた。
「何があろうとも......私は貴女を守ってみせます」
「秀一、さん......」
美姫が頷いたのを確認すると秀一が立ち上がり、書斎へと消えて行った。残された美姫には、立ち上がる気力さえ残っていなかった。
今でも、信じられない......密告者が、久美だったなんて。
大学に入学して、1番仲が良かったのが久美だった。
それまで青海学園で何不自由ない生活を送っていた私が、慣れない大学生活をなんとか乗り切ることができたのは、久美のおかげだ。寮で隣同士だったことから仲良くなって、よく連れ立って食堂に行ったり、お風呂に入ったりもした。試験前には一緒に勉強し、久美に誘われて入ったサークルで、仲のいい友達も出来た。
......その中には、礼音もいた。
今までしたことのなかった大衆居酒屋での飲み会や、友達の家に集まっての鍋パーティー。賑やかな輪の中には、いつも久美がいて。笑顔がたくさん、溢れてた。
それはずっと変わらないと、疑うことなどなかったのに。
いつから久美は、私に対して憎しみを抱いていたの?
全然、知らなかった。久美の抱えてる闇に、気付けなかった。
もっと、話し合えばよかったのかな。
どうすれば。どうすれば、よかったの?
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