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復讐の誓い ー久美回想ー
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先程見た光景が脳裏に鮮やかに蘇り、萎えそうになる気持ちに鞭を打ち、勇気を振り絞った。
掴んでいた便器に力を込めて立ち上がり、蛇口の水を勢い良く出して手と口を洗う。
......またあの場所に戻って、礼音を見るのは、辛い。
苦しい。心が、痛い。
けど、礼音を救えるのは私だけ。ここにいる、私しかいないんだ。
唇をグッと引き結び、震える拳を握り締めた。短い息を吐き出し、洗面所の扉のノブに手を掛ける。
さっきは動転してよく見ていなかったが、礼音の状態は陰惨そのものだった。裸の状態で縄で躰を拘束され、四つん這いの状態でお尻を高く突き上げていた。躰のあちこちは、ドス黒い血の塊で覆われている。
私が好きだった礼音のプラチナシルバーの髪には吐瀉物がべったりとこびりついていて、そこから異臭が漂う。そこから覗く礼音の瞳にはいつもの快活さの欠片もなく、落ち窪み、まるで廃人のようだった。
これ、は……本当に、礼音…なの?
目の前にありながらも、現実を伴わない光景に愕然とする。全身に戦慄が走った。
ブーンブーンブーン......
先ほどから聞こえていた奇妙な機械音の正体が分かった......
まずは、これを拔かないと。
ゴクリと唾を飲み込み、恐る恐るそれに近づいた。妖しく蠢くその動きに勇気を削がれそうになるが、汗でべとついた手を服に押し付けて拭い、掴む。
力を込めてそれを抜こうとした途端、礼音の凄まじい声が響いた。
『ッフーーーーーーン!!!!! ッハァッハァッハァ、ゆるじ...でぇハァァァ』
『ッッ...!!!』
慌てて手を離し、退いた。
『ヒッ!!!』
ガクンッ......
礼音の躰を蠢めく動きに気づき、腰が砕けた。
私がドス黒い血の塊だと思っていたそれは、蛭、だった。礼音の躰を無数の真っ黒な蛭が這いずり回り、ところどころに赤黒い出血が見られた。
『ヴゥッ......』
怖気と共に再び吐き気が襲ってくる。
こん、なの......正気の沙汰じゃ、ない。
蛭を見るのは初めてだったけど、なめくじやミミズみたいなヌルヌルした生き物は大の苦手だ。鳥肌が全身に立ち、涙が目の奥から湧いてくる。
気持ち、悪い......触りたく、ない。
『ッハァ、ッハァ、ッハァ......』
乱れる呼吸を整え、それでもなんとか勇気を振り絞り、ハンカチを手に巻きつける。
や、やるのよ。やら、なくちゃ......
こわごわ手を伸ばすけど、それに近づくだけで手が拒否反応を示してしまう。近づいてみて気がついたが、礼音の全身はぬらぬらと濡れていて、甘くて濃厚な匂いが立ち上っていた。
ようやく何度目かの挑戦で、それに触れることが出来た。ぬめぬめとした気持ち悪いそれに布越しに触れるだけで、全身に寒気が走る。慎重にそれを摘み、ゆっくりと引き剥がそうとするけれど......
『ヒ一ヒィッ!!!いだーーっっ!!!』
血を吸って肥大化した蛭は、剥がそうとすればするほどますます礼音の肌に吸い付いて出血する。
『ッッ...ご、ごめっ......』
慌てて手を離すと、手に巻きつけていたハンカチがはらりと落ちた。
私は、呆然と礼音の前に立ち尽くした。
お尻に巨大なバイブを突き刺され、全身を蛭が這いずり回り、四肢を縄で拘束され、四つん這いで苦しそうな喘ぎ声をあげている礼音の前に。
ひ、どい......酷い。酷過ぎる。
いったい、誰がこんなこと......
私の中に、次第にフツフツと顔も分からぬ犯人への怒りが湧いてくる。
先ほどまでは驚愕と恐怖でいっぱいだったが、怒りの激情が躰に渦巻いた途端、不思議と頭は冷えてきた。
許、せない。
礼音をこんな風にした犯人を、絶対に見つけてやる。
私が、礼音の代わりに復讐するんだ。
震える指先をコートのポケットに這わせ、スマホを取り出した。スマホをカメラモードにし、礼音へと向ける。
『ック......』
その凄惨な姿を目の前にし、写真を撮ることに躊躇する。
けど......
ここで写真として証拠を残しておかなければ、犯人は誰にも知られることなく、のうのうと生きていくことになる。心を、鬼にするのよ......
泣きながら、礼音の写真を撮った。
掴んでいた便器に力を込めて立ち上がり、蛇口の水を勢い良く出して手と口を洗う。
......またあの場所に戻って、礼音を見るのは、辛い。
苦しい。心が、痛い。
けど、礼音を救えるのは私だけ。ここにいる、私しかいないんだ。
唇をグッと引き結び、震える拳を握り締めた。短い息を吐き出し、洗面所の扉のノブに手を掛ける。
さっきは動転してよく見ていなかったが、礼音の状態は陰惨そのものだった。裸の状態で縄で躰を拘束され、四つん這いの状態でお尻を高く突き上げていた。躰のあちこちは、ドス黒い血の塊で覆われている。
私が好きだった礼音のプラチナシルバーの髪には吐瀉物がべったりとこびりついていて、そこから異臭が漂う。そこから覗く礼音の瞳にはいつもの快活さの欠片もなく、落ち窪み、まるで廃人のようだった。
これ、は……本当に、礼音…なの?
目の前にありながらも、現実を伴わない光景に愕然とする。全身に戦慄が走った。
ブーンブーンブーン......
先ほどから聞こえていた奇妙な機械音の正体が分かった......
まずは、これを拔かないと。
ゴクリと唾を飲み込み、恐る恐るそれに近づいた。妖しく蠢くその動きに勇気を削がれそうになるが、汗でべとついた手を服に押し付けて拭い、掴む。
力を込めてそれを抜こうとした途端、礼音の凄まじい声が響いた。
『ッフーーーーーーン!!!!! ッハァッハァッハァ、ゆるじ...でぇハァァァ』
『ッッ...!!!』
慌てて手を離し、退いた。
『ヒッ!!!』
ガクンッ......
礼音の躰を蠢めく動きに気づき、腰が砕けた。
私がドス黒い血の塊だと思っていたそれは、蛭、だった。礼音の躰を無数の真っ黒な蛭が這いずり回り、ところどころに赤黒い出血が見られた。
『ヴゥッ......』
怖気と共に再び吐き気が襲ってくる。
こん、なの......正気の沙汰じゃ、ない。
蛭を見るのは初めてだったけど、なめくじやミミズみたいなヌルヌルした生き物は大の苦手だ。鳥肌が全身に立ち、涙が目の奥から湧いてくる。
気持ち、悪い......触りたく、ない。
『ッハァ、ッハァ、ッハァ......』
乱れる呼吸を整え、それでもなんとか勇気を振り絞り、ハンカチを手に巻きつける。
や、やるのよ。やら、なくちゃ......
こわごわ手を伸ばすけど、それに近づくだけで手が拒否反応を示してしまう。近づいてみて気がついたが、礼音の全身はぬらぬらと濡れていて、甘くて濃厚な匂いが立ち上っていた。
ようやく何度目かの挑戦で、それに触れることが出来た。ぬめぬめとした気持ち悪いそれに布越しに触れるだけで、全身に寒気が走る。慎重にそれを摘み、ゆっくりと引き剥がそうとするけれど......
『ヒ一ヒィッ!!!いだーーっっ!!!』
血を吸って肥大化した蛭は、剥がそうとすればするほどますます礼音の肌に吸い付いて出血する。
『ッッ...ご、ごめっ......』
慌てて手を離すと、手に巻きつけていたハンカチがはらりと落ちた。
私は、呆然と礼音の前に立ち尽くした。
お尻に巨大なバイブを突き刺され、全身を蛭が這いずり回り、四肢を縄で拘束され、四つん這いで苦しそうな喘ぎ声をあげている礼音の前に。
ひ、どい......酷い。酷過ぎる。
いったい、誰がこんなこと......
私の中に、次第にフツフツと顔も分からぬ犯人への怒りが湧いてくる。
先ほどまでは驚愕と恐怖でいっぱいだったが、怒りの激情が躰に渦巻いた途端、不思議と頭は冷えてきた。
許、せない。
礼音をこんな風にした犯人を、絶対に見つけてやる。
私が、礼音の代わりに復讐するんだ。
震える指先をコートのポケットに這わせ、スマホを取り出した。スマホをカメラモードにし、礼音へと向ける。
『ック......』
その凄惨な姿を目の前にし、写真を撮ることに躊躇する。
けど......
ここで写真として証拠を残しておかなければ、犯人は誰にも知られることなく、のうのうと生きていくことになる。心を、鬼にするのよ......
泣きながら、礼音の写真を撮った。
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