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復讐の誓い ー久美回想ー
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馬鹿、だった。
遠沢を信じて、オーストリアにまで行かせて。
消費者金融から大金借りて。お姉ちゃんにまで心配と迷惑かけて。
礼音の様子を嗅ぎ回る男たちの陰に怯えながら......復讐の日を、待ち詫びてたのに。
『冗談じゃないわよ! こんな写真、週刊誌に売ったって相手にされるわけないでしょ!』
悔しくて、涙が溢れそうになるのをぐっと喉で堪えた。
『おい、久美。まぁ、聞けよ。週刊誌への売り込み方ってのを、お前に教えてやる』
そう遠沢が言うと、また別の封筒を出した。
並べられた3枚の写真。
美姫が来栖秀一に横抱きにされて、大学の講堂から出て来る写真。これは、私が遠沢に渡したものだ。
来栖秀一のマンションの地下駐車場から出て行く、車に乗ったふたりの写真。
来栖秀一の仕事の現場で寄り添い、歩いている写真。
美姫と来栖秀一の顔ははっきりと写っているけど、これと言って特に不審な点は見当たらない。講堂で秀一が美姫を横抱きにして下りてくるのだって、大勢の学生に囲まれてて目撃者もいるし、禁忌の恋愛関係っていうには、遠い気がする。
『なんなのよ...』
また文句を言い出す私を、『まぁ、聞けって......』と遠沢が制す。
『ここに、こいつらを置く』
遠沢が先ほどの3枚の写真を横に並べた。
『ぁ......』
つな、がる......
さっきは、どこの女か分からないと思っていたはずなのに、こうして一緒に並べると、後ろを向いていても、下を向いていても、その女が美姫なんじゃないかって思えてくる。
というか、確信......してしまう。
『講堂や車に乗ってる写真は目隠し入れずに、こっちのホテルでセックスしてる写真の女の方に目隠しの黒い横線を入れとくともっと効果的だな。
これが、週刊誌に記事として写真が掲載されたら、どぉよ?』
もし私が読者なら......例えあとの3枚の写真の女の顔が見えなくても、これは来栖美姫だと信じてしまうだろう。ううん、目隠しされていることで余計にこれが美姫だと確信してしまうに違いない。
『な?』
遠沢は得意げな顔を私に見せた。
けど......
『......だめ』
『あ?』
『もっと、決定的な写真がいるわ。絶対に言い逃れできない、決定的なのが』
これじゃ、まだ逃げ道がある。髪の毛一本すら通さないほどの、鉄壁の写真でなければ、あの男には対抗できないと思った。
『まだ働かせる気かよ。だったら...』
そう言いかけた遠沢の喉元に、バッグに隠し持っていたナイフを取り出し、喉元に突きつけた。
『おいおい。ふざけんな......』
へらへらと口元を緩ませているものの、その口の端がピクピクと引き攣っている。
私は更に、遠沢の喉元にナイフを沿わせた。
『ふざけてなんか、ない。私は、本気よ。
あんたも報道カメラマンの端くれだって言うなら、本気の写真、撮ってみなさいよ』
啖呵切っておきながらもナイフを持つ手が震え、今にも遠沢の喉をかっ切りそうだ。
私の血走った目を見て、本気だと本能的に悟った遠沢は、後退りした。手元のナイフがそれを執拗に追う。
遠沢が床に唾を吐く。
『ちっ...じゃあお前が納得いく写真、撮ってやる。今回だけは特別許してやるが、今度こんな真似しやがったら、タダじゃすまねぇぜ』
『あんたがつまんない写真撮るんなら、何度だって切りつけてやるわ』
ナイフをバッグに戻し、大股でドアに向かった。
バタン、と大きな音を立てて扉を閉める。
『ッハァ......』
怖、かった......
扉を閉めた途端、腰が抜けてへなへなと崩れ落ちる。指先から足の小指に至るまで、全身の震えが止まらず、暫くそこに座り込んだ。
遠沢を信じて、オーストリアにまで行かせて。
消費者金融から大金借りて。お姉ちゃんにまで心配と迷惑かけて。
礼音の様子を嗅ぎ回る男たちの陰に怯えながら......復讐の日を、待ち詫びてたのに。
『冗談じゃないわよ! こんな写真、週刊誌に売ったって相手にされるわけないでしょ!』
悔しくて、涙が溢れそうになるのをぐっと喉で堪えた。
『おい、久美。まぁ、聞けよ。週刊誌への売り込み方ってのを、お前に教えてやる』
そう遠沢が言うと、また別の封筒を出した。
並べられた3枚の写真。
美姫が来栖秀一に横抱きにされて、大学の講堂から出て来る写真。これは、私が遠沢に渡したものだ。
来栖秀一のマンションの地下駐車場から出て行く、車に乗ったふたりの写真。
来栖秀一の仕事の現場で寄り添い、歩いている写真。
美姫と来栖秀一の顔ははっきりと写っているけど、これと言って特に不審な点は見当たらない。講堂で秀一が美姫を横抱きにして下りてくるのだって、大勢の学生に囲まれてて目撃者もいるし、禁忌の恋愛関係っていうには、遠い気がする。
『なんなのよ...』
また文句を言い出す私を、『まぁ、聞けって......』と遠沢が制す。
『ここに、こいつらを置く』
遠沢が先ほどの3枚の写真を横に並べた。
『ぁ......』
つな、がる......
さっきは、どこの女か分からないと思っていたはずなのに、こうして一緒に並べると、後ろを向いていても、下を向いていても、その女が美姫なんじゃないかって思えてくる。
というか、確信......してしまう。
『講堂や車に乗ってる写真は目隠し入れずに、こっちのホテルでセックスしてる写真の女の方に目隠しの黒い横線を入れとくともっと効果的だな。
これが、週刊誌に記事として写真が掲載されたら、どぉよ?』
もし私が読者なら......例えあとの3枚の写真の女の顔が見えなくても、これは来栖美姫だと信じてしまうだろう。ううん、目隠しされていることで余計にこれが美姫だと確信してしまうに違いない。
『な?』
遠沢は得意げな顔を私に見せた。
けど......
『......だめ』
『あ?』
『もっと、決定的な写真がいるわ。絶対に言い逃れできない、決定的なのが』
これじゃ、まだ逃げ道がある。髪の毛一本すら通さないほどの、鉄壁の写真でなければ、あの男には対抗できないと思った。
『まだ働かせる気かよ。だったら...』
そう言いかけた遠沢の喉元に、バッグに隠し持っていたナイフを取り出し、喉元に突きつけた。
『おいおい。ふざけんな......』
へらへらと口元を緩ませているものの、その口の端がピクピクと引き攣っている。
私は更に、遠沢の喉元にナイフを沿わせた。
『ふざけてなんか、ない。私は、本気よ。
あんたも報道カメラマンの端くれだって言うなら、本気の写真、撮ってみなさいよ』
啖呵切っておきながらもナイフを持つ手が震え、今にも遠沢の喉をかっ切りそうだ。
私の血走った目を見て、本気だと本能的に悟った遠沢は、後退りした。手元のナイフがそれを執拗に追う。
遠沢が床に唾を吐く。
『ちっ...じゃあお前が納得いく写真、撮ってやる。今回だけは特別許してやるが、今度こんな真似しやがったら、タダじゃすまねぇぜ』
『あんたがつまんない写真撮るんなら、何度だって切りつけてやるわ』
ナイフをバッグに戻し、大股でドアに向かった。
バタン、と大きな音を立てて扉を閉める。
『ッハァ......』
怖、かった......
扉を閉めた途端、腰が抜けてへなへなと崩れ落ちる。指先から足の小指に至るまで、全身の震えが止まらず、暫くそこに座り込んだ。
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